前書き
2019年11月6日 水曜日
自宅で仕事を進めていると、ふぃぼなっち氏(@nacci_contact)からメッセージがあった。
カキオコ食べに行きませんか、というものである。
カキオコとは、牡蠣を使ったお好み焼きのことだ。岡山県備前市日生のご当地グルメとして親しまれている。
1枚のお好み焼きに対して大量の牡蠣を使うのが特徴で、お好み焼きの甘辛ソースに、磯の風味豊かな牡蠣の味とプリプリの食感が絶妙にマッチする一品である。
ちなみに、お好み焼きの作り方も少し異なっている。キャベツの切り方は広島風、生地との混ぜ合わ方は関西風という、なんともハイブリッドなものだ。
牡蠣のシーズンといえば、冬。最近は冷凍のものを用意して1年中食べられるようにしている店も多いらしいが、行くならやはり冬だろう。「牡蠣は”R”のつく月に食べるべし」とはよく言ったものである。
できれば駅前近くのお店で、ビールを飲める状態が有り難い。
なっち氏もそれなりに(注意:語句の意味するところには個人差があります)酒を嗜むので、考えていたことは同じだったようだ。わざわざ「カキオコ&ビール」を前提条件の「0番」としてくれた。ナイスな展開じゃないか。
提案されたルートは3つ。
1.三田市から東条湖を経由して東進、宍粟市を突っ切り、湯郷温泉→日生へ入るルート(230km、2000m up)
2.三木市を経由、東進し、上郡→日生へ入るルート(175km、1600m up)
3.姫路から出発、湯郷温泉→日生へ入るルート(140km、1300m up)
なお、1及び3に湯郷温泉が入っているのは、温泉むすめに会いに行くためである。
こういう機会じゃないと温泉むすめに会えないので、行けるならぜひ行きたい。しかし……。
案1は強烈なエクストリームライドの予感しかしない。行けなくもないだろうが、目当てのお店の閉店時間も考えると、出発時間をかなり早める必要があるだろう。
残るは案2か3だが、案3は往路、復路ともに輪行が必要になり、輪行解除が面倒だなあという意見が出た。
そこで、案2をベースになっち氏が再度ルートを検討。集合場所から150km、1200m upのルートが完成した次第である。
温泉むすめは今回は断念。次回に期待しよう。
仕事をしながら、送ってもらったルートを確認する。距離、獲得標高はまあまあ。良い感じのグルメライドになるのではないか。
エクストリームにほど遠い、楽しいライドになりそうな予感がしていた。
なお、この日の様子はなっち氏のブログにも掲載されているので、併せて参照されたい。
誰もいない集合場所
2019年11月16日 土曜日
起床し、手早く準備を済ませて出発する。
月は出ているか?
R2→R176を経由し、十三大橋を渡って北進。
神崎川から川沿いの道に入り、そのまま川沿いを突き進んでいく。
初見では少し迷いやすいが、車の往来を避けて池田市までアクセスできる定番のルートだ。
集合場所であるローソン池田新町店までは、自宅から約1時間半。十分に間に合うように出発したのだが……微妙にスピードが遅かったのか、到着したのはちょうど(本当にちょうど)8時だった。
集合場所に颯爽と現れる、私とキュアラピエール。
キュアラピエール「白き翼にのぞみを乗せて、叫べ平和の青いエール! キュアラピエール、定刻通りにただいま到着!(キリッ」
KeiOS「(一緒に)(ドヤァ」
キュアラピエール「(……プイッ(こっちを見るなという意志表示)」
キュアラピエール。お前はいま、泣いていい。
誰もいない。もしかして、高度な情報戦が行き過ぎて集合場所すらフェイクだったというオチだろうか。
と思ったら、皆ちょっと遅れているらしい。先に備えて食事をしながら、のんびりと到着を待つ。
やがて、373氏(@_m_alice_)、きゃぷちゅん氏(@cap_pac)、そしてなっち氏が到着した。
さすがに日生からの帰りは輪行になるので、きゃぷ氏もなっち氏もサドルバッグを装備している。中には輪行袋その他諸々が入っているらしい。
きゃぷ氏の車体を見ると、バーテープが変化している。
CICLOVATION(シクロベイション)のバーテープである。目を引くおしゃれなデザインながら、握ったときの質感がなんとも心地よく、良いバーテープだと思う。実はキュアラピエールのバーテープも同じくCICLOVATIONである。
CICLOVATIONの内容はこちらを参照して欲しい。
個人的には、現在の車体には黒あるいは暗い色のバーテープを合わせるのが気に入っている。以前に使用していた青い斑模様のものも悪くはなかったが、黒にすると全体的に引き締まった感じがして良い。しばらくはこのまま使い続けたいものである。
めいめい補給を済ませ、出発する。それなりに長い道のりだ、ゆったりと行こう。
ルートの全長だってセグメントに過ぎないんだよ(上手いこと言えてない)
コンビニを離れ、一路R12を進む。
いつまでもリニューアルされないスポーツレジャー施設。万年閉店セールしているお店もあるし、そういうものなのだろう。
清和大橋西詰を過ぎて、ローソンの前あたりから生駒病院へ続く道に入る。ここではStravaのセグメントがあるらしく、急になっち氏ときゃぷ氏が猛スピードで駆けていく。373氏と私は後ろからのんびり追いかける。
なっち氏はあのサドルバッグがあるにもかかわらず、記録を更新していたらしい。さすがである。きゃぷ氏も1月ぶりというブランクを感じさせない走りで、早くもゆるいライドの予感が消え失せていく。
R12を過ぎて、R324へ。
ここは新名神高速道路に併走する形で道が続いている。道が綺麗に舗装されているので、10%弱の斜度が心地よく登れる。
宝塚市。R33に入る。
途中、西谷ふれあいプラザでちょっとだけ休憩。出発してまだ20km程度だが、結構なペースで走っていたようだ。
疲労していたわけでもないのだが、なんとなくエナジーコーラを購入。
初めて飲んだが、どうも味が薄く感じる。
この味をどう表現すればいいのだろうと思っていたら、373氏から「それ、駄菓子っぽいですよね」と言われる。そう、それだ。何とも駄菓子っぽいチープさがある。普通のコーラのほうがエナジー感あるな……。
「めんたいこでテーマパーク作ればええんや!」とかいう狂気の発想
休憩を済ませて、出発。
R33からR68に入り、三田を目指す。
この日は快晴とまではいかなかったが、日差しは心地よく、走るのにちょうど良い天気だった。
少し寒々しい景色から、着実に冬が近づいているのを感じる。いつもながら、秋は思いのほか短い。
有馬富士公園口の交差点で、いったん三田市街に入った。
六甲山地の北側に位置する三田は、小高い土地にできたニュータウンというイメージがある。
自転車に乗るまで、三田には一度も来たことがなかった。なのに名前だけよく知っているのは、JR福知山線で「新三田」駅にて折り返す電車が多いからだろう。
嶋ヶ谷の交差点を左折し、R17を走行。
少し進むと……。
なんだ……アレは……。
キュアラピエール「KeiOS、敵よ」
KeiOS「敵か、ならば仕方あるまい」
……めんたいパークという何とも面妖な施設を発見。珍妙なマスコットキャラが見える。
めんたいパークとは株式会社かねふくが運営している明太子のテーマパークだ。神戸三田のほか、茨城の大洗、愛知県のとこなめ、静岡の伊豆、そして大阪ATCにも存在する。
中には明太子の工場のほか、できたての明太子の直売店、ミュージアム、フードコードなどがある。スケソウダラの生態や、明太子の作り方も理解できるらしく、まさに明太子のテーマパークの呼び名に相応しいといえるだろう。
しかし――家族連れだけではなくカップルも楽しめるとあるが、世の中のカップルはこんなところに来て楽しめるのだろうか……。いや、それも私の認識がおかしいだけなのかもしれない。
神戸市から三木市に入る。
少し進んで、道はR17からR506、そしてR355に入った。
昼食の予定地を前にして、ボトルの水分が心許ないとの声が上がる。R428と合流する二ッ子町の交差点でしばし自販機休憩。
すぐそばには神戸市の標識が。
こんなに人里離れた場所でも、神戸なのだ。
神戸と聞いて、都会のイメージを持つのも無理はない。実際、神戸港を中心に栄える神戸には多くの企業や工場、及び教育・研究機関が集中している。
他方、旧居留地や南京街などを中心に、近代の雰囲気を色濃く残す建物も散見される。大阪や京都とは異なる、現代的な港湾都市と歴史の入り交じった神戸の街並みを好むという人も多い。
1995年に発生した阪神淡路大震災によって街は甚大な被害を受けたが、その後時間をかけて復興を遂げ、ふたたび国際貿易港として大きく発展した。2019年の時点での人口は150万人を超え、川崎市に次いで第7位である。
そんな神戸に住む人へ出身地を聞いてみると、兵庫ではなく神戸だと答えるケースも多いのだとか。兵庫県民と一括りにすると機嫌が悪くなるという話もあるとかないとか……。いずれも実際には見たことがないが、神戸が兵庫のなかでも別格であるということを示す逸話だといえるだろう。
しかし、神戸は確かに大都市ではあるが、都会なのは湾岸地区を中心として東西に広がる部分だけである。北側にはサイクリスト大好きの六甲山系が広がっているし、有馬温泉もある。山道を走っていて、本当にここは神戸かと疑問符が浮かぶことも少なくない。
三田、三木と来て、我々はまだ神戸の山々の上を走っていたに過ぎないのだ……西遊記における釈迦の掌の話を思い出しながら、補給を済ませる。
ちなみに、ここの香ばし麦茶は国産果汁のこだわり炭酸らしい。試した人はぜひ感想を聞かせて欲しい。
ワイルドダックだがアヒル料理は無い
R355からR80に入り、北上。
キュッとのぼる坂の上に、加東市の標識がある。
そのすぐ向こうに、目当てのお店があった。
小さな森の喫茶店 レストラン ワイルドダック
どことなく可愛らしいたたずまいのレストランである。
軒先にはみかんや干し柿、りんごなど、この辺りでとれたと思われる果物が並ぶ。
敷地内にはヤギが放し飼いにされていた。
ほう、こやつが解体されて出てくるわけだな……(違
着席し、早々に「とろーりチーズハンバーグランチ」を注文。店の情報をあらかじめ確認した時点で、こいつにしようと決めていた。
運ばれてきたのがこちら。
写真では伝わらないが、鉄板の上でじゅうじゅう音を立てていた。一気に期待が高まる。
いざ、実食。
美味い。店でハンバーグを食べた回数は数えられるくらいだが、よく出来た一品だと感じる。肉汁たっぷりのハンバーグにソースとチーズがからみ、周りの野菜とも相まってなんとも満足度の高い味を生み出している。まさに写真のイメージに偽り無しだ。
一緒に運ばれてきたのは、パイ窯焼きスープ。
表面を割ると、食欲をそそる香りとともにスープが姿を現す。
ハンバーグの付け合わせにぴったりである。
これにライス、サラダが付いており、量としては十分。それでいてお値段はわりとリーズナブル。
車での訪問客が多いようだが、人里から少し離れたこの場所ならサイクリストをターゲットにしても十分やっていけるだろう。
難点をひとつあげるなら、禁煙席がないことか。すぐ隣のテーブルでは食事を待っている客が煙草を吸っていた。
私は元喫煙者なのであまり気にはならなかったが、食事中もずっと吸われていたならば、人によっては少し難儀したかもしれない(幸い食事が出てくるとその客は吸わなかった)。
いずれにしても、たしかな満足であった。この日のライドはカキオコがメインのはずなのに、嬉しいサプライズである。
なお、ワイルドダックとあるがアヒル料理はないのであしからず(鴨はあるらしい)。
金色の銀杏を求めて(秋らしいことをしておきたい)
胃袋に大きな満足感を詰め込んで、ふたたび東へ走る。すぐに小野市へ突入。
秋らしい、心地よい天気だ。
と思ったら、なぜか道なき道を走っている。
うんうん、それもまたアイカ(ry
加古川を渡る(歩道を徐行)。
加古川を渡ると、少し遠くに来た気分になる。県境のような雰囲気を持つ川だが、この先はまだ兵庫県であり、そもそもまだ小野市である。加古川市から越えると、別の市にはいるのだが。
北条鉄道の踏切を越えて、R81を走る。
やがて、目当ての網引駅が見えてきた。
ここには大きなイチョウの木があるということで、なっち氏がルートに組み込んでいた。
確かに、でかい。これは見ごたえがある。季節によってはイチョウの葉が地面に落ち、金色の絨毯ができあがるそうだ。
ぽつんと立った駅のまわりに、イチョウの木を見ようとそれなりに人が集まっているのはどこか妙な光景である。
この網引駅だが、なぜかサイクルラックが設置されている。
不思議に思って調べてみたところ、どうやらすぐそばを走る播磨中央自転車道の休憩所として活用されているらしい。多目的トイレや自販機が設置されており、確かに休憩所として申し分ないスポットである。
なお、播磨中央自転車道は過去に走ったことがある。
個人的には好きな自転車道のひとつだ。きれいに舗装された道が川沿いや住宅街を縫うようにして走っており、播磨の景色を堪能しながらペダルを回すことができる。
自転車に乗り慣れると自転車道はただの移動ルートに成り下がってしまうものだが、播磨中央自転車道はただ走っているだけでも気持ちがよかった。また機会があれば行ってみたい。
食欲の秋だけのライドにならなくて済んだ……。いや、別にそんなことを心配する必要はないのだが、せっかくなので秋らしいライドをしておきたいと思うじゃないか。
そんな私の気持ちを見越していたのだろうか。ルートを作成してくれたなっち氏に感謝である。
姫路観光をしたことがない
R372を進んでいると、富久錦株式会社という酒蔵が目に入る。
もうここで酒飲んで帰りたいという気持ちがコンマ0.1秒ほど浮かんだが、我慢して先に進む。
そのままR373に入り、姫路市へ。
姫路市は姫路城を中心に栄える、それなりに大きな街だ。総人口は2019年の時点で50万人以上。商工業の規模も人口も県内第2位である。
県下では西宮市、尼崎市、明石市と並んで中核市に指定されている。交通結節点の役割も有しており、JR山陽本線、姫新線、播但線、及び山陽新幹線を結ぶと同時に、山陽電鉄の終点である山陽姫路駅も存在している。
姫路城を含め、気になる施設がいくつかあるのでそのうち行きたいとは思っているのだが――。ご覧の通り、行く機会は常にライドの通過点としてである。しかも、こんな田舎道とは……。
まあいい、もうだんだん見飽きてきたが、田舎の景色を堪能しながら進もうじゃないか。
そう思っていたら、何やら妙なものが見えてきた。
私「なんか……観覧車がある」
きゃぷ氏「いやいや、こんな場所に観覧車とかなに言ってえええええええええ」
山の向こうに見える観覧車。なんともシュールな光景である。
姫路……観覧車……きゃぷ氏がひらめく。
きゃぷ氏「もしかして、姫路セントラルパークじゃないですか?」
それだ。
姫路セントラルパーク。それは「姫センGOGO」のCMでおなじみのテーマパークである。
こんな遠く離れた場所にあったのか、知らなかった……。
最近は「日本一心の距離が遠いテーマパーク」という、何とも切ない自虐PRで売り出しているのだとか。普通に姫路市街にあると思っていた私からすれば、心の距離どころかもはや無関心と同レベルである。
ちなみに、現在の自虐PRはこちら。
【姫路セントラルパーク 2019年 春 CM 30秒】
申し訳ないが、大阪から55分もかかるのでは行こうと思わない人のほうが多い気がする……(大阪にはUSJもひらパーもある)。
【西日本最大、姫センのプールCM】
悲しいピアノの旋律に合わせて動物がこっち見てくるのがじわじわくる。
ただ、私はテーマパークの類いにはあまり興味がないが、動物園はちょっとだけ好きである。ナイトサファリがあるのなら、それだけを目的に行ってみても良いかもしれない。
R312からすぐR518、R516へ入り、姫路市街地の北側を掠めるようにして走る。
姫路競馬場のほか、陸上自衛隊姫路駐屯地が見えた。
市街地をさくっと越えてR545に入ると、またもや妙なものが見えてきた。お城である。
キュアラピエール「KeiOS、お城が見えるわ」
KeiOS「(こんな場所にお城……アレにしか見えない)ああ、そうだな」
キュアラピエール「なかなか優雅な雰囲気が感じられる……私にふさわしい場所といえるわ。あそこへ連れて行きなさい」
私「……だめだキュアラピエール、あそこはまだおまえには早いというか、いやむしろ一生早いというか、なんならいつまでも親離れしないでいて欲しいと願うお父様の気持ちを察してプリーズ!」
どう見ても、にゃんにゃんする場所(死語)にしか見えない。あんなところへキュアラピエールを近づけるわけにはいかないと思いきや、ルートはお城のほうへ向かっているようだ。
しかし、近くまでやってきて、どうやらにゃんにゃん城ではないことがわかる。
城の名前は白鳥城。姫路にある太陽公園が設置したものであり、ドイツのノイシュバンシュタイン城をミニスケールで再現したものらしい。
元ヴィジュアル系バンドフリークだった者からすると、こういう城を見るとゴス系ヴィジュアルバンドがPVに使いそうとか思うわけだが。
「夜の帳が下りる」というたとえのかっこよさよ
ちなみに、特撮脳でもある私はむしろ「私を夜の闇に包め」とか言ってしまいたくなる。
日が暮れそうな時刻となり、JR太市駅で少し休憩。
時刻は16時過ぎ。目的地まではあと40kmほど。どう考えても夜間ライドは避けられそうにない。常に前灯、後灯各2を装備しているので、問題はないのだが。
R5に入り、槻坂トンネルを抜ける。
この先はたつの市だ。ここを越えればようやく岡山……とはならず、さらに向こうには赤穂市が待っている。静岡ほどではないが、兵庫もとにかく広い。
暗くなる空を向こうに眺めて、揖保川を併走する。
相生駅に到着する頃には、完全に夜となった。
目的地まであと少しだが、程度の差はあれどそれぞれに疲労の影が見える。相生駅近くのコンビニで休憩。視界が悪くなった今、せめて体調だけはきちんと整えておき、事故のないようにしたい。
コンビニにて、目的地の再設定を図る。当初、我々は備前市の寒河駅すぐ近くにあるカキオコの有名店「タマちゃん」へ行く予定だった。
しかし、タマちゃんのラストオーダーは19時と早い。コンビニに着いた時点で18時、目的地まで約20km。仮に間に合ったとしても長居はできないだろう。できればもう少し長く開いているお店でゆっくりとカキオコを堪能したい。
ラストオーダー及び閉店時間の早さが少し気になっていたので、実は別のお店も事前に少し調べていた。寒河駅のひとつ先にある日生駅の周りには、21時以降も開いているカキオコのお店がいくつかある。
暗い夜道を急いで走るのも危ないし、せっかくなのでそちらにしてはどうかと誰彼ともなく提案。満場一致で決定する。
ラスボスに峠2連発とかなにこのク○ゲー
よし、これで最後はのんびりライドになるぞ……とはあまり考えていなかった。
日生に入るまでには、少なくとも二つの小さな峠を越える必要がある。ひとつは赤穂市との境界、もうひとつは岡山県との県境である。
しかも、ここにきて前を引くなっち氏に衰えが見えない。人造人間のように永久式のエネルギーでも持っているかのようである。
かくいう私も、この日のコンディションは絶好調。あと100kmくらいは余裕で走れそうな気がしていた(気がしていただけ)。
コンビニを出てR250、はりまシーサイドロードに入る。
大した名前であるが、夜間なのでただの道と変わらない。
すぐに赤穂市との境界にある高取峠へ。ここはまだ大したことはない。
きゃぷ氏は今回が約1月ぶりのライドらしく、少し疲労の色が見える。それでも、ここまでほぼペースを落としていない。私も1カ月ほど乗れなかったことがあるが、そのときは周りに着いていくのが大変だった。
千種川に架かる橋の東詰、高野の交差点にて。
きゃぷ氏「ちょっと辛いかも……」
KeiOS「よし、じゃあケイデンス30上げていくか(金城(弱ペダ)の声で)」
きゃぷ氏「ハイ!(勢いよくペダルを回し始める)」
全然元気だった。
赤穂市街を突っ切る。あとはこのままR250に沿って行けば、日生に到着だ。
赤穂といえば赤穂浪士を思い浮かべる人も多いのではないか。かくいう私はどちらかというと、JRが誇るスーパークレイジーリミテッドエクスプレス、新快速の発着点というイメージが強い(昨今のダイヤ改正で朝夕のみの発着となったらしい)。
そうこうしているうちに、赤穂市を過ぎようとしていた。いつの間にか岡山県との境界、福浦峠にさしかかる。
もはや急ぐ必要はどこにもないのだが、なっち氏のペースが一向に衰えない。むしろ、ここにきて少し加速しているような気がする。カキオコ食べる前に全部出し切っておこうと、必死で彼に食いついていく。
1kmほど走り、峠の頂上に到着。
この標識を見ると、はじめて自転車で岡山県に突入した日のことを思い出す。
さあ、残すはウイニングランのみだ。
オレンジハウスでカキオコを
峠を下り、当初の目的地だった寒河を過ぎて約3km。日生に到着。
ふと海のほうへ視線を向けると、「ひなせ」のイルミネーションが見えた。
日生駅のすぐそばにある、みなとの見える丘公園(楯越山)に設置されているらしい。
夜間に通ったことがないので、イルミネーションの存在は知らなかった。なんとなく、ゴール地点に相応しい演出のように感じる。
時刻は19時過ぎ。空腹もそうだが、早く勝利の美酒をあおりたい。到着後の余韻を堪能して、目当てのお店へ向かう。
お好み焼オレンジハウス
「タマちゃん」が満席だった場合に備えて調べていたお店のひとつであるが、こんな形で利用できるとは思わなかった。23時まで営業しており、この時間(19時)なら余裕である。
お店のそばに自転車をまとめて駐輪させ、店内へ。ご近所さんらしき家族連れが既にテーブルを囲んでいる。なかなかの人気店のようだ。
お店は女将さんと店員の2名体制。テーブルは満席だったので、4人ともカウンターに通される。
食べ物よりさきに、やはり生である。ライド後はプロテインだろという人も多いと思うが、私からすればそんなものは二の次三の次。たんぱく質は食べ物で取れば良い。
走ったあとはビールに限る。異論は認めない。
まずは無事に到着したことを祝して、乾杯!
壁にはメニューがずらりと並ぶ。
定番のカキオコはもちろんのこと、通常のお好み焼きも種類が豊富だ。鉄板焼きにドリア、さらには焼きめしもある。いや、というかよく見たら何でもあるなこの店……。
どのメニュー名も美味しそうで目移りしてしまうが、1品目はやはりカキオコだろう。カキ増量で注文する。
女将さんは大阪からここまで自転車で来たことに「まあ、よくあるね」と返してくれる。気さくな雰囲気だが、調理に入ると一気にそちらへ集中。一定の距離感が保たれている感じで居心地が良い。
カキオコの準備を眺めながら、今日のライドのダイジェストなどに花を咲かせる。
見ているだけで食欲が止まらない。瓶ビールを追加注文する。
やがて、出来上がったカキオコがめいめい運ばれてきた。
カキの厚みもあるのだろうが、なかなかボリューミーである。最初に触れた、キャベツの切り方は広島風、生地との混ぜ合わせ方は関西風という作り方も影響しているのかもしれない。
いざ、実食。
美味い。キャベツと山芋、甘辛いソースとの組み合わせに、カキの磯の香りが混ざり合ってなんとも言えない旨味がある。生地とカキのプリプリの食感もこれ以上ない組み合わせだ。
そもそも、私はカキに関して大した思い入れがない。カキフライや生牡蠣を不味いと思うことはなけれども、特別美味いと思うこともなかった。
しかし、お好み焼きの具材としては十分にいける。毎年これを食べるためだけにライドしても良いかもしれない。
食べてはビールで口をさっぱりさせ、再び食べる。その繰り返し。いつまでも続くかと思われる行為は、あっけなく過ぎ去ってしまう。
ライド後の状態に加えてアルコールが入ったせいもあり、食欲がとまらない。メニューを見て気になっていたキムチ焼きめしを追加注文する。
目の前で調理されたキムチ焼きめし。可愛らしいお皿に入って出てきた。
味は少々あっさり目だが、塩分とキムチのピリ辛感が体に染み渡る。これとビールだけで延々と過ごせそうな気がした。
なっち氏は砂肝、373氏ときゃぷ氏は焼きそばをそれぞれ注文。
こちらも食欲が煽られる。
代案として入ったお店だが、個人的に大満足だった。機会があればぜひ再訪したい。
結びにかえて
オレンジハウスは日生駅から徒歩2分程度の場所にある。自転車を押して、駅前まで。
そそくさと輪行状態にセットし、ホームへ。有料特急を利用しなくとも、3時間もあれば最寄り駅まで帰ることができる。このあたりの手頃さも、カキオコライドをしやすい理由のひとつだと感じる。
次に来るのはいつ頃か。別に、翌年早々に行っても構わないのだが。