【大阪】夜の清滝峠にわざわざ4人集まって複数回登るとかいう意味不明のライド

自転車

前書きの前書き

2019年に入ってから、習慣化した行為がひとつある。週に1回程度、自転車で夜の清滝峠を登ることだ。

清滝峠とは、大阪府四條畷市と奈良県生駒市を結ぶ、国道163号(清滝生駒道路)の峠である。なお、現在の国道163号は清滝トンネルを通過するので、正確には生駒山地を越える旧国道の峠がそれにあたる。

清滝峠の基本情報は次のとおり。

清滝峠: 関西ヒルクライムTT 峠資料室
スタート地点:中野ランプ北 ゴール地点 :頂上交差点の横断歩道 標高差 :218m   距離 :3.2km 平均斜度:6.7%  最高斜度:10.3% 国道163号(清滝生駒道路)清滝トンネル開通前の生駒山地を越える旧国道の峠。 アクセスの良さや走りやすさから、多くの自転車乗りの練習の場となっている。 大阪の...

距離:3.2km
標高差:218m   
平均斜度:6.7%
最高斜度:10.3%

大阪や奈良のサイクリストからは初心者向けのコースとして有名だが、実際に初心者向けなのかどうかはよくわからない。

ただ、

・外灯の数が多いので夜間でも登りやすい
・道が幾分きれい
・たいていの車は清滝トンネルへ向かうため交通量がさほど多くない
・頂上にも集落があり夜間の不気味さがあまりない

以上の点から、ベテランも含め多くのサイクリストがこの場所を練習に使っている。

清滝峠の登りが習慣化したきっかけは、以前に奈良の屋台ラーメンを食べようというライドの実施中、やはり夜中に自転車で清滝峠を越えていた時だったように思う。

その日の案内人のふぃぼなっち氏(@nacci_contact)から、夜にときどき清滝峠を登っているという話を聞いて、確かにこの明るさなら夜間でも登れるなとか思ったような気がする。その10日後には、ふらふらと登り始めている自分がいた。

たいてい、一度行くと2~3回登る。1本目はなんとなく全力で。2本目以降はのんびりと登っている。

何で夜間にわざわざ登っているのか。自分でもよく分からない。少なくとも、ヒルクライムのトレーニングなどという殊勝な意識はない。

確かに、記録更新に一喜一憂したり、登りのポジションの確認をしたりはする。それでもトレーニングという意識はほとんど持っていない。

あえて言うなら、自分やロードバイクとの対話だろうか。別段、比喩でも中二病的表現でもなく、そのままの意味である。

一生懸命に登っていると、自分の限界がよくわかる。

呼吸が辛くなる。脚には疲労が溜まっていき、動くのを拒否しようとする。もう1歩も漕ぎ出したくない。そのとき、なんとなく今の自分の姿が客観的に見えるような気がするのだ。

自身の身体能力に対して、ロードバイクは実直に反応する。どれだけ良いマシンに乗っていても、自分が持つ能力以上のものを引き出してくれることはない。

以前よりも少しだけ早く、楽に登れるようになったとき、自分がひとつ限界を超えられたのを感じるとともに、ロードバイクもまたそれに応えてくれたのがわかるのだ。

そんな、意味のない対話の繰り返しをするのがなんとなく楽しくて、夜の清滝峠を登りに行くのである。

前書き

前書きの前書きが長くなった。ここから前書きである。

2019年10月10日

その日は自転車乗りのあまえび氏(@infravision011)が開いた肉会に参加していた。

会場は中津にあるスパイスカレーまるせ。

スパイスカレーまるせ (中津(大阪メトロ)/アジア・エスニック)
★★★☆☆3.67 ■お客様の声で生まれた夜のみ登場のカレープレート&インディアンBBQプレートが大人気 ■予算(夜):¥2,000~¥2,999

カレーの専門店だが、夜はバルのような形でスパイスの効いた肉料理を中心に、コース料理を振る舞ってくれる。もちろん、締めはカレーである。

酒を飲みながら談笑していると、いつの間にか向かいにはきゃぷちゅん氏(@cap_pac)が座っていた。私と隣に座っていた373氏(@m_alice)、そしてきゃぷちゅん氏は、何度か一緒にライドを行っている。ちなみに、きゃぷちゅん氏も夜に清滝峠を登るサイクリストである。

しばらく話していると、373氏から質問がある。

373「KeiOSさん、こんど夜清滝いつ行きます?」

KeiOS「じゃあ明日で」

373「おk」

きゃぷちゅん「私もおk」

KeiOS「おk。……おk?」

たった5行で夜清滝へ一緒に行くことが決まった。

なお、翌日は台風19号の影響で風が強く、走ることはできなかった。大阪はほとんど影響がなさそうだったのだが、流石に風速5~6mもあると自転車での走行は辛い。

いったん仕切り直し、翌週15日に変更する。当然だが、わざわざ行く日をきちんと決めて清滝峠を登るのは初めてのことである。

せっかくなので、なっち氏にもコンタクトを取ってみた。

KeiOS「明日の夜に清滝行きますけど、いかがですか?」

なっち「おk」

2行で終わった。言葉を使わない未確認生命体の意思疎通でもここまで早くはあるまい。

かくして、夜の清滝峠を登る、ただそれだけのために4人が集合した次第である――。

サイクリストと書いてhentaiと読むことを知った日だった。

なお、この日の様子はきゃぷちゅん氏のブログにも掲載されているので、ぜひ参照してほしい。

https://captain565.com/yoru-kiyotaki/

集合場所にて刺客を待つ

2019年10月15日

この日は火曜日。ただの平日である。仕事後にわざわざ清滝峠へ登りたいとは、やはり皆気が触れているに違いない。もちろん、自分のことは棚に上げている。

20時半に最寄りのコンビニに集合の予定だった。仕事を少し早めに終えて準備し、19時過ぎにロードバイクで出発する。

もやは慣れ親しんだ往路を進み、20時過ぎには集合場所へ到着。別に競争するわけでもないのに、少しカロリー補給でもしておこうかと、珍しく甘いものを口にする。

しばらく待っていると、なっち氏、きゃぷちゅん氏、そして373氏が集まってきた。

ふぃぼなっち氏のMAKINO MK01
きゃぷちゅん氏のRIDLEY NOAH
373氏のRockbikes envy

373氏に至っては、自宅から清滝峠まで片道約2時間もかかる。重ねて記しておくが、この日はただ清滝峠を登るだけである。一体、何が彼を突き動かしたのだろうか……(自分のことは棚に(ry

全員集まったところで、なっち氏を先頭に開始地点へ向かう。

ただ登るだけの様子を、なぜ詳細に書く必要があるのか

開始地点に到着するなり、「しばらく走っていない」「今日は脚が」などと高度な情報戦が展開される。

私も情報戦に乗っかってみようと、「速い人と一緒に走るのは辛いのでマイペースで行きたい」と言ってみた。何のことはない、ただの本音である。

情報戦もそこそこに、1本目が開始される。

最初に飛び出したのはなっち氏。彼は4人のなかで唯一、清滝峠10分切りを達成している。しばらくブランクがあったのは間違いないはずだが、それでも追いつけそうにない。

とりあえず、きゃぷちゅん氏の後ろを離れないようについて行く。文字にするのは簡単だが、実際は辛い。それもそのはず、彼の清滝峠のベストタイムは私より1分以上も速い。

マイペースで行きたいなどという本音が出たのに、なぜ無理して追いかけようするのだろう。自分の行動がよくわからない。

2km地点あたりにそびえる、夜中でも燦然と輝く白いお城の前を通り過ぎて、一度きゃぷちゅん氏をかわす。別に余裕があったわけではないのだが……。無駄に体力をすり減らしてしまい、つづら折れに入るところできゃぷちゅん氏に抜かれてしまう。

彼の背中をなんとか捉えながら走っていたが、最後まで追いつけなかった。タイム差は9秒。彼もブランクがあると聞いていたが、まだまだ差は埋められない。

その後すぐに、373氏が軽やかに到着する。何やら音がすると思ったら、彼のフレームに備え付けられたスマートスピーカーからラジオが流れていた(誤解の無いように記しておくと、音量は小さく、あくまで前後1台が聞き取れる程度)。

音楽やラジオ聴くとテンション上がるよね……私も今度やってみようか。

1本目が終わり、スタート地点まで戻ってくる。君たち本当に2本目行くの? 集団で?

流石にもう一度全力で走りたい人はだれもいない。もちろん私はマイペースでゆっくり走るつもりだったので、抜きたい人はいつでもどうぞと前置きし、先頭を買って出る。

すぐ後ろについたなっち氏とポジションやらタイムやらの話をしながら、のんびり登る。ふと、昔は話をしながら清滝峠を登るなど夢のまた夢だったことを思い出す。どうやら少しずつでも成長しているらしい。

曇り空に、月が妙な輝きを発している……。

2本目をサクッと終えて、再びスタート地点へ。正直、2本でもう満足していたので、空腹をタネにどこかで晩飯でも……などと話題を振ってみる。

なのに、全員3本目に行くという雰囲気である。
ええ……本当に行くの? もうスタート地点で待っててもいいかな……。

今度はなっち氏ときゃぷちゅん氏が飛び出していった。なんとなく1人置いてけぼりをくらうのが嫌だったので、373氏の後ろについていこうとする。

しかし、373氏のペースも先ほどよりずいぶん速い。覚悟を決めて登ることにした。

4人で夜の清滝峠を3本登るという、バカなことやってみたい中高生でもまずやらないであろう謎のイベントは、こうして幕を閉じた。

……何のことはない、本当にただ登っただけである。

昭和の香りを色濃く残すラーメン屋「華」

以前にもこの4人ではライドに行ったことがある。せっかく揃ったので、帰りに晩ご飯でも食べて帰ろうという話になった(というか、ようやくできた)。

時刻は既に22時過ぎ。24時間営業の定食屋などでも構わないが、3本もヒルクライムしたことで汗をかいており、がっつり塩分が欲しくなる。なら、ラーメン屋しかあるまい。

近くにどこか良いラーメン屋はあっただろうかと考えたところ、いつも清滝峠から帰る途中に気になっていたお店を思い出した。全員そこで良いとのことだったので、清滝峠に別れを告げ、一路ラーメン屋を目指す。

着いた先は、ラーメン「華」。

華 (西三荘/ラーメン)
★★★☆☆3.36

黄色い看板が目印の、なかなかに歴史を感じさせる店舗である。かすれたボードには「チェーン店募集」の文字が。しかし、その下に「小スペース・小資本でOK」とあるので、正確にはフランチャイズ店を募集しているのだろう。……今も募集しているかどうかはわからないが。

近くに自転車を停めて、のれんをくぐる。

先客は数名程度。厨房を取り囲むようにしてカウンターと座席が並んでおり、年季の入った大将と店員がラーメンを作る様子が見える

壁に掛けられたメニューには、醤油のほか、味噌、豚骨もある。さまざまなスープを出す店はラーメン屋として期待できないという意見もあるようだが、私的にはこうしたラーメン屋も嫌いではない。その日の気分によって味が変えられるし、たまにはひとつの味に特化したラーメンよりも、オールラウンドに提供されるラーメンが食べたいときもあるのだ。

ラーメン以外にも、餃子に焼売、唐揚げ、さらにはチャーシュー盛り合わせと、軽く飲めそうなメニューが揃っている。もちろん、自転車で来ているので酒はNGだ。

それぞれに好きなラーメンを注文する。私が頼んだのはチャーシューメンの醤油、大盛りだ。

自転車のネタを中心に談笑していると、程なくして着丼。

見た目は非常にオーソドックス。表面に浮かぶ5枚のチャーシューはおそらく店名を意識した並びなのだろう。スープの良い香りが食欲を刺激する。

いざ実食。清滝峠を登った後だということもあるのだろうが、美味い。

ラーメンの塩分がまさに身体へ染み渡っていく感じだ。麺は硬すぎず柔らかすぎず、スープはまさに一般的な醤油味。ラーメンを食べたいというときに、きちんとストライクゾーンへ投げてくるような、そんな味だ。

おそらく、美味い醤油ラーメンはもっと他にあるだろう。しかし、このくらいのベタな醤油ラーメンもたまには良いものである。何よりも、店の少し哀愁漂う雰囲気と、深夜の背徳感が、この妙なレベルの醤油ラーメンと非常にマッチしている。こう書くと微妙な味を想像するかもしれないので念のため繰り返しておくが、美味い。

ただ、チャーシューはもう少しだけ分厚くてもよかった気がする。しかし、普通のラーメンが650円であるのに対して、チャーシューメンは850円(大盛りはプラス100円)。値段を考えるとまあこんなものかもしれない。

ヒルクライム後の醤油ラーメン、確かな満足である。

結びに変えて

ラーメン屋を後にして、なっち氏とはその場で解散。同じく大阪方面へ向かっていた373氏ときゃぷちゅん氏とも、途中で解散となった。

帰宅して風呂を済ませ、Stravaの記録を確認する。ベストタイムにはまだ遠いが、ここ数日の記録としてはもっとも速い。誰かと走ると、自分でも思いがけない力が出るものだということを少し実感した。

しかし、夜に集団でヒルクライムしに行くというのは、やはりただのhentaiの集まりでしかないのである……。

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