小野市にて、散りゆく桜を追いかけるライド

自転車

前書き

前回、和歌山まで桜を見に出かけた。

今年はこのライドだけで十分に桜を堪能できた。春のこの時期は花散らしの雨が降りやすい。翌週にはもうその華やかな景色が見られることもないだろう。

そう思っていたのだが……意外にも雨が降ることはなかった。

満開の時期は過ぎ、少しずつ葉桜が見え始めていたものの、桜の花は健在だ。

とかく今年は桜に惹かれる。もしまだ見られるのならば、せめてもう1回この目に桜の景色を焼き付けておきたい。

善は急げと行き先を探し始める。しかし、探しながらも心の中では既に目的地が決まっていた。

兵庫県の小野市である。

小野市には加古川に沿って全長約4キロにも及ぶ「おの桜づつみ回廊」なるものがあるらしい。

おの桜めぐり | 小野市 観光ナビ

インターネットで調べていたところ、先週辺りからずっと気になっていたスポットだ。4キロという距離も自転車でまわるには最適。その圧巻の景色をぜひ堪能しておきたい。

目的地を小野市に決め、賛同者を募る。すると、ちょうどShin氏(@shinox_kg)が行けるとのこと。

彼は先週にもバイクでおの桜づつみ回廊を訪れていたようだ。ただ、その立地上、同地は自転車で行った方が隅々まで回れるだろうという印象を持ったようである。また、近くにも未回収のスポットがあるらしく、一緒に回ってくれることになった。

こうしてShin氏とふたり、今年最後になるであろう桜ライドに赴くことになった。

旧播州鉄道・別所駅跡

2022年4月9日 土曜日

午前6時過ぎに起床。眠い目をこすりながら準備を済ませて、出発。

午前8時過ぎには最寄り駅から輪行で明石駅へ。

本当は自走で明石駅まで向かうつもりだったのだが……、前日夜遅くまで仕事をしていたので、無理しないことにした。

午前9時前に明石駅に到着。輪行状態を解除していると、Shin氏が颯爽とやってきた。本日もよろしくお願いします。

最寄りのコンビニでさっと補給を済ませて、本日のルートを確認する。明石から小野まではごくごく小さなアップダウンがあるものの、基本的にはドが付くほどの平坦である。

往復で明石あるいは加古川まで戻っても50キロ程度。どう考えてもゆるポタになるだろう。桜を見るのに苦労する必要はない。

ルートを作成してくれたShin氏を先頭に出発した。

まずは明石川に沿って北上。市街地を抜けて、r377を進む。

のんびりと進みながら、途中で民家の並ぶ細い道に入る。

すると、早くも桜を発見した。

民家の裏にある畑と用水路に挟まれるようにして並ぶ桜。ここは満開のようだ。

思いがけぬ桜のお出迎え。のどかな景色をシャッターに収める。

細道を抜けてr513の入口。このタイプのヘキサ標識は初めて見た気がする。ただの看板である。

そのままr513、三木環状線と呼ばれる道をひたすら進み、Shin氏先導のままr20との交差点を左に曲がる。

Shin氏曰く、「ここに寄りたい場所があるんです」とのこと。誘導されて進んだ先には、廃線跡があった。

ここはかつて三木鉄道が走っていた場所らしい。

三木鉄道とは、2008年まで存続していた鉄道会社である。旧国鉄の三木線に対して三木市や兵庫市が出資していた、いわゆる第三セクター方式の路線だ。

第三セクター方式の鉄道会社では国内での営業距離が最も短かったそうな。その全長は約6.6km、三木駅から厄神駅を結んでいた。

ちょうど神戸電鉄粟生線三木駅のあたりと、JR加古川線三木駅を結ぶような位置関係にあったらしい(もっとも、三木鉄道の三木駅と神戸電鉄の三木駅は川を挟んで位置が異なる)。

マップで当時の路線図を確認してみたが、この区間では採算は取れなかっただろうな……という印象を受ける。路線バスに代替したのも止む無しだったのかもしれない。

とはいえ、三木鉄道の車両を見ると、その素朴ながらも赤白青を使ったカラフルなカラーリングに目を奪われる。きっと鉄道マニアにはたまらないものがあったのでは……などと妄想してみたり。

駅舎のような作りの施設は旧別所駅。今もなお、線路が残っている。せっかくなのでここで少し記念撮影に勤しむ。

撮影:Shin氏

なお、駅舎跡に立てられたのぼりは三木市内のサイクリングロードにちなんだものだ。

播磨には複数のサイクリングルートが設定されており、一番長いものでなんと200km近くになる。ここ旧別所駅跡も、サイクリングルートの一スポットに組み込まれているらしい。

桜を見に来たはずなのだが、思いがけぬ楽しい場所に巡り合えた。

名も無き桜を愛でる

駅舎跡から北の方を臨む。すると、美嚢川に沿って桜並木が見える。

Shin氏曰く、そこが先週訪れた際に未回収だったスポットらしい。小野市近郊に住む知り合いに聞いたところ、この川沿いの桜がたいそう見応えがあるのだそうな。

遠目に見ても、その彩りに期待が膨らむ。とりあえず美嚢川のほうへ向かうことにした。

移動すること数分。そこには、何の変哲も無い、名も無き桜並木があった。

だが、その唐突かつ素朴な雰囲気が良い。開けた場所に、桜そのものの姿が映える。

近所の人だろうか、ママチャリに水筒を持ってきている人が一人いるだけ。本当に穴場のスポットのようだ。

自転車を木の根元に傾け、シャッターを切る。

そのとき、ふわっと風が流れ、桜吹雪が舞うのが見えた。

桜の名所と言われる場所も良いけど、こういう名も無きスポットのほうが好きかも

俺もそうかもなあ。何せ近所の公園にひっそり咲く桜のほうが目を奪われるまである

こういうの、なんて言うのかしら。判官贔屓?

いや絶対違う……単純に素朴な景色が好きでいいんじゃないの

堤の場所を少し変えて、さらに桜並木を愛でる。

本当に良い景色だな……天気は良好。満開の時期は少し過ぎているが、十分だ。

酒持ってきての花見というよりも、こうして自転車で訪れるのがベストだと感じる。

名も無いスポットだが、機会があればまた訪れたい。そう思える場所だった。

ここはうどん県か?(すぎしん)

気がつけば既に11時前。我々の見立てでは、おの桜づつみ回廊を目当てに近所の飲食店はそれなりに混み合うはずだ。

できれば早めに昼食としたい。そう思い、桜のスポットから離れてさらに北へ。

美嚢川に沿ってr360を進み、加古川との合流地点でr18、さらにr349へ。

r23との交差点近くに、普段なら見過ごしてしまいそうなうどん屋があった。そこが今日の昼食場所である。

純手打ち讃岐うどん すぎしん (葉多/うどん)
★★★☆☆3.09 ■予算(夜):~¥999

11時半少し前ではあるが、既に店の前には車が数台。

中に入ると、奥のテーブル席も含めて数名の客が入っていた。店員さんがやってきて、順番にうどんをゆでており、茹であがりまで20分くらいかかるとのこと。そのくらいは全然待てるので、通されたカウンターへ着席する。

先にうどんの量を聞かれる。明石からここまでまったく補給をしておらず、Shin氏も私も即答で大盛りを注文。

Shin氏は天ざるうどん、私は鶏天ぶっかけをオーダーした。

事前の予告通り、待つこと約20分ほど。出てきたのがこちらである。

心なしかうどんが輝いて見えるのは、空腹のせいだけではあるまい。これは期待できそうだ。

天かすをまぶし、その上からつゆをぶっかけて、いざ実食。

う、美味い!

うどんのコシがすごすぎる。なんだこれは、ここは香川県か? あるいはうどん県なのか? こんなにコシの強いうどんを食べたのは去年のうどんライド以来のような気がする。

そのうどんに、天つゆのさっぱりした味が染み渡る。大盛りのうどんがするすると胃の中へ吸い込まれてゆく。

鶏天もまたサイズが大きく、外はサクサク、中はしっとりとした食感で何とも言えぬ旨さだ。単品で出しても申し分の無いレベルである。

正直あまり期待していなかったのだが……まさか小野市でこれほどの美味なるうどんに出会えるとは。

すぎしん。次も桜の季節に訪れたくなる満足であった。

桜堤にせつなさを抱いて

目当ての「おの桜づつみ回廊」はすぎしんのすぐ近くだ。店を出ると既に、微かだがその木々が見えている。

近くまでやってくると交通整理をしていた。車に気を付けながら堤の上まで登り、自転車を押してゆく。

そこには、堤にそって無数の桜が伸びていた。

青空の下、桜色の花弁が映える。その桜が、アーチ状に連なって伸びてゆく。

先週見た粉河の桜のトンネルとはまた違った印象を受ける。粉河のそれはもっと近しい距離で桜が密になっていた。一方こちらは桜並木の間隔は少し広いものの、スケールが大きい。どちらもそれぞれの良さがある。

それにしても、一体どこまで続いているのか。公式HPでは約4kmと謳っていたが。確かに、視界の果てまで続いているように見える。

ものすごく混んでいるわけではないものの、それなりに人は多いようだ。だが、自転車を押していても邪魔にはならない。

堤に沿って道路が走っているので、自転車で移動することも可能だ。流石にすべて歩いて行くわけにも行かないので、所々ショートカットしてゆく。

それでもショートカットするのが勿体なく思える光景だ。

堤の真ん中辺りまでやってくると、やたらと人の集まっている池があった。

ちょうどこの池に、堤の桜が反射して映り込むのが見えるようだ。ただ、この日は少し風が強く、水面が波打って映らない。

かろうじて少し映った1枚がこちら。無風だともっと綺麗に映るらしい。

撮影:Shin氏

ところでこの桜、オーナー制を設けているらしい。

地域住民に桜の木のオーナーとなってもらい、周辺の美化活動や植栽管理を通じて、市民が参画する地域作りに努めているようだ。

実際、どの木にもオーナーのコメントが入った銘板が掲げられている。見ると結婚や出産を機に設けられたらしきものが多い。

それにしても、たいそう見応えのある桜並木なのだが……。やはり散り始めであるせいか、一抹の不安、あるいは切ない感情を想起させる。

花は散り始めこそ美しい、などと言われる。その思考に迎合するわけではないが、確かに散る間際の花には何かしらの感情を呼び起こすものがある。

その感情は単純にネガティブなものとも割り切れまい。不安も切なさも表面的には後ろ向きなものに見えるかもしれないが、それを抱く当人がどのように受け止めているかは一言では言い表せない。

かく言う私も春は不安だと語りつつ、その実、不安を抱くことそのものをある意味で愛おしく思っているのかもしれない。

そんな自己矛盾に気づかされるので、春は嫌いなのである。

やがてスイーツの神様は降臨する(ミルカーズ)

ひとしきり桜を堪能し終えたところで、Shin氏の提案でスイーツを食すことにした。

聞けば、この近くに牧場があるらしい。牧場と言えばスイーツ、スイーツと言えば牧場らしいが、つまりはソフトクリームとかそういう類いのことだろう。

東条川を離れて名も無き道を進む。途中、R175を横断し、微かに南東のほうへ。

小さな坂を越えた先に、その牧場はあった。

共進牧場レストラン ミルカーズ (小野/ジンギスカン)
★★★☆☆3.43 ■予算(昼):~¥999

牧場が経営しているレストランのようだ。乳牛だけなのかと思いきや、普通にBBQセットとかステーキとかハンバーグとかもある。何でもありだな……。

Shin氏は過去にも来ているらしい。ここのおすすめはプリンの上にソフトクリームが乗っているプリンソフトだそうだ。

甘いものは苦手なのだが……、先達の意見には素直に従っておこう。というか横でつばめが目をキラキラさせているので、そのプリンソフトを注文する。

出てきたのがこちら。

どこからどうみてもプリンソフトである。早速、ソフトクリームを一口。

甘い!

あ゛ま゛い゛……

う~ん、これはKeiOSにはちょっと甘すぎるかしら

ソフトクリーム甘すぎるよ……。これはちと辛い。

つばめが美味しいという横でちびちびスプーンを進めていると、やがてプリンに行き着いた。まさか、プリンも甘すぎるんじゃなかろうな……。

意を決して、プリンを一口。

…………………………………………。

ど、どうなの?

これは美味い

あら、珍しい

先ほどのソフトクリームとは打って変わって、甘さがきりっと抑えられたプリンだ。いや、甘くはあるのだけど、どこまでもシックな感じというか、甘みがいやらしく後を引かない。

その秘訣はカラメルソースにあるようだ。香ばしい苦みと甘みが両立したカラメルソースが、プリンの付け合わせとして何とも言えぬ風味をもたらしている。

実はこのプリン、単品でも販売している。正直、ソフトクリームなしで食べたい。

撮影:Shin氏

ミルカーズのソフトプリン、プリンが甘くないまんぞくであった。

公園の桜も良きものだ

ミルカーズを出て、帰路につく。

r23を経由して再び加古川まで戻り、川を渡る。そのまま川沿いにr349を南へと下ってゆく。

天気が良いせいか、景色ものどかに見える。

暫くして川を離れ、r374へ。

今回唯一の登りといえる、高低差100mもない小さな峠を越えて、加古川市へ入る。

すると再び加古川が見えてきた。川がS字に蛇行しているのでそういうことになる。

名も無き公園の桜も見事に咲いていた。

その先はかつめしを食べに何度か通ったことのある道だった。見知った景色に少しほっこりする。

このまま加古川駅に向かっても良かったが、最後にもう一度桜を見ておこうということで、近くにある日岡山公園へ寄ってみることにした。

それなりに大きな公園のようだ。道の脇には「加古川市」の文字が入ったライトが設置されていた。

しだれ桜だろうか、ほぼ満開のようだ。

花見客でごった返しているが、酒類の販売は禁止らしい。それはそれで少し寂しい気もするが、飲まない人間からすればその方が良いのだろう。

頭から尾の先まで桜づくしのライドだった。コースを作成してくれたShin氏に心からの感謝を。

その後、加古川駅でShin氏と別れ、輪行で大阪へと戻っていった。

結びに代えて

なんとなく、今年の桜ライドはほぼ諦めかけていた。だが、蓋を開けてみれば二週連続でたいそう満足のいく花見ができたように思う。

余談だが、この数日後、近所の桜も一気に葉桜へと姿を変えた。思えばこの日のライドが今年の桜の見納めとなったわけだ。散りゆく前に桜を見送れたことに、不安混じりの満足感を抱く。

来年の春にも、また同じ気持ちを抱いているのだろうか。抱いているのだろう。

そしてやはり、不安を抱きつつも桜を見ることを止められない。

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