前書き
ここしばらく、ライドに繰り出すのが少し億劫になっていた。
理由は単純で、万が一パンクしたときのチューブを持っていなかったからである。現在使用しているグラベルロードは、修理に出しているつばめ(ロードバイク)が戻ってくるまでの借り物だ。
それほど修理に時間はかかるまいと思っていたので、交換用のチューブは購入していない。まあ、チューブなんて安いものなので1本くらい買っておいても良いのだけど。
いずれにしても、チューブを持っていない。なので、パンクしたときにリカバリができないのである。
したがって、走る場所はリカバリできる範囲に限られる。ここ数日もアワイチや和歌山の護摩壇山ライドに誘われたのだが、どちらも万が一のときにリカバリできる場所では無いのでやむなく辞退した。
そういう状況であるからして、ここ3週間ほどはぼっちライドに勤しんでいた。うち2週はただ清滝峠を登りに行っただけである。一時に比べると頻度が下がったとはいえ、ルーチンワークの域を出ない。
そんな私の境遇を見かねてかどうかは知らないが、普段よくご一緒している373氏から提案があった。年中行事のひとつ、カキオコライドである。
カキオコ。豚でもなく烏賊でもなく、牡蠣を具材に使うお好み焼きである。岡山県の日生あたりで振る舞われるその一品を求めてライドに繰り出すのは毎年の恒例行事となっていた。
ルートにもよるが、大阪から日生まではJRが並走している。万が一のことがあってもリカバリは可能だ。いまの状況で向かうにはうってつけの目的地だと思えた。
二つ返事で参加の意を表明する。すると、あれよあれよという間に参加希望者が増えていった。
参加者は以下の通り。
おもちっこ(@noyuyuya)
がむが(@AlienA0V0)
坂本(@skmt_fact)
Shin(@shinox_kg)
373(@m_alice)
KeiOS(@kei_os_)
計6名の大所帯である。これは2組に分かれて走るのがベターだろうな……。
などと思っていたら、私個人にDMが飛んできた。
送信元は先日その新車を大いに盛り上げた相手、きゃぷちゅん氏(@cap_pac)である。当初お声かけしたときには参加が難しそうだったのだが、どうやら都合が付いたようである。
せっかくなので他のメンバーには知らせず、プランB「奇遇ですね」作戦を実行することとした。
こうして、恒例行事のカキオコライドが今年も幕を開ける。
「茶番は終わりだ」(CV:関俊彦)
2022年12月3日 土曜日
午前6時少し前に起床。
前日は飲み会だったこともあり、二度寝しそうになってしまった。なんとか体を起こして準備を始める。
集合場所は7時30分に神戸付近、9時に西明石駅の二択だった。流石に前者は難しそうだったので、後者に間に合うように準備して出発。

最寄り駅で輪行状態にセットし、予定していた車輌に乗り込む。
道中、車内のディスプレイが妙な動きをしていることに気がつく。

フィクションなら異世界に飛ばされる前振りにもなろう。結局、乗車中この画面が平常時の様子に戻ることはなかった。
のんびり車輌にゆられながら、JR西明石駅に到着。



東口で下りて輪行状態を解除していると、きゃぷ氏がやってきた。互いにニヤリと笑いながら「奇遇ですねー」などと交わす。ぐだぐだ茶番劇である。

その後、Shin氏、373氏、おもち氏、坂本氏、がむが氏も到着。皆きゃぷ氏が来ることを知るはずがないので、それぞれ面白いリアクションを返す。もちろん、黙っていたのは他でもない私なのだが。







流石に7人でまとまって走ると通行の邪魔になるので、373氏、おもち氏、Shin氏をアテンド役として、残りのメンバーでグー・パーのグループ分けを行った。
どうでも良いがグーパーのかけ声は地域によって違う。今回は坂本氏のかけ声で開始。
ふと魔が差したのか、思わずピストルを出してしまう。平成生まれの方々にもピストルが通じて一安心。
結果、次のようなグループとなった。
グループA:373氏、坂本氏、がむが氏
グループB:Shin氏、おもち氏、きゃぷ氏、KeiOS
グループAが出発したのを見送り、少ししてから我々も出発した。

「ほら、7だけが孤独でしょう?」
JR西明石駅を出て、ぐるっと西に進む。
とはいえ、今回はR2でもR250でもなく、明石高砂線と呼ばれる道を進む。山陽電鉄本線に並走する道路である。

道幅が多少狭い。行き交う車に注意しながら西へ西へとクランクを回す。
ちなみにこの明石高砂線、以前はR250のバイパスであり国道として管理されていたらしいが、その後県道r718となったようだ。かつての国道の名残か今でも交通量は多い。
途中で一本北側の道に入る。その理由は不明だ。

だが山陽電鉄本線に近づいているあたり、ルート作成者である373氏が私のリカバリ可能性を慮ってくれたのではないかと意味不明な想いを寄せる。
と想っていたら浜の宮駅あたりで再び南にくだり、先ほどの明石高砂線に合流する。ルート作成者はまさかのデレツンか。

加古川を越える。これまで幾度となく加古川を渡ってきたが、この橋も過去に複数回走っている。今日は一部工事中のようだ。

川沿いに佇む工場群、或いは荷揚げするクレーンの群れ。こういう景色は嫌いじゃ無い。

どうでもいいことだがクレーンの群れを見ていると『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』のプロローグを思い出す。
そういえば就職して初めて貰ったボーナスで購入したのはウテナのDVD-BOXであった。今はBD-BOXが出ているらしく、DVD-BOXを有していながらやはり欲しいなどと思う。え、そう思うのって普通でしょう?
加古川を渡り終えて、再び山陽電鉄本線に合流。線路から絶対離れないぞというルート作成者の意図を感じる。

小さな川をひとつ渡った先に、かつめしの表示が見える。ここはもう高砂市のはずだが、加古川市に近い場所ではまだまだポピュラーなようだ。

というか寿司にかつめしとは一体……。その無茶ぶりな組み合わせもまた一興か。ちなみにこのお店、なかなかの有名店らしい。

さらに西進し、小さな橋を渡る。橋には「ブライダル高砂」、「結びのまち高砂」との看板が掛かっていた。どの自治体も人口減を食い止めようと必死のようだ。

見るときゃぷ氏が○○顔ダブルピースサインをしていた。どんな顔をしているのかは知らない。

そのまま山陽電鉄本線と並走し、姫路市へ。

的形駅近くのコンビニで、選考していたグループAに合流。それまで何度かDMを送ってくれていたようだ。

合流後、昼食をどこにしようかと提案がある。先に調べておいてくれたらしく、幾つか候補を挙げてくれた。
そのうちの一つ、妙な店名が皆の注目を集める。
本日のメインはあくまでカキオコ。だが先は長い。道中のグルメもまた、旅のスパイスとなろう。
とりあえず、その妙な名前の店へ行くこととした。
再び西へ西へと進み、姫路市を流れる河川のひとつ市川を越える。

この橋からは、環境調和式鉄塔の群れがよく見える。どのあたりが環境に調和しているのか問い詰めてやりたい外観だが……。

姫路の市街地に入り、飾磨警察署のある交差点を右に曲がって暫く。そこに、くだんの「妙な名前の店」が姿を現した。
文末に(爆)と付けるのをを見なくなった(白めし爆食処 姫路 一本堂)
着いた先はこちら。
白めし爆食処 姫路 一本堂



「腹、八分目? いや十二分目でしょ」の煽り分。つまりは胃袋突き破れということか。
なかなかの人気店らしく、正午の時点で店内は満席。待ち時間のあいだ、手渡されたメニューを眺めながら何を食べるか考える。

どうやらイチ推しメニューは「大人様定食」のようだ。確かに、タルタルまみれのエビフライタワーのビジュアルは妙に目を惹く。
他にも鶏の唐揚げ定食やチキンカツ定食、牛ホルモン焼き定食、チャーハン定食、さらにはラーメンまである。
しかもご飯のおかわりは無料ではなく「無限」。まさかのUnlimited Rice Worksである。まさに「がっつり」を具現化したようなメニューだ。
しかし、この先はカキオコがまっているのである。その上、ずっと平地を走ってきたせいかそこまでお腹がすいているわけでもない。
諸々迷った結果、定番メニューのひとつらしい鶏の唐揚げ定食、ネギ塩ソースを注文することとした。
20~30分ほど待って店内へ。着席して暫くすると、注文の品が運ばれてきた。


一見して普通の唐揚げ定食だ。さて、お味の方はいかに。
早速、ひとくち。
美味い。余分な足し引きのない、揚げたての唐揚げ。シンプルだからこそ、その旨味が際立つ。
別皿に分けてあるネギ塩ソースを付けて、さらにひとくち。こちらも美味い。ほのかにジャンキーなネギ塩の味が唐揚げと良く合う。
ソースが別皿にあるおかげで、味変の有無を選びながら唐揚げが楽しめる。これはご飯がすすむというものだ。
注文した唐揚げは7つ。ライドの出発前に食べ過ぎたので完食できるか少し心配だったのだが、気がつけば一気に完食してしまっていた。
本来なら店名のごとく白飯を爆食すべきところなのだが……ゴールにカキオコが控えているので、今回は腹八分目でちょうど良かろう。
ふと後ろを向くと、大人様定食の量の多さにもだえ苦しんでいるきゃぷ氏が目に入った。背中に哀愁が漂っている。


曰く、終わりの見えないヒルクライムを登り続けている気分だったらしい。そこまで無理しなくても……。
とはいえ、その看板メニューも気になるところだ。次来ることがあればその大人様定食にチャレンジしてみたい。
白めし爆食処 姫路 一本堂、白飯がすすむ満足であった。
ちょっとした坂があるくらいですよ(登らないとは言っていない)
店を出ると、未だに食べ過ぎできゃぷが渋い顔をしている。一方、大人様定食でご飯3杯もおかわりしたおもち氏は上機嫌である。なんだこのテンションの差は。
次は日生の手前にある赤穂の市街地を目指す。ここで再びグループ分けを行った。
グループA:きゃぷ氏、Shin氏、373氏、
グループB:おもち氏、がむが氏、坂本氏、KeiOS
グループAが出発して暫く。おもち氏を先頭に我々グループBもスタートする。
R250に戻り、一路赤穂へと向かう。交通量の多い道だが、道幅が広いのでそこまでストレスはない。

と思ったら途中で細い道へ入った。国道ばかり走っていてはつまらんだろうという373氏の計らいを感じる。
途中でr502に合流し、さらに先へ。R250の北側を並走するような道だ。
山陽網干駅のあたりで北上し、揖保川に差し掛かったところで川沿いに進む。


このあたりの道は良く整備されており、走りやすい。おもち氏が先頭でテンション高く両手を広げている。
揖保川を離れて、山陽新幹線と並走するように走る。位置的には「道の駅みつ」のずっと北側だ。

途中、コンビニ休憩を挟んでいると、Aグループかの373氏からメッセージが届く。「道の駅あいおい白龍城」で休憩しているとのこと。
コンビニから2km先の場所だった。もう少し休憩を我慢すれば良かったとも思うが、仕方ない。
気を取り直して出発。すぐにあいおい白龍城が見えた。いつもは海沿いのはりまシーサイドロードを通ってくるせいか、別ルートからこの場所を訪れるのが妙に新鮮だ。

相変わらず、道の駅には見えない外観である。なんとなく中華風にも見えるが、別に中華をウリにしているわけではないし、中華料理が出てくるわけでもない。
なお、この道の駅には「ペーロン温泉」も併設されている。ここでひとっ風呂浴びて走るのも良さそうだ。
道の駅を過ぎて、相生市と赤穂市の市境へ。本日ひとつめの登りに入る。
おもち氏が先行し、坂本氏がそれに続く。久しぶりのライドであるがむが氏の後ろについて、私はゆっくりペダルを回す。
道幅は少し狭い。一方で交通量が多く、たまに大型車輌もすれ違う。注意して走れば問題ないので、マイペースで行きましょうとがむが氏に声をかける。

黙々と登り、頂上にある市境に到着。少し先におもち氏と坂本氏が待っていた。合流して赤穂へと下ってゆく。

坂越大橋を渡り、千種川沿いを進む。日生まではあと18kmほど。

赤穂市街地に入り、先行していたAグループが休憩しているコンビニに到着。見るときゃぷ氏のテンションは上機嫌になっていた。どうやら走っている間に消化できたらしい。
目的地はもうまもなくだが、ここで少し長めに休憩をとることとした。
寄り道したら海沿いだった件
このまま日生までまっすぐ進もうと思っていたところ、Shin氏から提案がある。
以前にブルベで走った海沿いのルートへ行ってみませんかとのこと。今回あまり海沿いを走られていないので、ぜひにとお願いした。
コンビニを出てR250を進む。すぐにJR播州赤穂駅が見えた。スーパークレイジーエクスプレス新快速の西側発着地でもある。なお、ここから大阪まで新快速で約1時間で行くことが出来る。

市街地を出ると、夕焼け空が広がっていた。
JR天和駅のそばにある古いバッティングセンターの側を走る。何度か前を走っているが、その度になんとなく気になっている場所だ。なお、私は野球をしないし見ることもしない。


暫くして短い登りにさしかかると、Shin氏が登りなので皆さんのペースでどうぞと声をかける。直後、きゃぷ氏とおもち氏が飛び出した。
Shin氏とゆっくり後ろから登っていると、遠くでおもち氏がきゃぷ氏に離されてゆくのが見えた。
頂上に着き、ハイテンションで自ら勝利を称えるきゃぷ氏と、たいそう悔しそうにしているおもち氏。昼食時からここまで、きゃぷ氏のテンションの振れ幅が大きすぎて爆笑してしまった。
たぶんうちのつばめが手元にあっても競いはしなかっただろうなと思う。
そのまま先に進むと岡山県との県境にもう一つ登りがあるのだが、そこには向かわない。JR備前福河駅のそばを南に進む。

しばらく細い道を進むと……海が見えた。


ガードレールのない、細い車道。海沿いの田舎という雰囲気たっぷりの場所である。確かに、これはなかなかの雰囲気だ。
カキオコを食べに行くときはたいてい海沿いのルートを選ぶのだが、今回はここまでほぼ線路沿い走ってきた。日生が海に面していることもあり、ゴールに近づいてきたのを実感する。
せっかくなので、全員で記念撮影。流石に7台は多い。

海沿いの道をのんびり走り、途中細い道を登ったり下ったりした先で、良い感じに海へ着きだしている場所があった。
なぜかひとりずつ撮影会が始まる。




海を見るとなんとなく意味不明なことをしてしまうらしい。それもまたよかろう。
カキオコを目前にして、旅の終わりがくるのを十分に楽しんだ。
とりあえす牡蠣を食らうが良い(お好み焼きオレンジハウス)
そのままJR日生駅まで走る。就いた頃には日が暮れており、あたりは暗くなっていた。時間的にちょうど良かったのかもしれない。
駅のすぐ近くにある、一軒の店の前で自転車を停める。
お好み焼きオレンジハウス


初めて訪れたときの様子は、以下の記事から参照できる。
メインのカキオコはもちろんのこと、牡蠣を使ったメニューを多く取り扱っており、総じて満足度の高いお店だ。今回の訪問で3回目となる。
店に入ると、ちょうど4人掛けのテーブル席が2つ空いていた。写真撮影で時間をつぶしたおかげか、良いタイミングに巡り会えた。
着席し、さっそくカキオコ(カキ増量)を人数分、そしてカキうどんとカキ入り豚キムチを注文する。
もちろん、ビールを欠かすわけにはいかない。せっかくなので大ビンで注文する。

耐えられぬ、飲む。
美味い……。せいぜい80kmくらいしか走っていないが、それでもアルコールが五臓六腑にしみわたるのを感じる。

カキオコが焼き上がるのを待ちながら、まずはカキうどんが到着。

焼きうどんにカキが入った、ただそれだけの一品である。だがそれでいい。それがいい。カキの風味が焼きうどんのソース味とよく絡み、美味しい。早速ビールが進んでしまう。
暫くするとメインのカキオコが運ばれてきた。早速ひとくち。

美味い! 山芋とキャベツの生地にカキがたっぷり詰まっており、どこから食べてもカキと生地の食感が口に広がる。
冷凍のカキも悪くは無いが、やはり旬のものには勝てない。噛む度にプリプリの食感と磯の香りが楽しめる。
カキ入り豚キムチもやってきたので、箸休めにいただく。

いや、これも箸休めにならない美味さだ。カキうどんと同じく、豚キムチに牡蠣が入っただけの一品。しかし牡蠣の旨味が豚キムチのジャンキーさと合わさった結果、無限にビールをアテンドしてくる。
食べている間も次から次へとお客さんがやってきて、カウンターで注文したり、テイクアウトを依頼したりしている。地元に愛されている店だということをあらためて認識した。
あまり長居してしまっては他のお客さんに悪いというものだ。追加のビールは我慢しよう……。
しっかりとカキオコを堪能して店をあとにした。来年もまた訪れたいものである。
オレンジハウスのカキオコ、今年も安定のたしかなまんぞくであった。
その後、日生駅から輪行で帰阪。

この日は輪行しているサイクリストが多かったのか、見知らぬ方から「今日は何かイベントでもあったんですか?」と聞かれた。いや、そういうわけではないですよと答えたのだが。心の中では違うことを呟いていた。
おそらく、みんなカキオコを食べにいったんでしょう。
結びに代えて
1年ぶりのカキオコであった。もはや年中行事である。コレを食べなければ冬は始まらぬ。
まあ、冷凍技術が進歩したおかげで、実は年中食べられるのだけれども。そして冷凍の牡蠣でも意外においしいものである。
しかし、それはそれ。これはこれ。やはり冬の寒さとセットで楽しんでこそという気がする。
今回走ったルートは今までとは趣の異なる道だった。思えば、過去にカキオコを求めて走ったルートはどれも同じようで微妙に異なっている。
次はどのルートで訪問しようか。終わりにビールさえあればどんなルートでも楽しめるけれども。