絶品ハンバーガーを求めて市島製パン研究所へ

自転車

前書き

自転車とハンバーガーの親和性。これはガチである。

たいていの人はハンバーガーと聞くと、マクドナルドやロッテリア、モスバーガーのようなチェーンを思い浮かべるだろう。かく言う私が最後にこのようなチェーン店を訪れたのはいつだったか……。もはや思い出すのも難しい。

しかし、ドムドムハンバーガーはわりとガチ。あの唯一無二のB級感とチープさ、明後日の方向を目指したラインナップはどうにも無碍にできない魅力がある。自転車に乗り始めた頃にも一度、わざわざクロスバイクで高槻市の某店に訪れているわけだが。

さっそく話が逸れた。チェーン店のハンバーガーの話ではない。

世の中には、チェーン店以外にも「ハンバーガーの専門店」が存在する。街中に店舗を構えているケースもあるが、少なくとも近畿圏においては公共交通機関では訪れにくい場所にあることも多い。

今回訪れた市島製パン研究所も、そんな訪れにくいハンバーガー専門店のひとつである。

営業日は木・金・土のみ(2022年2月時点)。1時間に約一本しかないJR福知山線市島駅からは徒歩で約30分。しかもお昼時には行列ができるという。その難易度の高さから、これまで敬遠していた店のひとつだった。

そこで、自転車の出番となる。現地までしっかりと走り、カロリー爆弾のようなハンバーガーで腹も心も満たす。まるでマッチポンプのようだが、これぞ究極の食べ方であろう。

大阪から市島製パン研究所までの距離は90km程度。片道ライドで行くにはちょうど良い距離だ。

いつまでも敬遠していては行くことができない。そろそろ回収しておきたいと思い、意を決して向かうことにした。

今回の参加者はこちら。

Shin(@shinox_kg
373(@m_alice
KeiOS(@kei_os_

ハンバーガー食べに行くのもずいぶん久しぶりね。楽しみだわ……

実は去年の佐賀行きでも食べてるけどね。アレも美味しかった。なんというか良い意味でのチープさだったなあ

今回は専門店のヤバいやつが食べられるのね! こう「ドーン!」とか「バーン!」と出てきて「よろしい、食べるが良い」という感じの

語彙力崩壊してるぞ。まあ、言わんとしていることはわかるが

噂に聞くヤバいハンバーガーを求めて、ライドの準備を始めるのであった。

フィンガーフレアボムズの真似流行ったよな

2022年2月27日 土曜日

午前5時30分に起床。

仕事がある日は起きるのが大変億劫だ。しかし、ライドの日はアラーム1秒でパッと起きられる。まあ、眠いものは眠いのだが。

軽く朝食をとり、準備を済ませて出発。

R176をずずいっと進み、神崎川沿いの路に入る。

信号に巻き込まれずに池田方面へ抜けられる定番のルートだ。雨上がりだとウェットな路面で車体が残念なことになるが……。

しかし、この日は移動時間を計りかねていたのか少し遅刻してしまった。予定の時刻を10分ほど過ぎて、集合場所のローソン池田新町店に到着。

既に到着していたShin氏、373氏に平謝り。今度から所要時間を見直そう。

撮影:373氏
撮影:373氏

事前に設定していたルートを再確認する。登りがあるのは丹波篠山市の手前まで、それほどきつい行程にはならないだろう。

ルート設定した私が先頭に立ち、出発。

県境を越えていつものr12に入ったところで……。

寒い!

確かに、これはつらいでござる

前々から思っていたが、この時期。川西~池田のあたりで県境を越えて兵庫県に入ると一気に寒くなる。

今日ほどそれを実感した日はない。とにかく空気が冷たい。

今日は暖かくなると聞いていたのだが……。暖かいのに寒い、寒いのに暖かい。冬将軍のかわりに氷炎将軍でもいるのだろうか。

空が目に染みやがる……綺麗な空だ……

寒暖差をやり過ごしながらr12を北進。

道の駅いながわのすぐ手前でr68に入る。

宝塚側から下ってきたことは何度かあるが、逆に登ることは少ない。ゆるい登りなのでギアをアウターにしたまま、だべりながらゆっくり登る。

千刈水源地のそばを通り過ぎたところで150度ほど方向転換し、北へ続く道に入った。

走ったことのない道だが、なかなか雰囲気が良い。まだまだこの辺りには知らない道が多いようだ。

r323に合流して、木器の交差点でさらに北上。r37に沿ってひた走る。

それにしても良い天気だ。雲ひとつ見当たらない。目にしみやがる……。

ここにきて寒さも気にならなくなってきた。快適な気候のなか、のんびりとペダルを回す。

やがて道は羽束川に沿って狭くなる。川沿いにごつごつとした岩場が見えた。

ふと道ばたに視線を移すと、雪が残っていた。先週、先々週とやってきていた寒波の名残だろう。

再び二車線の道となったところで、丹波篠山市に入る。

以前は篠山市という名前だったが、2019年に行われた住民投票の結果、今の丹波篠山市となった。

丹波の名で特産品を売り込む篠山市が、隣接する丹波市と混同されることを避けたいという理由で、この名前になったのだという。

確かに、丹波市と丹波篠山市とで区別は付くが……どちらも丹波という名を冠するのはアイデンティティの観点からどうなのだろう、という気はする。まあ、丹波は広い地域を示す地名なのでさもありなん、か。

羽束川に掛けられた小さな橋のところで一旦停車。

「どうした? 変身しないのか?」と煽ってきそうな笑顔だ。

ここから永沢寺のほうへと続く、名も無き峠へと入る。

それほど長くない坂で、序盤は緩い登りが続く。後半は最大斜度10%程度だが、見かけよりも走りやすい。

ただ、ここまで踏み込みすぎたせいか少し足が辛い。話せるくらいのペースでのんびりと登る。

道が分岐する頂上のあたりまでやってきたが……まるで雪山のようだ。

我々は一体どこまで登ってきたというのか。

流石にこの坂道を下るのは無理がある。もう一方の雪に覆われていない道へ迂回し、r49に合流。三田篠山線と呼ばれる道に入る。

いったん別のところにいたらしく、再び丹波篠山市へ。

急な下り坂を注意しながらやり過ごしていった先には、のどかな里山の風景があった。

丹波篠山市の市街地は目と鼻の先だ。

はじめての丹波篠山市街地

市街地に入ると、さっそくお堀が見えた。

写真では見えないが、その中心に位置するのは篠山城。徳川家康によって1609年に建てられた城であり、丹波篠山市街地のシンボルとなっている。

お堀の内側には明治時代から続く丹波篠山市立篠山小学校が見えた。こういう場所に学校が建てられているのは興味深い。

篠山城の城下町としての歴史を有しているせいか、碁盤目状の整然とした市街地が広がる。静かで雰囲気の良い町並みだ。

撮影:373氏
撮影:373氏

この日は人通りもまばらであったが、ときおり停車する路線バスからは観光客らしき人々が降りてゆき、方々に街を散策してゆくのが見えた。おそらく丹波黒豆の収穫時期には多くの人で賑わうのだろう。

時刻は12時少し前。事前に作成したタイムテーブルとほぼ一致している。予定どおり、ここで少し休憩してゆくことにした。

カフェでもと思い訪れたのはこちら。

かふぇ いなぽんて (篠山口/カフェ)
★★★☆☆3.17 ■予算(昼):~¥999

大正ロマン館と呼ばれる商業施設内に併設されたコーヒースタンドである。

本来なら昼食時であるが、目的地はまだ先だ。羽休め程度ということで黒豆珈琲と、シューボーンなるスイーツを注文。

撮影:Shin氏

ここまで走ってきた体に、珈琲の温かみがしみる。走っていると暖かいのだが、体はそれなりに冷えていたようだ。

そこに冷たいシューボーンを食べるという行為。もはや体が熱いものを欲しているのか、冷たいものを欲しているのか自分でもよく分からない。人間、食べ物の前では度し難い生き物になるらしい。

集合場所からここまでの走行距離は50km程度。ちょうど良い休憩となった。

絶対向かい風なんかに負けたりしない!(フラグ)

カフェを後にして、一路福知山方面を目指す。

r140を経てにしきトンネルを抜け、r97を北東に進む。

その先の分岐点でr69へ。ここで丹波市に入り、そのまま西進する。

北東→西という形で、ほぼ行って戻るような位置関係である。しかし、直接進める道がないのだから仕方がない。

幸いにしてr69から先は下り基調の道だ。ここで一気に距離を稼ぐつもりだった。

つもりだったのだが……。

蓋を開けてみれば強烈な向かい風。斜度6%近い下り坂なのに、スピードが乗らない。

平地になっても向かい風が衰えることはなく、25km/h程度を維持するのがやっとだ。

ふええもう足が限界だよう

サドルの上で気持ち悪い声出さないでもらえるかしら。足がつらいのはここまで踏みすぎてるせいでしょう

登りアウター、ダメゼッタイ

それにしても何よこの風、ほんと進まないわね

久しぶりに先頭を長く引いて妙なテンションになったのか、足が痛い。目的地まで残り10km程度の地点で、無理せずShin氏と先頭を交代。

しかし、踏めないのはどうにもテンションやアウター縛りのせいだけではない気がする。

ここのところ、平地で高速域を維持するのがつらく感じるのだ。ヒルクライムしている分にはまだ踏めている気がするのだが……(無論、速く登れるわけではない)。

解決策としては、できるだけ数多く走るしかないのだろう。別にストイックな向上心を持ち合わせているわけではないので、無理せず戻していきたいところだ。

このハンバーガー、パクパクですわ!(市島製パン研究所)

Shin氏を先頭にして、r69からr138へ。

やはり後ろは走りやすい。2人に引いてもらいながら目的地へのスパートをかける。

そしてついに、我々は念願の目的地へとたどり着く。

市島製パン研究所 (市島/パン)
★★★☆☆3.39 ■予算(昼):¥1,000~¥1,999

市島製パン研究所。民家の並ぶ一画にその店はあった。

撮影:Shin氏
撮影:373氏

大きな看板が立てられているのですぐに気がついたが、一見すると本当にただの家にしか見えない。

だが、店のすぐそばでは肉を焼き上げる香りが漂ってくる。

時刻は14時だというのに、未だ2~3組程度の列ができていた。噂は本当だったか。これは期待できそうだ。

列に並び、しばらくして注文する。店内でも食べられるらしいので、そちらでいただくことにした。

私が注文したのはトミーノチーズバーガーにドリンク、サラダ、ポテトのセット。なんとなく、ハンバーガーにはサイドメニューを付けたくなる。

ちなみにトミーノチーズとはイタリアのピエモンテ州発祥のチーズである。山羊のミルク100%で作られているらしく、カマンベールよりも固いのが特徴だ。

店内には本物の暖炉が置いてあった。温々とした空間でしばし待つ。

そうして出てきたのはこちら。

来たわね、「ドーン」とか「バーン」という感じの本格的なハンバーガー!

だから語彙力

写真では伝わりにくいかもしれないが、見た目以上にボリューミーだ。そしてパティよりもトミーノチーズの分厚さに目が行く。

ペーパーで抱えて、さっそく一口。

……これは美味い! 口に含んだ瞬間、肉とチーズのカロリー爆弾が起爆する。

香ばしく焼き上げられたパティは、肉を食べることの喜びをあらためて我々に教えてくれる。そこに乗せられたトミーノチーズの食感と風味が奏でるハーモニー。これ以上に肉の旨味を引き出す組み合わせがあるのだろうか。

フォークも用意してあったが、このハンバーガーにおいては見た目を気にせずにかぶりつくのが吉だろう。一口、また一口とかみしめる度に溢れる肉の旨味が、食べる喜びへと転化されてゆく。

幸せだ……ここまで走ってきた甲斐があった。空腹という最高のスパイスも合わさって、最高のカロリー摂取ができたように思う。

……美味しかった。こんなに美味しいハンバーガーを食べたのはいつ依頼かしら

ホントになあ。もう少し近所にあると嬉しいんだが

個人的には三田のダコタラスティックテーブルと甲乙付けがたいわ。少し系統が違うけれども

ダコタ ラスティック テーブル (横山/ハンバーガー)
★★★☆☆3.62 ■予算(昼):¥2,000~¥2,999

ちなみにダコタラスティックテーブルも、市島製パン研究所も、片や某店の元店長、片や某店の元オーナーシェフが開いた店だそうで、源流は同じようだ。ちなみにその某店には行ったことがないのだが……。

いずれにしても、どちらもあらためて再訪したい。そう思わせるだけの味である。

市島製パン研究所。その噂に違わぬまんぞくであった。

撮影:373氏

逆だったかもしれねェ……

少し遅めの、けれども最高の昼食を終えて満足した一行。

終着地の福知山駅までは約15km、食後の腹ごなしにはちょうど良いだろう。

竹田川沿いに北上し、途中でR176に合流する。

撮影:373氏

国道にありがちな小さな峠を登り、福知山市に突入した。

それにしてもここで京都府……兵庫の北側をずっと走っていたのに、という妙な感覚が拭えない。京都府は北西に伸びて日本海に接する地形となっているので当然なのだが。

あとはひたすらパレードランである。R176沿いにひたすら走っていると、程なくして市街地に突入。

そのまま駅に到着した。本日のライドもおつかれさま、である。

ここまで1時間程度かかるかと思いきや、追い風のおかげで30分程度で済んだ。少し前まで向かい風だったのに……。こればかりは読めないものである。

次の列車まで約1時間待ち。福知山はそれなりに大きな街なので、もう少し本数があっても良いように思うのだが。

などと言っていても仕方が無いので、めいめいのんびりと輪行準備を整える。

撮影:373氏

駅に入ると、おあつらえ向きだと言わんばかりの様子でコンビニが併設されていた。

本日の走行距離は自宅からを含めて約120km。途中、何度か水分補給をしたものの、喉はカラカラである。

ならばやはり酒を……などと思うのだが。

Shinさん、ビール買わないんですか?

いや、僕だけ買うとかそんなの悪いじゃないですか。でもKeiOSさんが買うなら、1人にはさせませんよ

いやいやShinさんこそ飲みたいなら買うべきですよ。僕はまあ、どうしてもShinさんが飲みたいというならお付き合いしますよ

謎の駆け引きが発生。しかし、何ともいえぬレベルでの駆け引きである。

互いにどちらが先に折れるかけん制していたところ、

あれ、2人ともお酒買わないんですか?

状況を知ってか知らずか、373氏が無意識に煽ってきた。

先に折れたのは私。いや、折れたのじゃなくて譲歩したのである。私は大人だからね! Shin氏も飲みたいだろうからここは大人の私が譲歩しなくちゃね!

……なんだこの茶番劇は。

無事に帰りの列車に乗り込み、勝利の美酒をあける。

撮影:373氏

こうして、念願の市島製パン研究所行きライドは幕を閉じた。

結びに代えて

市島製パン研究所、その噂は本当だった。

オーソドックスながら非常にレベルの高いハンバーガーを出す、そんな印象を受けた。肉の旨味を純粋に引き出すための試行錯誤とその結果が垣間見えるようだ。

ライドとハンバーガーの親和性、それがまたひとつ証明されてしまったライドであった。

それにしても、まだまだ訪れていないハンバーガー屋は無数にある。そのいくつかは、やはり公共交通機関では行きづらい場所のようだ。裏を返せば、自転車で行くには最適ということになる。

行きたい場所リストにチェックしたマップを眺めて、次のライドに思いを馳せるのであった。

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