※お知らせ
この記事は、2019年11月9~10日に実施した金沢ライドの2日目について記したものである。
前回(1日目)の記事はこちら。
どこでも寝られる人が羨ましい
2019年11月9日 土曜日
kabo氏(@kabotyo3)がDNFしたあと、ガスト敦賀店に残ったのは以下の3人である。
・Gateau氏(@Ga_EXRnm7)
・373氏(@m_alice)
・私(@kei_os_)
時刻は21時。出発予定時刻は0時過ぎなので、3時間ほど休んでいくつもりだった。
今のうちに少し寝ておこう。そう思ったが、身体は多少なりとも疲れているはずなのに、眠気がやって来てくれない。
どうにも、外で寝るということができないらしい。外で寝る→寝なければならないという図式にはまってしまい、妙な気負いが邪魔をしてしまうのだ。
思えば、電車の中などでもそうだ。不特定多数の目がある場では、なぜか寝られないことが多い。別に、誰かに見られるのを意識しているわけでもないのだが……。
ちなみに、つまらない授業や研修のほか、面白くない作品の前ではすぐに寝てしまう。こればかりは、眠気を催すような話をする相手が悪いのだと昔から思っている。
仕方が無いので、身体の力を抜いてじっと目を閉じることとする。
Gateau氏も373氏も起きているような、そうでもないような感じだ。みな、言葉は少ない。
23時頃になって、空腹を覚える。屋台ラーメンはそれなりの量だったように思うが、どうや足りなかったらしい。Gateau氏共々、追加注文をして出発に備える。
外は真っ暗だ。これから日本海沿いを走るにあたり、あまり寒くなければ良いのだが……。
そろそろ日付が変わろうという頃になり、出発する準備に入る。とりあえず、疲労は少し取れたように思う。
思えば、敦賀の時点でまだ150km。全行程のちょうど半分なのだ。
これから後半戦。オーバーナイトは初めてだが、全員で無事に走りきれますように……などと、誰かに祈るわけでもない。
走れるか走れないか、ただそれだけである。行こう、金沢へ。
映画の1シーンを思わせる日本海
2019年11月10日 日曜日
ガスト敦賀店を後にする。
敦賀の街は静まりかえっていた。ラーメン屋台のあった場所には、既に誰もいない。
街の様子の変化を感じながら、R8を直進……しようと思ったが、いきなり通行止めに阻まれる。3kmほど遠回りになるが、いったん海沿いをぐるっと周り、R8に合流する。
R8を進んでいくと、すぐに日本海が見えた。
……真っ暗だったので写真がほとんど撮れていない。というよりも、カメラの設定をきちんと行っていなかったせいか、写真がいずれも景色を捉えてくれなかった。
こんな感じである。
なので、ここからは神絵師にて綺羅星フォトグラファーである373氏の写真を大いに借りることとする。
月が……きれいですね……。
映画のワンシーンを思わせる景色に、思わず息を呑む。
夜の日本海ってもっと荒々しいイメージがあったのだが、こんなにも穏やかなのか。
月がとても明るい。そのせいか、あまり夜の道を走っているという感じがしない。
海の微かな動きが、月光に照らされてよく見えた。しかし、すぐに視線を道路に戻してしまう。
幻想的な景色なのに、どうにも海を直視できない。見たら最後、吸い込まれてそのまま落ちそうな気がしてしまうのだ。別に、真っ暗闇だというわけでもないというのに。
海の様子は時折確認するに留めて、R8を進む。そのまま日本海側のルートとして、R204、R305に入る。このあたりはしおかぜラインと呼ばれる道だ。
先頭は373氏。まったく疲れを見せない感じでぐいぐい引っ張ってくれる。その後ろに続くGateau氏と、私。
脚の痛みは少し引いていたが。それでも万全にはほど遠い。こんな誰もいない夜の道で置いていかれるのは御免被りたいので、とにかく着いていく。
しかし、しおかぜラインに入ってひとつ困ったことがあった。まさかの向かい風なのである。
わざわざこのタイミングで吹くこともないだろうに……道はそれなりに気持ちよいのに、素直に進ませてくれない。そこに、脚や臀部の痛みが重くのしかかる。
夜のせいで視界は限られ、身体は重く、しかしペースは緩められない。正直、このR305に入った直後が今回一番きつかったように思える。
時折、漁村のような小さな街に入るのだが、この時間では誰も歩いていない。もちろん、建物にも明かりはなく、小さな外灯だけが道を照らしていた。その景色がどことなく楽しいと感じる。
ごく稀に何かの気配がすると思ったら、海岸沿いに車を停めて釣りの準備をしている人や、小さな漁船に乗り込もうとしている人だった。月明かりがあるとはいえ、この暗い海へ向かって行くらしい。
事前に調べていったところ、R305には休憩場所がほとんど無い。ほぼ唯一の休憩場所として、ちょうど敦賀から40km進んだところにローソン越前海岸店がある。そこで休憩することを決めていた。
こんなにもコンビニはまだかと思ったのは久しぶりだ。青い看板が見えた途端、一気に脱力してしまう。
補給をしながら、身体の様子を確かめる。痛みはあるが、少し慣れてきたような気もする。たぶん、自分のペースで走ればそんなにきつく感じることもないだろう。
もとより、17km/hで走って十分に間に合うように組んだプランである。ペースを落としても良いことを3人で確認し、私がしばらく先頭を走ることにした。
暗闇を走るKeiOS
時刻は3時少し前。
当然といえば当然なのだが、平坦道を17km/hで走ったらおそらく遅すぎて逆にストレスがたまる。せめて25km/hは維持したいところだが……。
以前に使用していたGarmin820Jが諸事情で使用できなくなってから、サイコンは使用していない。そのため、どのくらいのスピードが出ているのかがよくわからない。
後ろに確認すると、いま私が走っているペースで申し分ないとの返事がある。とりあえずは大丈夫のようだ……。
それにしても、R305の日本海沿いは小さなトンネルがやたらと多い。
私の知らないところで、Gateau氏が妙な動きをしていた。
君、テンションMAXやな……(おそらくストレッチしていただけだと思われる)。
海道沿いの町を抜ける。外灯が妙に明るい。
対して、月は既にその姿を隠し、海は真っ暗闇に包まれていた。視界の一部が暗闇というのは、単純に怖い。さざ波の音が、そっと恐怖を逆撫でする。
工事のためか、突貫で海に飛び出た道路を走る。
赤い誘導灯が夜の闇を強調する。遠くから見ると綺麗だったのに、近くで見ると闇へと誘っているようで不気味だ。
休憩ポイントがまったく無いせいか、R305沿いは公衆トイレが多い。ちょうど、軍艦岩のあるところにもトイレがあったので、そこで一時停車する。
せっかくなので記念撮影。
本来ならバックに軍艦岩があるのだが、あまりの暗さに何も見えない。そう思って柵から下を見たら、軍艦岩に続く道が見えた。この暗さのなか、そこを歩く度胸はない……。
わかってはいたことだが、この暗闇では海沿いの道もさすがに辛い。あと10kmほど進めば海沿いから離れるので、そこまで無心でペダルを回す。
やがて、日本海の姿が見えなくなり、微かに内陸部へと移る。アップダウンの緩やかな道だったが、およそ数kmの間に鹿、猪(だったと思う)、そしてアライグマが見えた。
アライグマに関しては少し因縁があり、次に見つけたら同士スターリンに誓ってシベリア送りにしてやろうと思ったが、惜しくも逃がしてしまった。
前回の休憩ポイントから約32km、ファミリーマート川尻店に到着。
この時点で4時半くらい。予定より少し速いペースである。
イートインで、しばし休憩しながら今後の予定を見直す。
このコンビニを出ると、次はいよいよおにぎりの専門店、銀のめしが待っている。
銀のめしは午前6時半開店、午前8時終了という、なんとも難易度の高いお店である。通し営業はしておらず、そのあとは午前10時に再び開店する。
敦賀からここまで4時間半。さすがに暗闇をひたすら走るのにも少し疲れていた。それなら、ここで夜明けまで休憩したほうが良いのではないか。
ファミリーマート川尻店は5時15分に出発する予定だった。一方、銀のめしまでの距離は26km。1時間と少しもあれば十分に間に合うはずだ。
そこまで考えて、373氏、Gateau氏に提案する。このコンビニで6時まで休憩し、夜明けの兆候を待ってから出発しよう。ルートどおりに進めば、遅くとも7時半には銀のめしにたどり着けるはずだ。
ふたりの了承をもらい、イートインで補給食をとる。
気が抜けたのか、ここにきてようやく眠気がやって来る。ただ、やはり深くは眠れない。1時間ほどうつらうつらした後、冷えた身体にカップ味噌汁を流し込む。温かさと塩分がしみわたる。
向かい風さえなければ、ここまで消耗することもなかっただろうに。皆それなりに疲れているようだった。かくいう私もかなり疲労していた。
しかし、ここまで来てDNFするのだけは御免である。金沢まで残り83km。銀のめしまで行けば、残りは50kmちょっとだ。ゴールが見えてきた感じがする。
やがて、空に微かな光が差してゆくのを確認して、出発した。
極めて近く、限りなく遠い銀のめし
イートインにいたときから感じていたが、寒い。走っていた時には気づかなかったらしく、気温はかなり下がっていた。
とにかく身体を動かして暖まらなければと思い、すこしペースを上げてR305と併走しているR256を進む。このあたりは工業地帯らしく、道路に並んで多くの工場が続いていた。
まっすぐに道を進み、やがて九頭竜川に出る。
うっすらと、夜が明けてゆく。
ガストで休憩を挟んだとはいえ、オーバーナイトで走ったのはこれが初めてだ。
長い夜だった。日の光がこんなにも有り難いものだとは。
これまで、自走による到達地点の最北端は福井駅だった。九頭竜川とR305、R156がちょうど交差するこのあたりは、福井駅からさらに北へ約20km。いつの間にか、最高到達点を更新したことに気がつく。
どうでもいいことだが、九頭竜川って聞くと飛天御剣流の九頭龍閃を思い出すのは私だけだろうか。
このまま銀のめし、そして金沢へウイニングランである……そう思っていたのだが、思わぬ誤算があった。
ここにきて、猛烈な眠気が襲ってきた。ガストでも、途中のコンビニでも、ほとんど寝ることができなかった。そのツケが、ここにきて一気に押し寄せてくる。
普段なら絶対に買わないブラックの缶コーヒーを流し込み、先頭を走る。しかし、373氏から心配されるくらいに、ふらついていた。
先週の串本ライドのときも、一時眠気に悩まされる場面があった。そのときは同行者からいただいた無水カフェインでしのいだのだが……なぜそのあとすぐに購入しなかったのかと、己を叱責する。
数キロ走っては少し休憩を取り、意識をしっかり保とうともがく。あまり良くない兆候だ。
そのとき、373氏から確認が入る。
373氏「なんか、進んでる方向が違う……」
3人で立ち止まり、Googlemapを確認する。まっすぐに進んでいたつもりが、なぜか先ほど走ってきたR305と併走する道を南に向かって逆走していたらしい。
確かに、走りながら太陽が左側に見えているというのは、おかしい。
そんなことにも気づかずに、私は日の出の様子を撮りながら走っていたわけだ。
一応言い訳をしておくと、R305とR156の交差点は一見するとどちらが北側なのかわかりにくい作りになっており、そのまままっすぐに進むとR156へ入ってしまう。今回はそのままR305を進まなくてはならない。
ロスした距離は5kmほど。ふと時計を見ると、時刻は6時40分。ここから銀のめしまで、およそ23km程度。
銀のめしは朝営業と昼以降の営業に分かれており、朝営業は6時半から8時までだ。その後は11時まで待たなくてはならない。
あれ、もしかしてこれ、ちょっと急がないと間に合わないのではないか……? 食べる時間もそうだが、仮にラストオーダーの時間が設定されていたら無理ゲーである。
急遽、銀のめしを目指して高強度ライドの開幕である。
もはや眠いなどと言っていられない状況だ。来た道を急いで戻る。R305に辿り着いたころには、眠気は少しマシになっていた。
途中、えちぜん鉄道三国芦原線が横切っていくのが見えた。
昔は京都のケーブルカーなどを取り扱う京福電気鉄道が運営していたらしい。その後、諸事情もあって京福電気鉄道は撤退、第三セクター方式としてえちぜん鉄道が事業を引き継いでいる。
この車両に乗れば福井か。ほぼ一晩中走っているのに、福井は意外と大きいのだな……。そんなことを考えながら、R305をひたすら進む。
(余談だが、福井県は南北長が約105km、東西長が約124km、面積は4189平方キロメートルで全国34位。そこまで大きいというわけではない)
途中、まさかの道に迷うアクシデントもありながら、再びR305に合流。北潟湖に沿って全力でペダルを回すころには、もう眠気は消し飛んでいた。
大聖寺側を渡ってR296に入り、ついに銀のめしに到着。
サイクルラックが置いてある。有り難い。
到着時刻は7じ50分。店の前には「営業中」の表示がある。どうやらラストオーダーがあるわけではないらしい。
そう思いながら3人で入り口をくぐると、中には人の気配がない。よく見ると、レジスターにも布が駆けられている。
まさか、早仕舞いしてしまったのだろうか……。
嫌な予感がするなか、Gateau氏が店の電話番号へかけてみると、店舗のそばにある家からお店の人が出てきてくれた。今からでも作ってくれるうえに、このままお店のなかで食べても良いらしい。
必死にペダルを回した甲斐があった。早速、めいめい食べたいものをオーダーしていく。作り置きはせず、注文してからおにぎりを握ってくれるという、なんとも贅沢な仕様である。
私が注文したのは、鮭、ねぎ味噌(右)、そしてまちかね(左)である。
まちかねとは豆腐の味噌漬けのことだ。お店の説明によると、自家製味噌を仕込む際に、樽の底に敷いた麹とおからを混ぜたものとあるが、いまいちビジュアルが浮かんでこない。
いずれにしても、味噌が完成するまでに1年、完成した味噌を食べきるまでに1年、合計2年待たないと、つけ込んだ堅豆腐が取り出せない。つまり、「ようやくお待ちかね」という意味から「まちかね」と呼ぶらしい。
いざ、実食。
これは、素直に美味しい。おにぎりなんて普段コンビニのものくらいしか食べることがないが、当然ながらまったくの別物だ。こっさと呼ばれる、枯れ松葉を使ったかまどで炊いた米は芯までふっくらとしており、一粒一粒に味がある。
具材もまた、おにぎりとよくマッチしている。米がこれだけ美味しいのだから、定番の鮭の味も映えるに決まっている。まちかねはその熟成度合いからもっと濃厚な味を想像していたが、意外とマイルドな味わいであり、ほどよい塩分が体にしみる。
そして、個人的にはねぎ味噌が一番美味しかった。想像とは裏腹に、こちらのほうがまちかねよりも味噌の香りが強く、それでいてしつこくないという絶妙なバランスを保っている。
ねぎ味噌とまちかね、どちらも味噌のおにぎりだが、ふたつの味はまったく異なっていた。一口ごとに食べ比べてみると、その違いがよくわかる。これは両方頼んで正解だった。
サイドメニューとして注文した味噌汁も、体に染み渡る。
体から塩分が抜けていたとはいえ、平常時に食べてもきっと美味しかったに違いない。
合計3個のおにぎりを一気に完食。しかし、まだまだ食べられそうな気がした。これだけメニューが並ぶと、当然ほかのおにぎりも試してみたくなってしまう。個人的にはベーコンとか変わり種っぽいものがすごく気になる。
いずれまた来ることがあるだろうか。その頃までにお店は残っているだろうか。そんなことを考えながら、お店をあとにする。
銀のめし、確かな満足である。
金沢駅にて
銀のめしを出て、時刻は8時30分ごろ。金沢までは約50kmである。
天気は快晴。眠気も完全に取れている。
体はそれなりに疲労しているが、まだ十分に動ける。いよいよ、金沢ライド達成の予感は確信に変わり始めていた。
途中、予定にないコンビニ休憩で水を補給。
地元の人らしき年輩の男性からどこから来たのかと聞かれ、大阪と答える。えらく驚かれたのちに、がんばってくれとエールを送られた。
いわゆるサイクリストあるあるだ。ゴールに近いこのタイミングで声をかけられたのは嬉しい。いろんな事柄が後押しをしてくれているように感じる。
R19からR20に入り、北陸自動車道に併走する形で日本海沿いを北上する。R305沿いと同じく、工業団地が建ち並ぶ。
このあたりで、地元のサイクリストとすれ違うようになった。広い道でそれほど車も多くないことから、おそらくよく使われるルートなのかもしれない。
対向車線を走るサイクリストの多くが、挨拶を返してくれる。我々が大阪、京都から来たサイクリストであることなど相手は知る由もないだろうが、なんとなく地元の人に受け入れてもらえたような気分になる。
途中、R20を一時離れながらも、北陸自動車道との併走は維持。やがて、最後の休憩ポイントであるセブンイレブン能美大浜町店が見えてきた。
ここで最後の補給を行う。
金沢駅まではあと30km程度。固形物を食べてもよかったが、金沢に到着したあとは寿司を食べる予定だ。そんなことを考えながら、このライドではじめてのエナジードリンクに手を出す。
それぞれ言葉は少ないが、皆ここまで順調な感じだった。私にいたっては既に脳内でエンドロールに合わせてBGMが鳴り響いている。
気の緩みは事故のもと。眠気はおさまっているが、またいつぶり返すかもわからない。最後まで気を抜かずに走ろうと思った。
再び出発。ここまでたくさん引いてくれた373氏に変わり、Gateau氏と私で5kmごとに交代しながら先頭を引っ張る。
既にいつものスピードは出ていなかったが、それでも一人で引くよりも安定したペースで走ることができた。
手取川を渡る。川の向こうに海が広がる景色は、あまり見たことがない気がする。
ここからR25をさらに北上し、R195に入る。
だだっ広い農業地を抜けてしばらく進むと、市街地に入る。
ようやく、この旅も終わりだ。車通りが多くなるのも、今なら喜ばしい。
11時42分。ついに、金沢駅に到着した。
大きな駅だ。西口は2003年に石川県庁が移転してきたことに伴い、急速に商業地区として発展しているらしい。
しかし、金沢駅といえばやはり能楽の鼓をイメージした「鼓門」だろう。3人でそそくさと兼六園口に回る。
この日は観光客でごった返していたが、合間を縫って記念撮影。
写真や映像でしか見たことがない場所に、自転車でやって来た。久しぶりにロングライドの醍醐味を味わった気がする。
Stravaの記録を見ると、316km。途中、道に迷った区間を差し引くと、やはりちょうど300kmくらいである。
淀川の毛馬閘門からここまで、きちんと道は続いていた。そんな当たり前のことを確認して、金沢ライドは幕を閉じた。
まいもん寿司、回るほうをとるか、回らないほうをとるか
疲れてはいたが、このままぼーっとしていても時間が過ぎるだけである。輪行状態にした後に、JRの荷物預かり所まで向かう。
しかし、観光客があまりに多いせいか、預かり所はまさかの満杯。やむなく、輪行袋を抱えたまま移動することとなった。
金沢駅内にあるクロネコヤマトの営業所へ送っていた荷物を無事に受け取り、東口にあるAPAホテルの風呂に入る。あいにく風呂が壊れていたのでシャワーだけだったが、それでも十分に疲労や汚れを落とすことができた。
さっぱりした状態で、寿司屋へ向かう。本来は輪行袋を預けて、駅からタクシーで数分行ったところにある回転寿司屋「まいもん寿司」へ行くつもりだった。しかし、この状態では予定を変更せざるを得ない。
まいもん寿司は金沢駅の食堂街にもある。こちらは回らない寿司屋だ。お店の人に相談し、入り口近くに輪行袋を置くことの許可をもらったので、ここで食べることにした。
金沢まいもん寿司 金沢駅店
373氏と私は北陸まんきつランチ、Gateau氏は地魚握りとのど黒手巻きランチを注文。ここまで来てビールを注文しないという選択肢はない。私は迷わず生中を頼んだ。
出てきたのは、まさかのマスターズドリーム。
サントリーが誇る、プレミアムモルツよりもさらに1ランク高い極上のビールだ。昔は店舗とコンビニでしか扱っていなかったような気がするが、最近は少し大きめのスーパーマーケットでも扱っているのを見かける。
かくいう私はサントリー信者である。普段は金麦、何か良いことがあるとプレミアムモルツをあける。私にとってマスターズドリームは年に1度か2度、年の終わりなどにしか購入しない特別なビールという位置づけだ。
そのマスターズドリームで、金沢ライドの達成を祝うことができる。こんなにも嬉しいことはない。
無事に到着したことを記念して、乾杯。
ほどなくして、北陸まんきつランチが運ばれてきた。
手前に並んだ3つの握りは、左からのどぐろ、甘えび、そして白えびである。
もはや、一刻の我慢もできない。写真もそこそこに、のどぐろからいただく。
美味い。さすがは白身のトロと言われるだけのことはある。口のなかで白身魚の上品さと脂の乗った食感が跳ねまわるのを感じる。
えびにはあまり思い入れはないのだが、それでも甘えび、白えびもレベルが高い。新鮮なエビの味が酢飯に乗り、舌を楽しませてくれる。
やはり、海鮮のレベルが非常に高い。量が少ないのが少しネックだが、その点を質が補ってくれている。
また、セットで出てきた味噌汁が妙に美味しい。
具材として入った海苔の食感が心地よく、それでいて味もしっかりと出ている。汁物で酒を飲むのはあまりしないが、これは酒のあてとしても十分すぎるレベルだ。
Gateau氏のほうは地魚握りがメインだ。
しかも、のどぐろの手巻きとはなんとも贅沢な一品である(知っている人も多いと思うが、のどぐろは非常に高い)。
これだけ高いレベルだと、回転寿司のほうはいったいどのようなものが出てくるのだろうか。正直、食べ過ぎてお会計がやばいことになりそうな気がする。
いつか来ることがあれば、そのときは銀のめしと併せて回転寿司のほうにも行ってみたい。そう誓って、お店を後にした。
この日はやはり人が多かったらしく、北陸新幹線、およびしらさぎはいずれも一部の時間帯で満席状態。
我々が乗るサンダーバードも、直近の車両では指定席が購入できなかった。やむなく自由席を購入し、バラバラに搭乗する。
Gateua氏とは京都駅で、373氏とは大阪駅でお別れ。
おつかれさまでした。次は回る寿司を求めてリベンジしよう。
結びにかえて
最初に述べたように、金沢はずっと行きたいと思っていた場所のひとつだ。そこに、自転車で辿り着くことができた。久しぶりに大きな達成感を得られたような気がする。
これまで200km程度のライドは何度もこなしてきたが、300km以上は初めてだった。途中に数時間程度の休憩を挟んだとはいえ、まだまだ走れそうだということを実感できたライドでもある。
また、屋台ラーメンにおにぎりと、グルメを満喫できたのも大きい。寿司も量の問題を除けば十分に及第点だ。次こそ、回転寿司を求めて走りたいものだ。
大阪から300kmといえば、西は広島、東は静岡あたりだろう。広島といえばお好み焼き、静岡といえばハンバーグで有名なさわやかがある。金沢へもう一度行く前に、どちらも制覇したいものだ。