琵琶湖にて新車を大いに盛り上げるサイクリストの団・無限紅茶編

自転車

前書き

とある平日の夕刻。

仕事から帰ってきて夕食の準備をしていると、ふだん連絡を取り合っているグループメッセに坂本氏から連絡が入った。

週末の日曜日、きゃぷちゅん氏の新車撮影ライドをしたいとのこと。

先日、新たなロードバイクを購入したきゃぷ氏。最近その知名度を上げてきているOPEN CYCLEのロードバイクフレーム、MIN.Dのカスタムペイント仕様である。

OPEN CYCLEはBMCの前CEO Andy Kessler、そしてCerveloの共同創設者Gerard Vroomenが2012年に設立したスイスの自転車メーカーだ。

OPEN Cycle - The simplicity of nice bikes, nice rides
At OPEN Cycle we design bikes for ourselves, sell them to like-minded people, take care of our customers and that’s it.....

MIN.DはそのOPEN CYCLEが手がけるロードバイクフレームである。

なお、MIN.Dとは単語mindを意味するはずだが、ここではminimal designの略称だという。おそらくダブルミーニングだろうけれど。

確かに、無駄を一切省いたデザインのフレームは車体そのものの美しさと機能美が一体化しているかのようだ。まさに、MIN.Dの名にふさわしいといえる。

乗り味はややエンデュランス寄りらしく、細身のフレームは快適さを追求した表れだそうだ。フレームの造形が、そのまま乗り心地に直結しているのだろう。

32Cまで装着可能なタイヤクリアランスは昨今のグラベルロードの流行を思わせる。しかし、あくまでロードバイクフレームとして設計されたMIN.Dのコンセプトは、あらゆる場面を走破するオールロードの思想に近いと感じる。

そんな機能美を優先したフレームに対して、カートゥーン調のペイントという、ある意味で過剰な装飾を施すことをきゃぷちゅん氏は選んだ。そのギャップがなんとも面白い。

ペイントを手がけたのは、アトリエキノピオ。

TOP

長野県上伊那郡に工房を構えるロードバイクビルダーであり、カスタムペイントも手がけている。

ステッカーのようなデザインはすべてペイントだ。これはきゃぷ氏のリクエストによるもので、アメリカの有名なカートゥーン作品『トムとジェリー』を模したものだという。

結果、OPEN CYCLEのロゴまでカートゥーン調となっている。そのこだわりにただただ賞賛である。

そんなきゃぷ氏のニューマシンを全力で愛でようと坂本氏が企画したのが、今回のライドだ。

参加者は次のとおり。

おもちっこ(@noyuyuya
きゃぷちゅん(@cap_pac
坂本(@skmt_fact
ふぃぼなっち(@nacci_contact
KeiOS(@kei_os_)

かくして、新車を大いに盛り上げるサイクリストの団が結集したのであった。

集合場所なんてただの飾りですよ

2022年10月23日 日曜日

午前6時に起床。

いつものように準備を済ませて、7時30に出発。

安全第一を意識しながら、のんびりとペダルを踏み込む。

毛馬の閘門あたりに到着する。しばらくして坂本氏、おもち氏もやってきた。

きゃぷ氏となっち氏は枚方市にある関西医科大学の裏手で落ち合うことになっている。

とりあえずスタート。淀川サイクリングロードを適度なスピードで流す。

日曜日であるせいか、河川敷には野球、テニス、サッカーに興じる人たちが多く見える。

一昔前の自分なら「せっかくの休日に外に出るなんてしんじられませんな」などと某ハピネスチャージプ○キュアの敵幹部みたいなことを呟いていたところだが。自転車に乗り始めてからは「まあたまには外に出るのもよかろう」などというおおらかな気持ちになっている。

メタルクワガタに遭遇する度に、律儀に車体から降りて慎重に車体を通してゆく。

以前に慢心から立ちゴケしてフレームを傷つけてしまったことがあるので、慎重に車体を通してゆく。油断大敵、横着はしない。

守口市のあたりを過ぎて、寝屋川市に入ったあたりで聞き慣れぬラチェット音が後方から響く。

振り向くと、そこにはきゃぷ氏がいた。

なんか集合時間に間に合わなさそうなので全力で走ったら追いついた、ということだが。普段赤っぽい人なので一瞬誰か分からなかった。

きゃぷ氏を仲間に加えて、淀川サイクリングロードをひた走る。

撮影:おもち氏

次の集合時間を数分ほど過ぎて(きゃぷ氏の見立ては正しかったわけだ)、関西医科大学の裏手に到着。

だが、なっち氏はいない。どうやら走行中にコンタクトレンズが外れたらしく、取りに戻っているとのこと。彼の脚力ならそのうちどこかで追いつかれるだろう。とりあえず、先に進むことにした。

ハンドルの前に『トムとジェリー』の猫キャラ、トムを従えるきゃぷ氏。ここに新たなぬいぐるみサイクリストの爆誕である。

なお、おもち氏、坂本氏、Shin氏の3人とも、ぬいぐるみを従えてのサイクリングを行う者達である。この3人のことを「ぬいトリオ」と呼ぶらしい。ここにきゃぷ氏が加わると「ぬいカルテット」になるわけだが。

少し休憩を入れて出発。再びサイクリングロードを進む。

のんびりまったりなペースで走っていると、きゃぷ氏からしきりに「こういうライドを僕は欲していたんですよ」と言われる。普段どれだけ高強度で走っているんだ……。

しばらくして、さくらであい館が見えた。この日はなにやらイベントが開催されていたらしく、いくつかのぼりが立てられている。

特に立ち寄るわけでもなく通り過ぎて、宇治川沿いのr81に入る。

突き当たりを右折し、さらに左折。

久御山付近の長閑な……というよりは何もない風景が視界に飛び込む。自転車でもなければなかなか来ることのない場所だ。

大阪方面から自転車で宇治へアクセスする場合、淀川サイクリングロードを越えてr81を経由するのが一番シンプルだろう。距離も短い。昔、クロスバイクで発見したルートだ。

突き当たりの小倉街西山交差点を左折して、さらに右折。r249を少し西進したところにあるコンビニで少し休憩を入れることにした。

すると、今度は聞き覚えのあるラチェット音が響き渡る。音のした方を見れば、なっち氏がいた。

前日の筋トレでそれなりに疲労していると聞いていたので、追いつかれるのはもう少し先だと思っていたのだが……流石、はやい(つよい)。

休憩中、なっち氏の温泉むすめ布教活動がはじまる。犬鳴山温泉の温泉むすめ、犬鳴山命ちゃんの缶バッジだ。

坂本氏に手渡たし。ケモミミと紫髪がどストレートではまったらしく、発狂していた。

予め設定しておいた集合場所は機能しなかったが、とりあえず全員揃ったわけだ。ここからはドラクエ4のように全員集合によりフィールドBGMが切り替わった状態で、先へ進む。

「今日はゆるポタですよね!?(フラグ)」

そうだよゆるポタだよ(ニタァ)。

宇治の市街地を通り過ぎて、宇治川沿いを走るr3へ。

本日唯一の登り、天ヶ瀬ダムに通じる道である。とはいえ100mもアップしない道のりを果たして登りと呼ぶべきか否か。

先頭を走るおもち氏がペースを上げる。なっち氏ときゃぷ氏は私の後ろにくっついていた。

きゃぷ氏に関しては愛車のスペックも試しておきたいだろう。口の端をつり上げながら、右手で先に行けと促す。

するとなっち氏が躍り出た。それにつられてきゃぷ氏が飛び出す。

撮影:なっち氏

おもち氏、きゃぷ氏、なっち氏の3人でアタックが開始された。ちなみに私はアタックしない。坂本氏とともにr3をのんびり進む。

宇治~琵琶湖間のr3は川沿いを走るルートで、往路・復路ともに標高差はほとんど無く、走りやすい。まさに快走路である。のんびりとはいえ、坂本氏も私もそれなりにスピードが乗り始める。

しばらくしてなっち氏ときゃぷ氏が戻ってきた。きゃぷ氏は「おかしい、なんでこんな強度になってるの……」と虚無状態である。

「おかわりもいいぞ!」私がそう言うと、再びなっち氏が飛び出した。そこに条件反射でアクセルをかけるきゃぷ氏。皆、ノリが良い。

滋賀県に入り少し過ぎたところで、きゃぷ氏がペースを落として戻ってきた。

「今日こんな高強度のライドじゃないでしょ……」とのたまうきゃぷ氏。しかし、あえて問おう。一体いつから――――ゆるポタだと錯覚していた?

まあ、新車のスペックが測れて良かったのではなかろうか。

瀬田川沿いを走りながらR422に合流する。

道中、瀬田川洗堰が見えた。

豪雨時などに琵琶湖から瀬田川へと流れる水を調整する、堰である。その特徴的な外観がいつも気になっているけれども、近くまで見に行ったことは一度も無い。

ちなみのこの可動堰は1905年に完成したものだ。歴史的建造物のような姿をしているが(2002年に土木学会選奨土木遺産に選出)、今も現役である。2013年の台風18号による大雨の際には、川の氾濫を防ぐため41年ぶりに全閉操作が行われたという。

よくよく地図を見ると、瀬田川洗堰を渡って川沿いに北上すれば、そのままビワイチのルートに合流できるようだ(ビワイチするとは言っていない)。

近くには紫式部に縁の深い石山寺もある。いずれこの辺りもゆっくり散策してみたいと思う。

甘いものは苦手なんだよ本当に(茶丈藤村)

琵琶湖に差し掛かる直前に、甘味処で休憩を入れることとした。

サイクリスト御用達の茶舗、 茶丈藤村である。

茶丈藤村 (石山寺/甘味処)
★★★☆☆3.58 ■石山寺門前の和菓子と甘味とおひるごはんのお店 ■予算(昼):¥1,000~¥1,999

店の前にはサイクルラックが設置。

自転車を停めるや否や、なぜかぬいぐるみサイクリスト達による撮影会が開始。初日からきゃぷ氏は同士として認められているようだ。

撮影:おもち氏

一通り撮影が終わったらしく、店内へ。

メニューを眺めながらしばし悩む。甘いものは苦手なのだが、和菓子系は別だ。

ここまで走ってきたせいか、少し冷たいものがほしい。白玉氷ぜんざいとの二択で迷った結果、抹茶くず流しを注文する。

暫くして、出てきたのはこちら。

抹茶色をした涼しげなビジュアルの餡。その上にバニラアイスと白玉がのせられている。

さっそく一口。

美味い。抹茶の餡は甘すぎず、かといって苦みが際立っているわけでも無く、ちょうど良い案配だ。そこにバニラアイスの甘みが程よいエッセンスとなり、たいへんにバランスのとれたお味である。

つけあわせの白玉も良い。抹茶餡につけて食べると、白玉の食感と抹茶の風味が口に広がる。どこまでも和菓子の旨味を伝えてくる、そんな味だ。

ゆっくり食べるつもりが、一気にパクパクしてしまった。流石は有名店の一品、侮り難し。

そう思っていたら、お店の方がさらに一品運んできてくれた。黒糖とカシューナッツを固めて作ったものらしい。

茶丈藤村ではサイクリスト限定で、こうした一品をサービスしてくれる。そのことは知っていたが忘れかけていた。結果として思わぬサプライズとなる。

こちらも美味しい。黒糖の控えめな甘みがカシューナッツの食感とベストマッチだ。無料でいただくのが申し訳なく感じるくらいに。

茶丈藤村、琵琶湖へ来るならぜひ訪れたいと思わせるまんぞくであった。

お茶と和菓子を堪能しながら、我々の話題は自然ときゃぷ氏の新車へ移る。

撮影:坂本氏

OPEN CYCLEのMIN.D。深い青の色合いが美しいバイクだ。トップチューブやチェーンステーの裏側などに施されたカラーグラデーションも目を引く。

『トム&ジェリー』のようなカートゥーン調のデザインにしてほしいという要望は、当然ながらきゃぷ氏によるものである。面白いチョイスをする。

新たな相棒について楽しげに語るきゃぷ氏。『トム&ジェリー』には並々ならぬ思い入れがあるらしく、カスタムペイントでも妥協のないオーダーを出していたようだ。

たとえば、このダウンチューブにおける「OPEN」のロゴから飛び出した目。黒目の周囲に緑が入っている。この目は『トム&ジェリー』の主人公のひとり、トムを意識したものだそうだ。

撮影:坂本氏

当初、この黒目の周囲には白色が入っていたらしい。しかし、原作のトムの目はこの部分が緑だということで、きちんと設計しなおしてもらったとのこと。

ロゴも黒の縁線をいれるかどうかで検討をしていたらしく、細かな部分にまでこだわりが見える。

まさに、トムを模した車体と呼べよう。しかし、それならば憎き相方であるジェリーはどこにいってしまったのだろうか。

今回きゃぷ氏が新調したMAAPのジャージは、ジェリーと同じく褐色系の色合い。そう。実は、相方のジェリーはきゃぷ氏自身なのである。

ひとつのフレームにトムとジェリー、2つのコンセプトを入れるのは難しい。ならば、もう片方は乗り手自身で担えば良いという発想である。お前がジェリーになるんだよ!

結果として、きゃぷ氏が知らない間におしゃれサイクリストの仲間入りをしているように見えてしまう。赤い人だったのに……。

ビワイチするくらいなら清滝峠に登る

茶丈藤村を出て、R422を北上。滋賀県民のマザーレイク、琵琶湖が見えてきたところで瀬田唐橋を渡る。

そうしてr559に合流。湖を左手に進む。ここからはビワイチ恒例のコースである。

ふと電光掲示板を見ると、ビワイチ週間の表示が。

秋深まるこの季節、滋賀でいっぱいお買い物してね!(ついでにビワイチで気持ちよく汗を流してね!)というプロパガンダを感じる。建前と本音が入れ替わっている気がするが、気のせいだろう。

ビワイチはさきほど渡った瀬田唐橋を含めるルート、通称「フルビワイチ」で全長約200kmである。琵琶湖大橋から北側の北湖を一周するのであれば約160km。湖北のアップダウンをのぞけば基本的に平地ばかりだ。

ただ、個人的にはハードな道のりだと感じる。基本的には琵琶湖が見えるルートだが、裏を返せばあまり代わり映えのしない景色だということだ。

加えて湖の東側は水辺から離れてゆき、単なる幹線道路と化す。田舎の国道によく見られる、大きく看板を掲げた全国チェーン店が並ぶ光景。しかも交通量が多く辟易とする。

そのような道を延々と走り続けられる意欲がなければ、ビワイチを完走するのは難しい気がする。単純に走るだけならできると思うが、おそらくモチベーションを維持できない。なので、私はしたいと思わないのである。

ビワイチするくらいなら清滝峠を62回登る方がまだマシである(清滝峠の距離が3.27kmなので、62回登ればフルビワイチと同じ。獲得標高13,454m)。いや、それは単なるご褒美かもしれない。

それでも、まあ。これだけ大きな湖のそばを走られるというのは、それなりに気持ち良い。

ビワイチのルート上には、自転車歩行者専用道路が整備されている。車道にも自転車の走行位置を示す青線が引かれている。

どちらを走っても良いが、自転車歩行者専用道路は徐行の義務こそ無いものの、歩行者に配慮して走る必要がある。一方、車道部分の青線内は一般的な車道を走るのと大差ない。スピードを重視するなら車道だが、いずれにしても安全第一である。

そんな琵琶湖西側の道を走っていると、大きな橋が見えてきた。

琵琶湖大橋だ。ここも自転車歩行者専用道路が整備されていおり、自転車でも普通に走ることができる。

その近くには例のショッピングモール、ピエリ守山がある。

一時はリーマンショックのあおりを受けてモール内の店舗がほとんど閉店してしまい、「明るい廃墟」としてネット上やニュースで話題になった。

リニューアルオープンしてからのテナント数は100を越え、イベント開催時には数千人単位の人を呼び込めるなど、以前とは違い盛況のようだ。モール内にはスーパー銭湯もあり、ビワイチの疲れをここで癒やす人も多いのかもしれない。

ピエリ守山を過ぎて約1kmの場所に、今日の目的地があった。

スーパー新車撮影タイム!

到着。「BIWAKO」のモニュメントである。

最近こんな感じの、地名をアルファベットで記したモニュメントがそこかしこで見られる。どこかが画一的に企画しているのだろうか。

カラートーンを意識しながらモニュメントの前に車体を並べる。当然、真ん中は今回の主役、きゃぷ氏のOPNE CYCLEだ。

……なんかこう、いかにもサイクリスト初心者が撮影しそうな感じの写真。

具体的に言うなら、

「今日は初の琵琶湖サイクル! 大阪から80kmかけてやってきた♪距離えぐいって! サイクリストの聖地で愛車と撮影とかプチ感動☆でもさすがに脚めちゃ×2イタくてぴえん(>_<)ここまで付き合ってくれた奴らにマジ感謝♡いつかビワイチにも挑戦するぞ~」

みたいな感じの幻聴が聞こえてくる1枚である。自転車パリピか。

そしてここから、きゃぷ氏とその新車を大いに盛り上げようと撮影会が始まる。

湖をバックに。右足をちょっと曲げているのがポイントですかね。

撮影:坂本氏

ちなみにその周囲はこんな感じになっている。みんなきゃぷ氏のこと好きすぎか。

それにしても、見れば見るほど綺麗なフレームデザインだ。そこにカスタムペイントがベストマッチしており、唯一無二の車体となっている。

撮影:坂本氏
撮影:坂本氏
撮影:坂本氏
撮影:坂本氏

人の新車を眺めていると、自分も少し揺れてしまう。今のところお迎えする予定はないけれども。

気がつけば、皆なにやら片手で自転車を持ち上げる動作に入っている。おもち氏考案の片手で自転車を上げる行為、通称「おもち上げ」である。

我が借り物の車体は10kgを超えるが、おもち氏曰く「重量よりもバランスの取り方の方が大事」とのこと。とりあえず、私もやってみた(以前にもやったことあるけど)。

撮影:なっち氏

ふむ、意外と上がるものだ。重量はそれほど気にならない。バランスの取り方に注力すればまあどうにかなる。

少し移動て、「サイクリストの聖地」像の前でさらに撮影。「サイクリストの聖地」ってなんとも形容詞がでかすぎるフレーズだな……。

きゃぷ氏が同じポーズを披露しようとするが、脚の角度が80度ほど足りない。

やむなく「さかな~」のポーズのつもりで脚を水平にする。知らない人は『リコリス・リコイル』で検索すると良い。

次いでおもち氏、さかもと氏がサイクリストの聖地像に近づこうと脚を上げる。ギリギリ坂本氏のほうが脚が上がっている感じがする。

撮影:なっち氏

かくいう私は遠巻きにソレを眺めていた。体が固い私にはそんなポーズはできるはずもないので。なので、代わりにおもち氏とおそろいジャージで1枚。

撮影:なっち氏

それにしても……重ねて言うが、OPNE CYCLEの車体はとかく美しいと感じる。そこにカスタムペイントの色合いとポップアートのデザインが反映され、なんとも面白いバランスの1台となっている。

いずれ私も……と思うのも無理はない。決してメーカー製造の既製品を遠ざけるものではないが、誰しも、他にはない自分だけの1台が欲しいと思うのではないか。

じっくりと時間をかけてきゃぷ氏の車体を撮影し、サイクリストの聖地を後にする。

琵琶湖沿いをさらに少し走り、野洲川沿いに西へと舵を切る。

当初の予定になかった道だが、河川敷の道はそれなりに整備されていて走りやすい。のんびりと野洲方面へ進む。

近江富士大橋と呼ばれる橋を渡り、そのままJR野洲駅の近くまで接近。すると、予定していたランチスポットが見えてきた。

なお、既に16時である。ランチタイムとは一体。

「知らない紅茶一つ飲み終えても、またすぐ目の前に紅茶があるんだ」(SPOON 野洲本店)

SPOON 野洲本店

スプーン 野洲本店 (野洲/カフェ)
★★★☆☆3.40 ■予算(夜):¥2,000~¥2,999

広々した店内である。通常のテーブルや椅子かと思いきや、それぞれにソファーが用意されていた。

なるほど、坂本氏がこの店は最後に回したほうが良いと言うわけだ。一度座ってしまったら最後、再び自転車に乗る気力が失われてしまうだろう。

着席して、メニューを眺める。ピザがおすすめと聞いていたので、5人でピザと紅茶、サラダのセットをそれぞれ注文。

早速、紅茶が注がれる。ブルーベリーラズベリーの紅茶。甘いベリーの香りが漂う。

暫くすると、ピザが運ばれてきた。

事前に5人でシェアすることをスタッフに確認された結果、きちんと5等分に切られている。こういう配慮はありがたい。

1枚目、私が注文した一面擦り立て生ハムピッツァ。焼きたてのピザと生ハム、どう考えても美味しいに決まっている。もっちりした生地に、生ハムの程よい塩分が口いっぱいに広がる。

食べ終えるころに、スタッフがふたたび紅茶を淹れにきてくれた。2杯目、りんごのアールグレイだ。りんごの爽やかな香りがアールグレイとよくマッチする。

2枚目、きのこのピッツァ。3枚目、いちじくを使ったピッツァと、ピザが順に運ばれてくる。

注文してから1枚1枚店の釜で焼き上げているらしく、どれもできたての香ばしい香りがする。チーズとピッツァ、具材の相性も良く、オーソドックながら素直に美味しい。

撮影:おもち氏

その間に、さらに紅茶が運ばれてくる。3杯目。お花か何かを使ったアプリコット。優しい香りが花をくすぐる。

……そんなに紅茶を入れて貰って良いのだろうか。

当初、ピザと紅茶のセットでは紅茶は定量なのだと思っていた。しかし、既に3杯目。しかも毎回紅茶の種類が異なっている。

一体、目の前で何を見せられているんだ……。そうして、私はあることを思い出す。

本日やむなくDNSとなった373氏(@m_alice)は、以前にこの店に訪れている。後日、373氏はこう宣うた。

店のなかでピザを食べていたと思ったら、いつのまにか無限に紅茶を飲んでいた

……まあ、まだ3杯目である。これを無限と呼ぶのはいささか無理が――

などと思っていたら4杯目。洋梨の紅茶が注がれた。

バカな、本当に無限に紅茶を出してくると言うのか! というか一体何種類の紅茶を用意しているんだ。

なお、洋梨の豊かな香り漂うこの紅茶も美味い。紅茶党ではないのだが、いくらでも飲めそうな気がしてくる。それこそ、既に店の術中にはまっているのかもしれない。

これが無限紅茶か……。そのうちKeiOSは、考えるのをやめた。

居心地のよい店内で食後くつろいでいると、やはり紅茶が注がれた。5杯目、ルイボスティーである。こちらはノンカフェインとのこと。

このまま閉店までいたら一体何杯の紅茶を飲ませてくれるのだろう。そんなことが気になる。重たくなった腰をぐっと引き上げてお会計へ。

会計後、店内で販売している紅茶を物色する。確かに、これだけあれば何度も品を変えて紅茶を注げるだろう。

SPOON 野洲本店、果たして何杯紅茶を出してくれるのか試したくなるまんぞくであった。

その後、JR野洲駅で車体を輪行袋に詰め込み、新快速に乗り込む。

駅前にコンビニがあると、当然こうなるわけだ。今日も一日おつかれさまでした。

なお、人数が多かったのできゃぷ氏となっち氏は別車輌で乾杯。妙なショットである。

結びに代えて

きゃぷ氏の愛車を撮影しよう。そのひと言に尽きるライドであった。

サイクリストとしてそれなりに走ってきたせいか、琵琶湖のモニュメントなんて今更見に行く価値などあるのだろうか、などと思っていた。

しかし、それも気の持ちよう一つでずいぶん変わるようだ。少なくとも今日この日においては、自分ではない誰かの新車をとにかく愛でまくるという目的のもと、今までに経験したことのない時間を過ごすことが出来た。

主役のきゃぷ氏もいたく満足げな様子である。喜んでもらえたのなら重畳だ。

思えば、ただ愛車を撮影するためだけのライドというのは過去にしたことがない気がする。

拙い写真しか撮れない私だが、少しは勉強して愛車をカッコよく、可愛くフレームに収められるようになりたい。

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