【奈良】散りゆく桜を拾いに【83km】

自転車

前書き

2021年4月2日 金曜日

仕事の合間に、週間天気予報をチェックする。

今週は土曜日が晴れ、日曜日が雨予報だった。この予報は週の初めからずっと変化していない。

春のライドといえば、やはり桜だろう。しかし、今年は暖冬のせいか例年よりも開花が早く、先週となる3月末がもっとも見頃だったようだ。

今週はもう満開の桜を拝むことはできまい。そうでなくとも、春は何かと動きたくない季節なのだ。

そう思うと、自転車で何処かへ行く気になれなかった。むしろ、思考停止していたと言ってもいい。

金曜日に夜清滝でもして、土曜は昼飲みにでも繰り出すか……おそらくそんなことをした日には、愛車たちから抗議の眼差しを向けられることとなるだろう。

軽蔑しきった態度にゾクゾクさせられるのか、あるいはしおらしい態度に胸を打たれてそのフレームへ頬をスリスリしてしまうのか、どちらにせよアリかもしれない。

そんな阿呆なことを思っていると、おもち氏(@noyuyuya)から連絡があった。373氏(@m_alice)、坂本氏(@sakanamo_)と一緒に奈良まで走りませんか、とのこと。

渡りに船とはこのことか。或いは週末のライドに関して沈黙していたことで、私の999あるスキルのひとつ「誘い受け」が発動してしまったらしい。

とりあえず昼飲みは次の機会に回すとしよう。二つ返事で承諾し、明日の準備の段取りを考えるのであった。

なんてこうどなじょうほうせんだ!

2021年4月3日 土曜日

午前5時に起床。ぱっと起きられたのは良いが、どうにも体に違和感がある。

まさかとは思うが、ゆうべ寝る前に飲んだ酒のせいだろうか。大した量ではなかったが、寝る直前に飲んでしまったので睡眠の質に影響したのかもしれない。

まあ、走っていればそのうち体のほうが付いてくるだろう。脳筋な思考のまま準備を済ませ、愛車とともに家を出た。

心斎橋を横切るR173を東進する。

普段なら車通りの多い道も、この時間は空いているようだ。あるいはコロナ禍の影響かもしれないが。

谷町六丁目の交差点でR30に合流。天王寺に合流する直前でR165に入る。

今回の集合場所は柏原市にある葡萄坂の麓だ。このルートならほぼ一直線で現地に着く。

それにしても、脚が回らない。いや、正しくは力一杯踏み込めないというべきか。起床時の違和感は本物だったようだ。

無理をしても仕方ないので、軽いギアでとにかくクランクを回すことに集中する。スピードは30km/hも出ない。

途中、交差点でストップしていると、後ろから声をかけられた。

373氏だった。柏原市方面へ行く際、何度か一緒に彼とこのルートを走っている。今回もおそらくどこかで合流するのではないかと思っていた。

頼れる友を連れてR165をさらに進み、JR志紀駅を少し過ぎたところで左折。細い路地を抜けてR20に入る。

柏原市といえばワインだよなあと思っていたら、看板を発見。

実は、大阪はワインの生産地である。

農業というイメージが似つかわしくない大阪だが、まったくゼロというわけではない。というか、農業をやっていない都道府県というのはひとつも無い。

大阪の面積は2015年の時点で約190,000ヘクタール(1ヘクタール=0.01平方キロメートル)。そのうち耕地面積は2020年時点で約12,500haと、全体の約6.5パーセントである。

主に和歌山に近い泉南地エリア(岸和田市、泉南市、泉佐野市、貝塚市など)や南河内エリア(富田林市、河内長野市、河南町など)での耕作が盛んなようだが、中心地である大阪市内でも春菊や水菜などを生産している。

そんな大阪の農業は、全国レベルで見てもそれなりに健闘している。春菊の生産量は千葉県に次いで全国2位、ふきは愛知県、群馬県に続いて第3位、小松菜は第8位だ。意外というべきか、10位以内にランクインしている作物がいくつかある。

そして、ワインの原材料であるぶどうの生産量は、2020年の時点で大阪が第9位。しかも、昭和初期の頃には全国1位だったこともあるようだ。デラウェアをはじめ幅広い品目を手がけており、一部では高級品として扱われている。

大阪の南東に位置する柏原市は、ぶどうの生産地のひとつだ。古くからぶどうを使ったワイン造りが盛んである。その歴史は古く、市内にあるカタシモワイナリーが醸造を始めたのはなんと1914年(大正3年)。既に100年以上の歴史を誇る。

というわけで、「柏原市といえばワインだよなあ」なのである。

しかし、一度も飲んだことがない。自転車でなければそのままワイナリーへ向かっているところだが……。

そんな誘惑を蒸着にかかる程度の時間(0.05秒)で振り切り、集合場所に到着。見れば、坂本氏が既に着いていた。

しばらくしておもち氏も姿を現す。

今日は和歌山から自走で来たらしい。しかも早くに着いていたらしく、近所のパン屋で朝ご飯を購入していたようだ。

ぱん処 ちどり

ぱん処 ちどり (堅下/パン)
★★★☆☆3.35 ■予算(昼):¥2,000~¥2,999
撮影:おもち氏
撮影:おもち氏
撮影:おもち氏

……KeiOS。私は空腹だというのに、目の前で黄色い鳥のような生き物の被り物をした自転車と、それに乗っている男がパンを食べているわ。あまりに度し難いのだけれども

うむ、わかる。わかるぞ。それもこれも、全ておもちっこという奴の仕業なんだ

とりあえず許すまじ(black incを起動させる音)

人にblack inc向けるの止めなさい

black incでパンごとおもち氏の存在を消し去ろうとする愛車を宥めながら、やむなくコンビニで購入した食品で補給。とにかくお腹が空いていたので、普段よりも多くなってしまった。

満足感はさておき、補給はこれで良し。

夕べ少し飲み過ぎて体調が万全で無い旨を伝えると、おもち氏からそういう高度な情報戦はいいですからと切り返された。ここまで走ってきて多少はマシになったのだが。

本日の目的地は奈良。この日、373氏が引いたルートには「それなりに」登りが含まれている。高度な情報戦はさておき、あまり最初から飛ばさないようにしようと心に決める。

大阪から奈良へ抜けるには坂を登らないといけないんですよねえ、と坂本氏。しかし、単純に奈良へアクセスするだけなら、大和川沿いに東進すれば足りる話である。

それを聞いた坂本氏はうーんうーんと考え込んでいたが、結局坂を登ることに決めたらしい。

今、『さっすが坂ガール、坂本だけに』……という顔をしていたわ

ハハハまさかそんな(遠い目)

隠しても無駄よ、だって私も思ったもの

お前もか。俺たち、仲が良いな。

雨は降らないようだが、空模様はどんよりとしている。桜を拾うライドの成否や如何に。

葡萄坂より清滝峠でしょう(何が)

コンビニを出発し、さっそく裏手にある葡萄坂へ。

葡萄坂のスペックは次のとおり。

葡萄坂清滝峠
標高差290m218m
距離3.8km3.2km
平均斜度7.4%6.7%
最高斜度12.3%10.3%
出典:関西ヒルクライム峠資料室(http://hillclimb-west.seesaa.net/)

関西ヒルクライム峠資料室の難易度はC。清滝峠と同レベルである。ついでに清滝峠のスペックとも並べて見たが、一見するとあまり違いはないように感じる。

だが、実際の難易度はまったくの別物だ。

葡萄坂の場合、中間地点あたりまでの勾配は10パーセント程度。最初のつづら折れやヘアピンがどうにも十三峠(難易度B)を思わせる。

路面状況は悪くないものの、路肩は狭く、交通量も多い。加えて葡萄坂を走るローディがあちこちにいるせいで、気持ち良く登れない。

清滝峠の場合、斜度が10パーセントを越えるのは最初の1箇所だけで、あとは6~8パーセント程度の緩やかな登りが続く。

後半のつづら折れでは道路脇のゴミに少し注意する必要があるが、斜度がさらに弱まるため登りやすい。道幅は広く、頂上まで外灯が続いているので夜間でも登攀可能だ。

このように、同じ難易度と称されながらも、あらゆる意味で葡萄坂のほうが難易度が高いのである。

ただまあ、登攀中に景色が楽しめるのは葡萄坂の魅力の一つか。

終盤、おもち氏と373氏がスパートをかけるのを後ろから眺めながら、坂本氏とふたりで最後までのんびりと登る。

ゴールの変電所前を通り過ぎて、そのまま先へ。

しばらく進むと信貴山のどか村の入り口が見えた。どちらかというとここの方がゴールっぽい感じなのだが。

両手を広げて優勝のポーズをしているおもち氏の横を、373氏が颯爽と抜いてゆく。こういう不意打ちはおもち氏や私よりも、373氏が一番上手いのではなかろうか。

信貴山のどか村ではキャンプやバーベキューが楽しめるようだが、人はまばらだ。

単純に朝のこの時間だったせいなのか、あるいはコロナの影響なのかは分からない。

10パーセントの下りを経てさらに進むと、「さくら祭り」ののぼりが掲げられた場所に出た。

このあたりは信貴山真言宗の総本山、朝護孫子寺を中心とした寺社町である。

信貴山真言宗とは、その名のとおり真言宗の宗派の一つだ。しかし、真言宗が開かれたのが9世紀ごろであるのに対して、信貴山真言宗のルーツは飛鳥時代にまで遡る。まあ、日本に仏教が伝来したのは6世紀頃なので、どの仏教も飛鳥時代にルーツがあるのは当然だが……。

歴史の勉強を少しおさらいしておくと、飛鳥時代における仏教文化の繁栄は、崇仏派であり天皇の外戚として権力を有した豪族・蘇我馬子と、推古天皇のもとでその才を遺憾なく発揮した政治家、聖徳太子によってもたらされたものである。

しかし、当時の権力者すべてが仏教思想を歓迎していたわけではない。当然ながら外国から入ってきた思想や文化を忌避する一派もあった。そのひとつが、廃仏派であった豪族・物部守屋を中心とする物部氏である。

その物部守屋は587年、丁未の乱(ていびのらん)において蘇我馬子と聖徳太子に打ち倒された。こうして仏教は飛鳥京、現在の奈良を中心に広まることとなる。

その物部守屋との合戦へ赴く際に、聖徳太子が立ち寄ったとされるのが信貴山である。山中にて聖徳太子はかの有名な四天王のひとつ、毘沙門天の存在を感じ取ったといわれている。

聖徳太子はこの毘沙門天の加護を受けて勝利したと言い伝えられている。後日、毘沙門天の御尊像を自ら刻んだ聖徳太子は、この地に伽藍を建立し、信ずべき貴ぶべき山として信貴山と名付けた。

時代は下り10世紀に入ると、この寺を整備した命蓮上人が、醍醐天皇の病気快癒を毘沙門天に祈願する。その結果、醍醐天皇は回復し、天皇から朝廟安穏、守護国土、子孫長久の祈願所として「朝護孫子寺」の勅号を賜ることとなったのである。

寺へと続く開運橋を渡る。

それなりに深い谷へ掛けられたこの橋は、実はバンジージャンプでも有名なスポットだ。

ちなみにジャンプ1回の料金は1万円くらいするらしい。

橋にかかる桜を写真に収める。少し高い場所であるせいか、ちょうど今が見頃のようだ。

この後の目的地でも同じように楽しめると良いのだが。そう祈りつつ、信貴山を後にした。

藤原京で花のコントラストを楽しむ

信貴山の急斜面を注意しながら下り、R25に合流。法隆寺を過ぎた辺りでR5に入る。

道中で痛車を発見した。私のシャッターはソレを逃さない。やまぶきベーカリーと書いてあるので、おそらくバンドリだろう。

不意に自転車進入禁止のマークが現れた。

いったん脇道に回避し、再び合流。そのまま高田川に沿って南へ進む。

R105との合流地点で左折し、東へ。

先日アップしたこの記事のせいか、不意に坂本氏から「無鉄砲へ行きたいです……」との声が漏れる。

無鉄砲、それはラーメンにあって、ラーメンにあらず。万人にはお勧めできないこってり感であるが、できれば一度は食してみて欲しい。

そういえば、今日のライドではどこで食べるのかが決まっていない。無鉄砲ではないにしても、がっつり食べられると良いのだが。

そんなことを考えていると、次の目的地が見えてきた。藤原京だ。

藤原京は、日本初の都城制を採用し碁盤目状に整備された都市である。持統天皇によって飛鳥からこの地へ都を移されたのは694年のこと。その意味では、本日の目的地は時代の流れにも沿っているようだ。

東西約5.3km、南北約4.8kmにも及ぶその都市面積は、かの平城京、平安京をもしのぐ規模である。その後710年には、その平城京へと都を移すことになるのだが。

盛者必衰・栄枯盛衰。その地に都らしき面影はなく、桜と、菜の花が一面に広がっている。

桜のスポットとは聞いていたが、菜の花がこんなにも咲いているのは知らなかった。

花々を愛でに来た人々の合間を縫って、めいめい撮影を開始。

桜もこの咲き具合なら十分に見ごたえがある。今年はもう無理だと思っていたが、来た甲斐があったというものだ。

撮影:373氏
撮影:373氏
撮影:坂本氏
撮影:おもち氏

いつの間にか、坂本氏がうちの愛車に桜の花を添えていた。

撮影:坂本氏
撮影:坂本氏

ふうん、坂本とやらもわかっているじゃない、私の魅力が。まあ、花なんかなくても私が世界で一番可愛いのは言うまでも無いのだけれど

可愛いよ

!? な……なにを……

かわいい

べ、別にそんな当たり前のことを連呼しなくても良いの!

うちの愛車が世界で一番可愛いのは言うまでもないことである。だが、心が叫びたがっていたので言わずにはいられなかったのだ。

そんなことを思いながら2828が止まらないでいると冷たい目を向けられた。ご褒美だね。

愛車の撮影会に興じていると、少しだけ晴れ間がのぞいていた。このまま晴れてくれれば良いのだが。

店長による領域展開(つけ麺いちびり)

時刻は12時少し前。そろそろお昼時である。

先に述べたように、それなりにお腹が空いている。やはりここは食べ応えのあるものを……と適当に調べていると、藤原京跡のすぐ近くに評価の高いつけめん屋を発見。

皆に提案すると、二つ返事で了承。善は急げと、桜の名残惜しさも皆無なまま目的地へとひた走る。

つけ麺いちびり

関連ランキング:つけ麺 | 耳成駅

いちびりとは、ふざけてはしゃぎまわること、或いはその人のことを指す。元は「調子に乗る」という意味の動詞「いちびる」であり、これが名詞となったものである。

大阪の方言らしいが、30年以上も大阪に住む私は聞いたことが無い。「モータープール」や「めばちこ」は知っているけれど……。

自転車を停めている間に先客が入り、10分ほど待つことに。カウンターは一杯で、我々が待っている間にも次の客が列を成していた。なかなかの人気店のようだ。

私がオーダーしたのはNつけ麺大盛り、特製。Nとは「濃厚」のことを指すらしい。一方、373氏が注文していたAつけ麺のAは「あっさり」の意味である。

並でもよかったのだが、愛車から「おい大盛り食べろ」との声が聞こえてきたので仕方なし。

それにしても、厨房内にいる店長らしき人の声が特徴的だ。ほとんど一人でつけ麺を作りつつ、周りのスタッフにきびきびと指示を出している。

その指示があまりにも的確で内心舌を巻く。出来上がったつけ麺の配膳に始まり、行列の整理、カウンターに置かれた水の入ったポットの交換、果てはトイレに向かう客へ使用中である旨のお詫びを向けるなど、一体どこに目が着いているのかと思いたくなる。

厨房だけではなく、この店内全体が店長のテリトリー。我々は知らぬうちに魔界の扉編へ突入していたらしい。

しばらくして出てきたのがこちら。

チャーシュー、味玉がつけ麺を覆うようにしてトッピング。ビジュアルは及第点だ。さて、お味の方は。

具材をかき分けて麺をとり、つけ汁に絡めて一口。

美味い。魚介豚骨系のスープだけなら他の店でもありそうな味だが、そこに全粒粉の麺の風味がよく馴染む。コシのある太麺で食べ応えもばっちりだ。

チャーシューも味玉も、スープの出来に引けをとらない。麺と一緒に食べるとさらに旨味が増す。

濃厚ではあるが、決してこってりというわけではなく、食べやすい。その上、刻まれた水菜のみずみずしさとシャキシャキ感が、口の中でさっぱりした余韻を残してゆく。そうして、再びつけ麺を啜りたくなってしまう。

大盛り、ほとんど間を置くことなく完食してしまった。そこに間髪入れず、スープ割りの確認が入る。何というタイミング。この厨房では一挙手一投足まで見られているのではなかろうか。

麺屋いちびり。たしかなまんぞくであった。

又兵衛、討ち死にしたってよ

つけ麺いちびりをあとにして、次の目的地へ。

R165はやや混雑気味。ストップ&ゴーが頻繁にくり返されるので注意深く進む。

ここにきて青空が広がってきた。気がつけばボトルもほぼ空になってしまっている。

この先はコンビニが望めないようなので、近くのオークワにて一旦補給。

私以外の3人はアイスを購入していた。やはり日差しが出てくると暑い。

ところでグリーンソフトって和歌山だけじゃないのか……あるいは奈良が和歌山に支配されている?

撮影:坂本氏

R166に入ると、長ーい坂道がお出迎え。

先陣を切る373氏と、その御御足を目に焼き付けんがために後を追いかけるおもち氏。その気持ちはよく分かると頷いていたら、愛車から突き上げをくらった。ふふふ可愛いやつめ。

それにしてもこの坂、先が見えんほどに長くてストレートである。そしてなぜこの時点でUV満載の青空に変わるのか。解せぬ。

汗をダラダラ流しながら登り切ると、おもち氏が塩タブレットをくれた。そろそろ準備しておくべきかなあ。

トンネルを回避して小さな峠を越えると、宇陀市に突入。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ここまで来れば目的地まであと少しというところで、坂本氏から提案が入る。どうやらこの近くに葛切りの美味しいお店があるらしい。

桜よりも葛切りが食べたいわ

そのビジュアルで条件反射的に花より団子な発言をするのは止めなさい

愛車もこう言うので、我々はそのお店へと寄り道することにした。

吉野葛本舗

森野吉野葛本舗【吉野葛の販売・通販・お取り寄せ・卸売・レシピのご案内】

葛製品が並んだ売店の奥に喫茶スペースがある。人気店で売り切れの可能性もあると聞いていたが、なんとかテーブル席に4人座ることができた。

ここまで気温がそれなりだったこともあり、ビジュアル的に涼しげなものを食べたい。373氏と私は葛切り、坂本氏とおもち氏は葛もちを注文。

いま、『おもち氏、葛もちを頼む。おもちだけに』……という顔をしていたわ

ハハハハハハまさかそんな(遠い目)

隠しても無駄よ、だって私も思ったもの

やっぱりお前もか! 同じこと考えちゃうんだな仲良しか!

この先の目的地のことなどを話しながら待っていると、注文したものが運ばれてきた。

眺めているだけで涼がとれそうな感じだ。早速一口。

……? 味が、しないだと……?

それ、この黒蜜をつけて食べるんですよ

うん? もちろん知ってたよ? ちょっと吉野葛とはどういうものか、そのままの風味を確かめて見たかっただけですよ? 

ほらあれだ、あれ。やたらと敷居の高い蕎麦屋が「うちの蕎麦は風味を100パーセント感じてもらうために、めんつゆではなく水でどうぞ」とか差し出してきちゃうやつみたいな。

なお私は意識が低いのでその時も「味が、しないだと……?」という感想を抱いたわけだが。

気を取り直して、黒蜜に浸した葛切りを一口。

葛のつるっとした食感と黒蜜の甘みが混ざり合う。なんとも不思議な味だ。

ガツーンとくる甘みではなく、かといって控えめな甘さとも少し違う。

それもそのはずで、甘さ自体は黒蜜によるものだ。あくまで葛切りの食感を楽しむのがこの一品の醍醐味だろう。

とはいえ、スイーツとしてはちと物足りないのも事実か。別にスイーツはなくても問題ないのだが……。

小休憩のあと、再び出発する。次の目的地はもう目と鼻の先だ。

集落の小さな坂を越えた先に、その桜はあった。

又兵衛桜

宇陀市観光サイト|観光案内|花|又兵衛桜
先人たちが愛した桃源郷「うだ」は今も人々の心のふるさととして息吹ます。

又兵衛とはかの戦国武将、後藤又兵衛のことである。といっても、知らない人も多いだろう(というか私も良くは知らない)。

後藤又兵衛は通称であり、本名は後藤基次という。豊臣秀吉に仕えた名軍師・黒田官兵衛の配下として、安土時代から江戸時代にかけて活躍した武将である。

その後藤又兵衛が晩年、息を引き取った地とされるのが宇陀市である。そして、又兵衛の屋敷跡があったとされる場所に植えられたのが、この又兵衛桜だ。

きっと、戦国武将としての又兵衛の天晴れな生涯(知らんけど)を表しているかのような見事なしだれ桜が咲き誇っているはず……。

撮影:おもち氏

…………?

又兵衛桜、満開は過ぎているようね……

……討ち死に

は?

又兵衛は討ち死にしたのでござる! ほらアレだ! 世界の意思やら何やらが明後日の方向から謎の銃弾をバーンって又兵衛の頭へ

気持ちはわかるけど嵐を呼びながら天晴れしちゃうようなネタはやめたほうがいいわ

どうにも、見ごたえのない雰囲気が漂う。なんか色あせているような感じだ。

何を隠そう(隠してはいない)、3年前のちょうどこの時期にも一度この地を訪れている。しかし、その際もくだんの桜は見頃を過ぎており、がっかり感の漂うものであった。

ちなみに、あの桜の下まで入るには、桜を維持管理するための協力金(2021年時点で100円程度)を支払わなければならない。

又兵衛の死語に植樹された桜なのになあとは思うが、まあ文化なんてものはそういうものだ。お金が惜しかったわけでは無く、あの感じでは近くで見る必要もあるまいと結論を下し、遠方でその様子を愛でるのみに止めた。

又兵衛桜、いつか満開の時期に見てみたいものである。

パンクの神様、もう一度だけ

又兵衛討ち死にの報を受けた我々は、次の目的地を決めあぐねていた。

とはいえ、この時期の奈良にはいくつもの桜のスポットがある。見頃かどうかはさておき、行き先には困らない。

とりあえず、桜その他多くの花々を楽しめるという長谷寺へ向かおうと、来た道を戻ってゆく。

すると、すぐ前方を走るおもち氏のタイヤから奇妙に甲高い破裂音がした。これは、ちょっと嫌な感じの音だ。パンクにしては音が大きすぎる。

いったん歩道へ避難し様子をみると、そこにはぱっくりと切り口の開いたタイヤがあった。

どうやらこの金属片を踏んだのが原因らしい。

これ、一体なんの破片だろうか。

少なくともチューブの交換、つまりパンク修理が必要だ。おもち氏が慣れた手つきでチューブ交換に入る。私にできることといえば、彼のそばでパンク修理のBGMを流してあげるくらいだ。

案の定、タイヤの切り口からチューブが飛び出そうとしてしまう。これでは適正な空気圧が確保できない。そしてチューブがタイヤの外からも見えている状態では、再びパンクするのは必至だ。

これ以上のライドは困難である旨、全員の意見が一致。ここで最寄り駅から輪行で帰ることになった。

ちなみにおもち氏は今日のライドに際し、輪行袋を持ってくるかどうか迷っていたらしい。こういう事態が起こり得るからこそ、輪行袋はつねに携帯しておくべきなのである。

ちなみに私は片道10kmを越えるようなライドであれば必ず輪行袋を携行する。少し想像してもらえればわかることだが、自転車を押しながら10kmの距離を歩くのはなかなかきつい。

応急処置したタイヤの様子を気にしながら、20km/h程度でゆるやかに進む。

無事に帰るまでがライドである――そんなことを考えながら走っていると、思いがけない景色が飛び込んでいた。

撮影:おもち氏
撮影:おもち氏

道の側を流れる宇陀川に沿って、桜並木がずっと続いている。

なかなかの見ごたえだ。しかも、駐車場らしき場所がないせいか、人も少ない。

パンクの神様も粋なことをなさる。平常運転ならおそらく見過ごしていただろう。

満開を過ぎていたこともあり、花びらが川面に溜まってるのが見えた。

撮影:坂本氏
撮影:坂本氏

どことなく、その景色は切ない。

自分にとって春は、少し憂鬱な気分になる季節だ。不意にそのことを思い出した。

なんか切ない

……少しはわかるわよ、その気持ち。あなたたち人間にとって、春はいつも忙しいし、環境の変わり目でもあるようだし

それもあるな。あと、環境の変わり目という意味では、春は始まりの季節でもある。そして始まりとはいつも憂鬱なものだ。希望を持ったスタートなんていうのは、ついぞ経験したことがない

ふうん。まあ、私にはあんまり関係ないのだけれども。でも、少なくとも春は自転車で走っていると気持ちいい季節でしょう?

……ああ、それは確かに

なら、今この瞬間はその気持ちに素直になりなさい。何よりも、この私が一緒に走っているのだから

そう、少なくとも春は、自転車に乗っていて一番楽しい季節だ。そのこともまた、思い出された。

いつまでも桜並木を眺めていたい気持ちを断ち切り、帰路につく。

こうして、今年の桜ライドは終了した。

結びに代えて

冒頭に記したとおり、今年はもう自転車で桜を拝むことはないだろうと思っていた。しかし、蓋を開けてみればご覧の通りである。

諦める前に、まずは動くべし。そんな脳筋な思考も時には大切だと知る。少なくともこの季節においては、あれこれ考えるよりも先に桜をもとめて走るべきなのだ。

来年の春も良き景色と巡り会えますように。

参考:
【JA大阪中央会】大阪の農業
【農林水産省】大阪府詳細データ
【大阪府】ぶどう
【ふっかの健康食ラボラトリー : 関西福祉科学大学が発信するレシピと栄養情報サイト】大阪の伝統の食① 柏原市とぶどう
『聖徳太子・物部守屋(もののべ の もりや)と八尾』 | 八尾市
朝護孫子寺とは : 信貴山 朝護孫子寺 公式サイト
都市史03 条坊制(フィールドミュージアム京都)
橿原市/藤原京
宇陀市観光サイト|観光案内|花|又兵衛桜

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