概要
2019年7月某日、それは人生初の手術を経験した日となった。
命に関わるような病気ではない。しかし、QOLを下げるようなものであったのは確かだ。
術後の経過はいたって良好。不満があるとするなら、数週間もの間、行動に一定の制限が課せられたことくらいである。
制限のひとつは飲酒。昔に比べると毎日飲むようなこともしなくなったが、さすがに数週間も飲酒を我慢しなければならないのは、なかなか辛い。こんなにも飲まない期間を設けたのは人生で初めてだったのではないかと思う。
そして、もうひとつの制限が運動である。術後はランニングなどの運動禁止。
当然、キュアラピエール……もとい、ロードバイクも禁止事項に含まれている。
しかし、もしかして……ということもあるかもしれない。手術前に医者へ聞いてみた。
KeiOS「術後、自転車乗っても良いですかね?」
医者「自転車? 日常で乗るくらいならまあ……ちなみにどのくらい乗るの?」
KeiOS「そうですねえ、週に100~200kmくらいかと」
医者「ダメ、絶対」
まあ、聞くまでもなかった。
それも8月中旬には晴れて解禁となり、リハビリと称して少しずつ乗り始めている。
以前の生活スタイルがようやく戻ってきた。そのことを実感し始めていた8月の第4週。
Twitterでのフォロワーのkabo氏からライドのお誘いがあり、373氏、おもちっこ氏を含めて久しぶりのグループライドへ赴くこととなった。
リハビリなんで緩いコースでお願いしますね……などという儚い願いは、最初の10kmでもろくも崩れ去ったわけだが。
振り返れば奴がいたかもしれない集合場所
当日は午前9時に大阪府池田市のローソンへ集合とのこと。

北摂方面へ向かうのも久しぶりだなあと思いながら十三を通り過ぎ、R176でイキったママチャリをそっと抜かしていると、後ろに何やら気配を感じる。
さっきのママチャリが追いかけてきたのだろうか? 面倒やな……と思いながら無視しようとしたところ、「おはようございます」の声。
振り向くとkabo氏がいた。どうやらママチャリではなかったらしい。

kabo氏と共に神崎川沿いへ入り、そのまま猪名川沿いを北上していく。日差しはあるが、そこまで暑いとは感じない。
途中、世間話を挟みながら走り続け、ジャスト9時に待ち合わせのローソンへ到着。
ローソンには既におもちっこ氏の姿があった。遠いところ、電車を乗り継いで来てくれたようだ。ほどなくして373氏も到着。
おにぎりとLチキで補給を済ませて、いざ出発。

そういえば、kabo氏のFACTOR O2と走るのは初めてである。余計なケーブルが一切なく、洗練されたフォルムはなんというか次世代のロードバイクという雰囲気。確かに、ライトすら余計に感じられる。
インスタ映えを狙えなかった五月山(インスタはやっていない)
最初の目的地は亀岡。
池田から亀岡へ行くなら、R423をのんびり進めば気持ちよくたどり着けるはずである。
しかし、前日に373氏が引いたルートでは、五月山を経由するとのこと。
大阪、特に北摂近辺のサイクリストなら知らぬ者はいないと思うが、五月山といえば関西ヒルクライムTTにおいて難易度Bランクに位置づけられるコースである。
大阪でBランクといえば、八尾市と生駒郡を結ぶ(みんな大好き)十三峠、同じく北摂にある妙見山など。
五月山のデータは以下の通り。
標高差:393m
距離:6.0km
平均斜度:6.5%
最高斜度:16.5%
あくまで平均斜度だけを見れば、普段から登っている清滝峠(Cランク)と同じだ。
しかし、最高斜度がエグい。平坦や下りもあると聞いているので、単純に上りの斜度だけで平均をとればかなり嫌な感じになるだろう。
ちなみに、私が五月山に登るのはこの日が初めてである。先に記した情報や、登った人の感想から、同じBランクでも辛いものになるであろうことは容易に想像がついた。
リハビリにしてはえらくキツいコースだな……と思いながら、373氏を先頭に五月山のスタート地点まで向かう。
途中、料金所のおじさんに一礼。五月山のコースはドライブウェイになっており、車で入る場合は有料らしい(自転車は無料)。
ほどなくして、息が切れそうになる。最初の500mくらいが一番キツいのではないか。斜度15%近くはあるだろう激坂をゆっくり登っていく。
途中、五月山の有名スポットである鳥居が見えたものの、工事をしていたらしくトラックと作業員らしき人に阻まれてしまい、近づくことは叶わず。
どうでも良いことだが、トラックの後ろに作業員が乗り込む(しかも10人くらい)のはダメなんじゃないだろうか……。まるでどこか知らない国のようである。
1kmを過ぎたあたりで、後ろからkabo氏が「KeiOSさん本気出してくださいよ」などとのたまっている。
うん? 私がリハビリ中なの知ってるだろう? なにこれもう一度病院送り?
とか思ってたら、4人でトレイン組みながら登るのは他の人の邪魔になってしまうということで、颯爽と飛び出していくkabo氏。その後を追うおもちっこ氏。
リハビリ終わってもあんな感じで登れるだろうかと思いつつ、マイペースで登る373氏の後を必死で付いていく。
途中何度かのアップダウンをくり返し、ゴール地点へ。
なんというか、初見の登りはやはり辛い。というかリハビリのつもりがむしろ手術創開いてるんじゃないのコレ。病院に戻って良いですかね……。
初めて五月山を登った感想としては、妙見山よりもキツい。一方、十三峠と比べると、好き嫌いが分かれるといった感じ。十三峠は五月山より短いが、休めるポイントが基本的にない。
どちらかというと、自分には休めるポイントが無い峠のほうが向いている気がする。休めるポイントは、基本的には休めないものである。何を言っているのかわからないかもしれないが、そういうものだ。
カメオカハサムコッペパンの遅い盆休み

五月山を下ったあと、箕面川ダムを左手に眺めながら進み、R4に合流。
途中、SNSでよく流れてくる高山公民館を確認。この日、ロードバイクは1台しか停まっていなかった。
R4からR423へ合流。ここから亀岡までは県境までのんびり登り、その後はひたすら下るだけである。
五月山でのダメージが思いのほか大きかったが、建前では夏の暑さのせいにして、途中のコンビニで休憩。
アイスコーナーの前に立つと、側でおもちっこ氏がガリガリ君を見ている。どうしたのと聞くと、ガリガリ君のソーダ味を食べたことがないのだという。
何か思うところがあったのか、ガリガリ君を持ってレジへ向かうおもちっこ氏。味の感想を聞いたところ、それなりに美味しかったらしい。
ちなみに、私は甘いものがそれほど好きではない(嫌いでもないが、好んで食べることはあまりしない)。バニラ味やキャラメル味に比べると、ソーダ味や柑橘系のようなスッキリした味のほうが好みである。なので、ガリガリ君ソーダ味はライド中によく食べている気がする。
イートインで今後のライドの予定やら何やら話しながら休憩した後、再びR423を北上していく。

そういえば、亀岡には何度か自転車で行ったことがあるはずだが、R423経由で行ったのは2回目だ(一番楽なルートなのに)。なお、1回目はクロスバイクで日吉ダムへ向かう途中に経由している。
県境を越えて、亀岡市内に入る。

途中、かつての京都学園大学、現在の京都先端科学大学亀岡キャンパスが見える(写真はない)。
京都先端科学大学といえば、2018年に日本電産株式会社(京都府)の創業者である永守重信が理事長になり、話題となった大学である。
ちなみに、日本電産は精密小型モーターの開発・製造において世界一のシェアを維持している企業だ。京セラに任天堂、オムロン、オーム、島津製作所、etc――。平安遷都から約1200年の歴史を持つ京都は、日本屈指のユニークな企業が多い都市でもある。
R423からR372を経由して、市街地を進む。

犬が暑さでへばっている。ゴールしちゃだめだぞ……。
本日の目当ては亀岡のパン屋だ。
その名も「カメオカハサムコッペパン」。

コッペパンにコロッケや豚の角煮など、さまざまな具材を挟んで食べられるのが特徴のパン屋らしい。SNSでも一部の自転車クラスタから時折写真がアップされており、いつか行ってみたいと思っていた。
現地にていざ実食……と思いきや、店舗の様子がどうもおかしい。

開いている気配が無い。本日は土曜日。定休日でないことは某大手グルメ情報サイトで確認済みだ。
閉じたシャッターに、張り紙。

<夏季休業のお知らせ>
どうやら、遅いお盆休みを取得中らしい。仕方ないね。
食に対する諦めは早いほうなので、早々に代替案を検討する。亀岡、パン系、といえばあそこしかあるまい。
ダイコクバーガーをダイコクド○ッグに空目する
別のプランを提案し、次の目的地へ。

ダイコクバーガー

亀岡のハンバーガーといえばココ……かどうかは知らないが、サイクリストにもそれなりに有名なところである。京都バーガーグランプリでは(そんなGPがあるらしい)3年連続バーガーグランプリを受賞とのこと。

サイクルラックも完備。
私も3年ほど前にクロスバイクで来たときにお邪魔させてもらった。この日が2回目である。

店内に入るとなぜか両さんがお出迎え。亀つながりなのかなと思いきや、こち亀終了後に始まった『ファインダー-京都女学院物語-』で毎回ダイコクバーガーが出てくるそうな。
とりあえず、一番人気と思われる「ビーフ100%Wチーズバーガー」のセットを注文。みんな、同じやつ頼んでるな……。


飯のときに甘いものは飲めないのだが、ハンバーガーだとコーラかジンジャーエールあたりが欲しくなる。
いざ、実食。
美味い。なんというか、あまり凝りすぎていないのが良い。
ファーストフード店のハンバーガーと、具材に凝りすぎた結果1,000円以上するハンバーガーの、ちょうど中間を射貫くような感じの味。
こういうのがいいんだよ、と言いたくなるテイストである。なお、ハンバーガー単品では800円と、絶妙な価格設定である。
強いて言えば、ポテトをもう少し美味しく揚げて欲しい。細すぎてしなびた感じになっているのが惜しい。しかし、その点を差し引いてもたしかなまんぞくである。
「貴様、この私に足を付かせるとは」
昼食を終えてライド再開。予定ではR6→R733を経由して長岡京市へ出る予定だったが、ここで373氏から提案がある。
「当初予定のルートと、なんか続いているかどうかわからない林道通っていくのと、どっちが良いですか?」
どうせアレでしょう? その林道めっちゃ険しいやつでしょう? 今日はリハビリなので無理するとか絶対ダメですから。はいダ――
「林道でお願いします」
誰だ即答した奴。
私だ。度し難いにもほどがある。
仕方ないので、林道に向けて住宅地のなかを走って行く。
住宅地なのに、坂。

見ると、kabo氏がアウター縛りで登っている。
指摘すると、いや、べつにそんなつもりないですよとの返事。こやつめハハハ。

住宅街を抜けて、だんだん道が険しくなってくる。本当にR733へ合流するのだろうか。それよりもこの道、普段だれか使っているのか?
とか思っていたら、普通にランニングしている人がいた。使ってるのか……。

だんだん木々が道を覆い、林道の風情が広がっていく。これは良い道だ。
良い道なのに、息が切れる。しかも心なしか、車体が揺れる。
当たり前だ。途中から舗装も中途半端になっている。タイヤが嵌まったら確実にこけるような凹みも多い。さらには湿った木々のせいでタイヤがスリップする。そして嫌な感じの斜度……。
どうにか気合いで登っていたが、足を付いてしまう。

これはダメだな……このまま無理して登ったら確実に落車する。無理せず歩こう。
坂で足を付いたのは六甲以来のような気がする。どうやら入院中に心が弱ってしまったらしい。否、単純に身体能力が落ちているだけである。
のろのろとキュアラピエールを押す。最後に少し乗って、どうにか頂上へ辿り着く。
いつかリベンジしようと心に決めたが、下る頃にはもう撤回していた。こんな道、二度と来たくない。
名も無き林道(名前くらいはあるのかもしれない)を下り、R733に合流。

左手を見ると、変電所がある。木々のなかに突然現れる変電所を見ると、どうにも気味が悪いという感情が先に起こる。おそらくメガロフォビアの一種だと思う。
しかし、目が離せない。怖い物見たさというやつである。

R733(柚原向日線)もまた、林道という感じの雰囲気。こちらは道がある程度舗装されていて、走りやすい。
登った先には逢坂峠の標識が。何度かSNSで目にしてはいたが、ここだったらしい。標識のそばにはどちらから登ってきたのか知らないが、自転車に乗った男性がひとり。
逢坂峠を越えて、さっさと長岡京市へ……と思いきや。

なんだこの激坂。
コンクリートに○のマークが。これは激坂オブ激坂の印じゃないか。笑いそうになるくらいの斜度に思わず写真を撮ってしまう。
慎重にブレーキをかけながらゆっくりと下る。二の腕が痛い。こういうとき、ディスクブレーキがうらやましいと感じる。
走井餅老舗←読み方を記載せよ(5点)
次の目的地まであと10kmもあるかどうかだったが、長岡京市で一度コンビニ休憩を取る。暑いので無理はしない。

来月以降の行き先などについて少し話したあと、再び出発。
目指すは八幡市の老舗茶屋。


走井餅老舗
ここ1年で2回ほど来ており、今回が3回目。いずれのお目当ても、かき氷。
この日の限定かき氷は梨。梨はすっきりした甘さだと思ったので、迷わずチョイス。

いざ、実食。
梨味のシロップがあっさりしているものかと思いきや、意外なほど存在感がある。なのにくどくない。これは良い感じの味だ。
そして、トッピングの梨がかき氷よりも冷たい。その分甘みはほとんど感じられないが、これはこれで面白い。
わりとボリュームがあり、店を出る頃にはぶるぶる震える始末。
いつまで残暑が続くかはわからないが、また来たいと思う。別に、夏じゃなくても構わない。甘い物は好きではないが、和菓子の類いはそれなりにいける。
早くも秋の気配か
予定していたプランをすべて終えて、帰路につく。御幸橋から淀川サイクリングロードに入り、あとは大阪へ向けてひたすらペダルを回すだけである。
この時点でまだ100km程度だったが、リハビリライドにしてはかなりキツかったらしく、脚が回らない。先を進む3人の背中をなんとか捉えながら、マイペースで走って行く。

途中、車止めで追いつき、再び皆で走行。
ふと、kabo氏が空を見上げる。
「もう夏も終わりですかねえ」

確かに、そんな感じの空だ。
入院前後はキュアラピエールに乗れなかった。その間に、梅雨はあけていた。
夏の始まりを感じることはなかったが、終わりの気配はサドルの上で感じられると有り難い。
結びに代えて
久しぶりのグループライドは、自らの体力の低下を痛感するものだった。
乗っていない期間はおよそ40日。その間にここまで落ちるのかと少しショックを受けている。
特に、登り。前ほど気持ちよく登れない。五月山は初見だったとはいえ、以前ならもっとすいすい登れたような気がする。
あと、ペダリングもしくは持久力。たぶん、一時的にペダルの回し方がおかしい。大腿四頭筋に変な力が入っているらしく、復路の淀川サイクリングロードでは脚を回すのが辛かった。単純に脚力の衰えもあると思うが。
とりあえず、自転車解禁と相成ったので、定期的にどこかへ走りに行くようにしたい。