前書き
先日、乗鞍エコーラインを登ってきた。
乗鞍とは乗鞍岳。北アルプス、つまり飛騨山脈の南端に位置する山である。
多くのサイクリストが、この乗鞍を訪れる。それもそのはず、ここは自転車で走ることの出来る道路が一番高い場所に位置しているのである。
岐阜と長野の県境でもあり、岐阜からのルートはスカイライン、長野からのルートはエコーラインと呼ばれている。
自転車で行ける一番高い場所。人間は何でも一番が好きなものだ。かくいう私も乗鞍は好きで、過去に3回登っている。
その3回とも登ったのはスカイラインであり、長野からのエコーラインは一度も登ったことが無い。
そんな私の事情を知ってか知らずか、普段からよくライドでご一緒させてもらっているかぼ氏から、「7月にエコーライン行きませんか」とのお誘いを受けた。
何を隠そう、私は2カ月前にスカイラインを登ったばかりである。
燕雲(私のロードバイク)が破損により長期修復中のため、その日はクロスバイクで登ったわけだが……。
まさか、これはエコーラインもクロスバイクで登れということなのか。やだ、そんなことをしたらサイクリストの伝説に残っちゃう!
KeiOSさん、この前のスカイラインすっごく楽しかったです! なので、もしエコーラインも連れて行ってもらえたら嬉しいなあ……
エコーライン、私は登ったこと無いけど、仕方ないから今回もお姉ちゃんに譲ってあげるわ。私の分まで楽しんできてね
わあ、ありがとうつばめちゃん。わたし、がんばるね!
愛車達のなかですでに話がまとまっていた。もちろん、私も二つ返事でOKする。
クロスバイクでスカイラインとエコーライン制覇。悪くないじゃないか。ハイパーカスタマイズクロスバイクの力をみせてやるぜ! 私の愛馬は(見かけによらず)凶暴です。
こうして乗鞍エコーラインの遠征が決まったのであった。
2カ月ぶりの乗鞍へ
2022年7月9日 土曜日
日付が変わったころに、K&MCYCLE南船場店前に集合した。
今回の参加者は次のとおり。
AYA(@CANYON_aya_0302)
かぼ(@kabotyo3)
坂本(@skmt_fact)
Shin(@shinox_kg)
Teg(@teguchi_22)
響珈琲(@hibikicoffee)
373(@m_alice)
KeiOS(@kei_os_)
AYA氏とteg氏は今回初めてご一緒させていただく。よろしくお願いします。
計8名、車体も8台。2台のバンにそれぞれ分かれて乗り込む。
日付が変わったあたりで、車は出発した。
日頃遅くまで起きていることがなく、ましてや外出することもない。そのせいか、こんな時間にただ車に揺られているだけで非日常を感じてしまう。
乗鞍エコーラインの入口にあたる松本市乗鞍観光センターまでの距離は、大阪から約370km。キャノンボーラーなら15時間くらいで到達できるかもしれない。なお、車なら6時間程度だ。
途中、3カ所ほど休憩を挟んで、車は行く。
やがて夜が明け始めてきたころ、長野県に突入した。
長野の山はスケールが違う。和歌山や奈良にも山は多いが、なんというか長野の山は雄大かつ、生活のすぐ側にたたずんでいる感じがあるのだ。
道中、コンビニで補給を済ませる。なお、コンビニ前には謎の物体が置かれていた。
雪だるま……?
心はまるく、いしはかたく、にんたいつよく
なんか良いこと言っている気がします!
……心じゃよッ!
車は徐々に乗鞍岳の麓へと近づく。眠気もそこそこに、テンションが上がってくる。
そしてようやく、松本市乗鞍観光センターに到着した。
車から自転車を降ろしてめいめい準備をすすめる。
流石に8台も並ぶと壮観である。当然ながらクロスバイクで来ているのは私だけだ。
では行こうか、標高2,702メートルの彼方へ。
スカイラインとは違うのだよ、スカイラインとは!
登りはじめは単調な森林道が続く。このあたりはスカイラインと大差ない。
いや、斜度には大きな差がある。スカイラインの登りはじめは斜度10%程度となっているが、エコーラインはそれよりも緩やかだ。
聞けば、エコーラインにおいて斜度10%を超えてくる道はほとんどないようだ。これならクロスバイクでも十分に登れる気がする。
まあ、ゆっくりでも登れたらそれでいいんだよ。
途中、レストハウスを発見。ここもスタート地点として利用されることが多いらしい。林道をワープしたいならそのほうが良いだろう。
ゲートの係員から気を付けてーと声をかけられる。行ってきまーすと挨拶で応じた。
暫く林道をこなしてゆくと、なだらかな起伏の線が見える道に出た。こういう道は高原などへ来ないと拝めない。
なお、スカイラインもエコーラインもマイカー規制がかかっており、一般の乗用車は入ってこない。自転車にとってはとても走りやすい道である。
しかし、スカイラインに比べるとエコーラインは道路幅が若干狭い。なので、こういう事態が起きることがある。
工事の関係で片道通行規制がかかっていたようだ。落ち着いて通過した。
標高はそれなりだが、登っていると暑く、汗をかく。そんなことを思っていた矢先、スカイラインでは見られない建物が見えた。
どうやら休憩所のようだ。屋外には天然水で冷やしたドリンクやゼリーを販売している。これは有り難い(買わなかったけど)。
気圧が低くなってきたせいで、カロリーメイトの袋がパンパンに膨れ上がっていた。コレを見たいためだけに買ってきたまである。
この辺りで景色が少しガスってきた。天候、せめて頂上まで持ってくれれば良いのだが……。
暫く先へ進むと、今度はさきほどの休憩所よりも大きな建物が飛び込んできた。
なんと、ここでは飲み物や軽食も頂けるらしい。ちょっと休憩していきたい誘惑に駆られてしまう。
見れば、自転車マンガ『ろんぐらいだぁす!』のペーパーが貼ってある。ここでおしるこを食べることが聖地巡礼の証となるようだ。
正直食べてみてもよかったけどな……後ろ髪引かれる思いで、先へと進む。
見上げれば頂上付近に晴れ間が。
しかも、進む先がどんどん晴れへと変わってゆく。
「俺たちがいるところが晴れになる」と言わんばかりの光景だ。
やがて森林限界を迎えたあたりで、雪が残っているのを発見。先に走っていたtegさんとふたり、感嘆のため息が出る。
7月だというのに、まだまだ雪が消える様子はない。
登りゆく先にも雪化粧が見えた。もしや、あれだけの量が積もっているならスキーも出来るのでは。
などと思っていたら、本当にスキーヤーがいた。
すごい。7月だというのにスキーをしている人がいる。ここはどこの国だ。
だが、その非日常感が良い。なんとも珍妙な1枚が撮れた。
ふと、背後を振り返ってみる。そこには、ここまで走ってきた道がワインディングロードとなって現出していた。スカイラインのような雄大さはないものの、まさに高原を走っているような気分になる。
最後の1km。373氏の背中を追ってラストランを楽しむ。
そして、ようやく。
ついに県境に到着。登り切ったという感じがひしひしと沸いてくる。
なお、2カ月前に訪れた際にはまだ県境のゲートは開いておらず、こんな感じで閉まっていた。
ちなみにそのときには気がつかなかったのか、或いは雪の壁に埋もれていたのか。ここには日本一標高の高い場所にあるバス停がある。
せっかくなので、愛車と1枚。
あとはパレードランである。1kmにも満たない乗鞍の頂上を走り、ゴールした。
いま、私はクロスバイクで標高2,702メートルの地点にいる。
なんだか2カ月ぶりですね
まさか、俺も2カ月でここに戻ってくるとは思わなかった
こうして、クロスバイクによる乗鞍スカイライン・エコーラインの両制覇を成し遂げたのであった。
空に近い場所でひとときの休息
時刻は11時すぎ。20キロのヒルクライムをこなしたあとではお腹ペコペコである。
前回登ったときは揚げたてポテチしか食べなかったが、今回は普通に昼食をとることとした。
訪れたのはこちら。
乗鞍登頂者には御用達のレストランである。ちなみに建物は宿にもなっており、ここを宿泊地として登ってくる人もいると聞く。
ただ、メニューを見て首をかしげた。以前訪れた時にはもう少しメニューの数が多かった気がする。確か、味噌ラーメンや朴葉みそ定食などがあったのだが……。
致し方ない。とりあえず岐阜の名物、けいちゃん定食をセレクトする。
出てきたのはこちら。
鶏肉の入った味噌野菜炒め、とでも言おうか。ただ、鍋が火にかけられており、いつまでも熱々の状態で頂ける。
さっそく一口。
美味い。まあ、こんなシチュエーションで食べれば何でも美味いのだが、味噌味がよく効いていて体に染み渡る。
鶏肉が一口サイズで、その食感も相まって食べやすい。野菜も程よいサイズにカットされていて、味噌がよく絡む。正直、野菜だけでも十分に食べられる。
ご飯との相性が抜群で、どんどん口に運んでしまう。大盛りとかできるならしておけば良かった……。
銀嶺荘、乗鞍制覇にふさわしいまんぞくであった。
レストランを出て、時刻は12時ごろ。名残惜しいが、そろそろ下るとしよう。
なぜか登りの時には気がつかなかった雪の壁。せっかくなので記念写真を撮っておく。
7月だというのに、まだまだ雪解けしていない。ただ、エコーラインは紅葉の季節も美しいと聞く。いずれ訪れてみたいものだ。
こうして、我々のエコーライン堪能ライドは幕を閉じた。
結びに代えて
初のエコーラインであった。噂に違わぬその景色、一度は訪れる価値があると言えよう。
スカイラインに比べると見劣りするのでは……などと思っていたが、そんなことは無かった。どちらも乗鞍であり、それぞれの良さがある。
片方だけ走るのは勿体ない。是非、両方とも堪能して欲しいものである(もちろん1日以内で、という意味では無い)。
次に訪れるのはスカイラインかエコーラインか。どちらにしても、楽しいライドになることは間違いない。何度訪れたって乗鞍の良さは変わらないのだから。
余談だが、実はエコーラインの下りで壮絶なオチが待っていた。それはまた、別の話にて。