【奈良】峠を登ればラーメン(しゃばとん)のカロリーも0理論【85km】

自転車

前書き

2021年3月23日 火曜日

ライドの行き先が決まるきっかけはさまざまである。誰かと何処かへ行きたいと話している時だったり、Googleマップを俯瞰している時だったり。

なんとなく、週末は何処かへ走りに行きたい。その気持ちだけをぼんやりと抱えながら、行き先と、あるいは同行者を決めるきっかけを皆探しているのだろうと思う。

ただ、たまに何の前触れもなく突然に、行き先がぱっと決まることもある。

その日、大きな案件がひとつ片付いてのんびりしていた時のことだ。

「次の仕事まで雑務の整理でもするか。そうだ夜に自転車でラーメン食べに行こう」

まったくもって非論理的な思考である。

夜のラーメン、行くなら平日一択だと考えていた。仕事が終わってから、わざわざラーメン食べに行くために自転車に乗る。時間を有効に使えるのはもちろんのこと、彩りのない平日に対するささやかな刺激としてもうってつけだ。

夜に自転車でラーメンを食べに行くというのは、これまでにも何度かやったことがある。行き先はなぜか奈良方面になることが多い。意外に思うかもしれないが、奈良はラーメン店が多いのである。

奈良のラーメンといえば、天理スタミナラーメンや彩華ラーメンのように、白菜とニンニクを大量に使ったものを思い出す人も多いだろう。しかし、最近は魚介系や鶏系を中心に個性的な味のラーメンを出す店が増えているようだ。ひとつの傾向として、濃厚かつこってり、けれども食べやすさを売りにしているように感じる。

大阪からもそれなりにアクセスしやすく、翌日の仕事に(さほど)影響のない範囲で帰ってこられる。こってり系も自転車で行けば実質カロリーゼロだ。行き先としてはうってつけだろう。

善は急げ。その旨をとあるふたりに連絡する。何度もご一緒させてもらっている、なっち氏(@nacci_contact)ときゃぷ氏(@cap_pac)である。

初めて自転車で夜のラーメンを食べに行ったのもこのメンツである。というか、初めて一緒に走ったのがそのラーメンライドであり、行き先も同じく奈良であった。

ふたりから参加可能である旨の連絡を得て、せっせとプランを練り始めるのであった。

「とりあえず登っておくか」←考えることはみな同じ

2021年3月26日 金曜日

平日夜に行くとか言っていたのに、なぜかこの日は休みにしてしまった。まあ、休めるときはどんどん休まないとね! なんなら24時間365日ずっと休んでいたいね!

家で雑用を片づけていると、気がつけば17時。集合時間に間に合うようにするためには18時に出れば良いのだが、なんとなく準備して出発する。

日が明るい。月は出ているか。

大阪の中心部を抜けて、R163に合流。

春休みのシーズンなせいか、いつもより車が多くなかなか進まない。焦っても仕方ないので、安全運転第一で進む。

大阪から奈良へアクセスするルートはいくつもあるが、無難なのはやはり清滝峠を越えるルートだろう。というか、かねてより夜の清滝峠を走るとかいう訳のわからないことをしている我々3人である。清滝以外の選択肢は、無い。

通常よりも20分ほど時間をかけて、清滝峠に到着。集合場所は近くのコンビニとしていたが、まだ誰も来てはいないだろう。早めに出たのは集合前に軽く登っておこうという算段である。

さーて登っちゃうぞーとスタート地点に車体を進め……ると……。

遠方になんか見たことのあるシルエットが。

なっち氏である。というか、多分いるような気がしていた。早めに出ますと前もって呟いていたしね。クククまんまと釣れたなあ!

やはり同じようなことを考えていたらしく、既に1本登ってきたらしい。聞けば、今週は23日から3日連続、計5本も登っているそうだ。

これが恋愛シミュレーションなら清滝ちゃんの好感度爆上がりである。坂の擬人化とか誰かどうでしょう。

とりあえず、それぞれのペースで一本登る。

私はソロの時以外は清滝峠で気合い入れたくないので、普段よりも幾分力を抜いて走る。

1本登って降りる。ちょうど集合時間15分前。ふたりしてコンビニへと向かう。

まだ少し時間があるというのに、既にきゃぷ氏も到着していた。流石、パンクチュアルな奴である。

きゃぷ氏と走るのはおよそ半年ぶり。ふだんネット上でやりとりしているせいか、そんなに時間が経っていたように感じないが……。

目的地までの距離は往復で40km程度。大した準備も必要ないと思うが、一応補給を済ませておく。

さあ、夜中にラーメン食べるという罪深いライドの始まりだ。

暗闇の奈良を走る

再び、清滝峠。

ああ、私にも聞こえる。清滝ちゃんの声が……!

あら、また来たの? うふふ、いつでも好きな時に登ってもらっていいのよ

KeiOS、なんかこの坂登るの嫌だわ。いつも思っていたけどこの坂、清楚な雰囲気を出している一方で、10分切りできないサイクリストはサイクリストにあらずと値踏みしている感がするのよね

しかし家の近くで登りやすい坂はここ以外考えられぬ。そしてビギナー・プロを問わず、全力疾走からポジションの確認、ゆるいペダリング、そして己との対話まで、あらゆる走り方を受け入れてくれる懐の広さを兼ねているのが清滝峠だ。このまま好感度を稼いでいればやがて清滝峠は俺の姉になってくれるかもしれない。或いは俺の母となるかもしれんのだ。なあ、わかるだろう?

気持ち悪いので金輪際私に乗らないでくれるかしら。おまわりさんここにへんしつしゃがいまーすおまわりさーん

通報前に登り始める。サイクリストは皆、心に変態を抱えているものである。

なっち氏ときゃぷ氏の背中を見送り、やはりマイペースで登る。とはいえ、あまり待たせておくのも忍びないので、後半のつづら折れ区間でフロントギアをアウターに戻し、踏み込んでゆく。

夜中にラーメンを食べるのだ、このくらいはカロリー消費しておかなくてはなるまい。

頂上から一気に奈良側降り、R163に合流。ここからしばらくはまっすぐ進む。

それにしても、体感温度にして大阪よりも2度ほど低い気がする。奈良の中心地である大和平野は平坦な盆地上の地形なので、当然といえば当然か。

ぽつぽつとチェーン店が並ぶその向こうに見える光は、少ない。夜の奈良はいつも暗闇のイメージだ。

ちなみに奈良と聞くと古都奈良なんてフレーズを想像する人も多いかもしれないが、奈良の大半は高地や山地であり、その規模や深さは和歌山に近いといえる。

精華町のあたりでR52へ。回転寿司や焼肉食べ放題の店が目に入る。焼肉食べ放題って過去に行った記憶がほとんどないな……。

お寿司、焼肉……

なんだ、焼肉が食べたいのか? 今日はこれからラーメンを食べにいくんだぞ

何を言っているの? お寿司も焼肉もラーメンも、全部別腹でしょうに。ああ、ついでにスイーツもあると最高なのだけれども

やめてくださいそんなに食べたら俺の胃が死んでしまいます

小食なのね。サイクリストたるもの、いつでも食べられる強さを持っておかないと

何事にも限度というものがあるのです。

大和西大寺駅のそばを通り、平城京跡の西側を進む。だだっ広い敷地内に、朱雀門らしき赤い門がライトアップされている。

R308の交差点を直進した先に、目当ての店はあった。

カロリーとタンパク質の暴力(無鉄砲しゃばとん)

本日の目的地、しゃばとん。

しゃばとんは関西のラーメン「無鉄砲」の系列店のひとつである。京都の木津に本店を構え、奈良を中心に大阪、東京へ複数の店舗を展開。最近はシドニーにも出店しているらしい。

その特徴は超が付くほどのこってりスープ。背脂などを一切使用せず、豚骨と水だけでひたすら煮込んで作り上げているものだ。なのに、その独特の香りとこってり具合は他者の追随を許さない。

ジャンルとしては豚骨ラーメンに区分されるが、一般的な豚骨ラーメンした食べたことが無い人は口々にこう言うだろう。

「これは本当に豚骨ラーメンなのか……」と。

かくいう私も年に数回、大阪の無鉄砲に通っている。そのたびに、豚骨ラーメンとはなんぞや……という問いを突きつけられてしまう。

否、もはやこれはラーメンではない。ラーメンといえばスープとカエシによる絶妙な味のキレを麺とと もに楽しむもののはずだ。しかし、無鉄砲にはそれがない。

いや、ないというのは語弊があるか。個人的に、無鉄砲のラーメンは味とこってりの比率が1:9だと感じる。そんなラーメンのどこが美味いというのかといえば、まあ食べてみないと分からん、としか言えない。

一口食べると、凝縮された豚の旨味が口の中に広がる。これは美味い、いくらでも入ると思ったその瞬間、既にだまされてしまっている。食べれば食べるほど、こってりの沼に胃がずぶずぶと沈んでいき、完食するころには後悔の波に呑まれ、二度と来るかと思うのである。

そして数カ月後、なぜか再び無鉄砲の前に立っていることに気がつくまでがセット。立派なムテラーの完成だ。

店内に入り、食券を購入して着席する。

豚そば肉増しに、半熟味玉、そして豚めしの3点セット。豚そばは以前にも一度食べているが、豚めしは初めてだ。

なっち氏もきゃぷ氏も豚そばとスペアリブを購入。きゃぷ氏は味玉をプラス。なっち氏に至っては豚そばを大盛りにしていた。

無鉄砲の大盛りや替え玉は私にとって鬼門だ。いつも並1杯でダウンしてしまう。つまりはそのくらいにこってりだということだ。

待つこと数分、出てきたのがこちらだ。

豚骨の匂いが鼻をつく。

二郎系のようなビジュアルの通り、チャーシューの下にはもやしとキャベツが入っている。とはいえ、二郎系ほどのマシマシ感はない(注文すればできるとは思うが)。

無鉄砲で二郎系。脂マシマシに彩られたその丼はまさにカロリーとタンパク質の暴力だ。

自転車で来ていることもあり、このくらいなら余裕で完食できる。そう思いながら隣の豚めしを見て、私は戦慄した。

ここのお店はサービスが行き届いているのね。豚めし、茶碗1杯程度の量を想像していたのだけれど、普通に丼の並サイズくらいあるわ。まあ、これでも私のおなかは5割ってとこでしょうけど……KeiOS? どうしたのKeiOS、なんか顔が引きつっているわよ

顔のひとつやふたつは引きつってしまうのも仕方が無い。豚めし、茶碗サイズを想像していたのにこの量とは……。美味そうではあるが、ラーメンと合わせて食べきれるだろうか。

基本的に食品ロスは許さないマンなので、お残しは自身に禁じている。過酷なラーメンライドが始まってしまったようだ。勿論、過酷の意味が異なる。

戦意喪失していては食べきれるわけもない。意を決して、まずはラーメンから実食。

ああ、無鉄砲の味だ……そんな感想が浮かぶ。

脂の旨味を100パーセント全面に出したかのような豚骨。本当に水と豚骨だけで作ったのかと疑ってしまうほどに、こってりとした味だ。増し増しにしたチャーシューは、スープとの相性が抜群だ。

そのチャーシューの下にはキャベツともやし。程よい水分とシャキシャキ具合が、沼のような豚骨ラーメンにおけるオアシスのような役割を果たしている。

さらにその下には太麺。通常、無鉄砲の麺は中太のちぢれ麺か、細麺である。なお、細麺は替え玉限定の麺であり、前述のとおり私は一度も食べたことが無い。

記憶が確かなら、無鉄砲の系列店で太麺を使っているのはしゃばとんの他に、つけ麺専門店の「無心」くらいではなかろうか。

この太麺もコシがあって美味い。スープと良くからみ、食べ応えがある。もちろん、こってり感のすごいスープにボリュームある太麺を絡ませるわけなので、満腹感が一気に押し寄せてくるわけだが……。

ある程度食したところで、豚めしに移る。早速一口。

美味い。程よく刻まれたチャーシューとマヨネーズの味がごはんにピッタリだ。ネギの辛みと歯ごたえもちょうど良いアクセントである。

それにしても、やはり量が多い。いや、普通のラーメンに半チャーハン程度なら食べられるのだが、こと無鉄砲となると、同じ量はとても辛い。

最初は「美味い、これなら大盛りでも替え玉でも余裕だぜ」と思うのに、だんだん箸が進まなくなる。胃がこってりスープの沼にずぶずぶと嵌まり、抜け出せなくなる感じ。

自転車になぞらえるなら、ヒルクライムで最初はケイデンス70余裕で回せていたのに、だんだん疲弊してゆき、ついにはケイデンス40以下でゼーハー言ってしまうようなものである。

水を何度かおかわりしながら、豚そば、豚めし共に完食。美味しかったが、なかなか大変だった。たぶん自転車に乗らずに来ていたら完食できなかった気がする。

ふう、なかなか美味しかった

実はこってりいける派なんだな

ラーメンはこってりに限るわ。まあ、あっさり系も好きだけど

ビジュアルに反している……

さあ、次はつけ麺を食べに行くわよ。早く支度しなさい

そんなに食べたら太るぞ(ボソッ

はあ? あなた馬鹿ァ? 自転車がカロリー摂取で太るわけないじゃない

真顔で冷たい目をしながら罵倒された。ぞくぞくしちゃう!

ちなみにスペアリブもなかなかの美味だったらしい。大阪店にもあるので、お腹に余裕があったら今度頼んでみよう。

しゃばとん、たしかなまんぞくであった。

「くそ、つづら折りで脚を使い切ったか……」という言い訳

店を出て南に下り、すぐに右折する。生駒山系に沿って走るR7を目指す。

途中、桜並木に出会う。例年よりも桜の開花が早い。

数日後には雨が降るらしく、満開の桜をもっとも楽しめるのはおそらく今週となるだろう。花見ライドとしゃれこむには、来週ではもう遅いかもしれない。

桜並木を越えると、道が無くなっていた。

ガードレールの下を愛車とともにくぐり抜け、復帰。通行人がいたら何やってんだこいつらと思われていたに違いない。

R7に出る。ここから先はひたすら北上していくだけだ。

途中、無鉄砲の系列店「無心」を発見。

きゃぷ氏に「寄っていきます?」と聞いたら全力で拒否される。なお、愛車から行きたいオーラがめちゃくちゃ出ていたが、こちらは華麗にスルーした。

大した距離を走ってもいないのに、どうにも体が、脚が重い。既に時刻は22時を過ぎている。朝型の自分にとって夜は休むべき時間だ。脚が重いのはたぶん清滝峠2本目を登ったときに、つづら折れで気合い入れすぎたせいだと思うが……。

無茶をしてついていくのは事故のもと。正直にしんどい旨を伝えると、先頭を走るなっち氏がペースダウンしてくれた。助かる。

なんとなくそのままR163に合流するのも面白くないので、ならやま大通りを経由してR168へ。無駄に登り無駄に下るだけだったが、車線が広いので走りやすい。

ならやま大通りはちょうど木津駅と奈良駅の中間あたりまで続いているので、別のラーメン屋へ行くときには役に立つかもしれない、などと考える。

R163に合流し、再び清滝峠を反対側から。マイペースで走る旨を伝え、なっち氏ときゃぷ氏の背中を見送る。

以前ならもう少しついて行けたような気もするが、ここしばらく激務だったせいかあまり自転車に乗れていないこともあり、追いかけるのも困難だ。今はゆっくり戻していこうと思う。

忙しかったのはわかるけど、清滝だけじゃなくて、たまには他の場所にも連れて行きなさいよね

本当にそうだなあ。ゴメンゴメン

頂上に到着。最後に自転車3台を並べて撮影。

……看板だけが煌々ときらめている。夜の写真撮影はとかく難しい。

なお、暗くて判別できないが自転車の下には「地面が冷たくて気持ちいい……」と言いながら寝そべるきゃぷ氏の姿があった。

清滝峠を下り、スタート地点のあたりでなっち氏が離脱。R163とR1の合流地点できゃぷ氏とも別れる。

きゃぷ氏は明日も仕事とのこと(もしかするとなっち氏も)。無茶ぶりにも似たお誘いを快諾してもらい、感謝である。お二人ともありがとうございました。

結びに代えて

夜のラーメンライド。ラーメンが主目的だと思われがちだが、夜間に走るという非日常感を手軽に味わえるという意味でもなかなか楽しいものである。

また、夜間ライドは平日を有効に使えるというメリットもある。土日以外にも走る選択肢が増えるというのは、天候が気になるサイクリストにとっても悪くない話のはずだ。

なお、夜のラーメンといえば屋台も外せない。次は久しぶりに屋台ラーメンを目指してみるのも良いかもしれない。

帰宅後、プシュっと缶ビールのプルタブをあけながら、次の目的地をせっせと探し始めるのであった。

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