破損したロードバイクを修復する(その2 カーボン樹脂の補修)

前書き

前回、ロードバイクが破損した経緯を書いた。

その中で、どのようにしてロードバイクを修復するのかという手順について少し触れた。

カーボンフレームの修復手順は次のとおりである。

①カーボン樹脂を乗車可能なレベルにまで補修する。

②補修したカーボンフレームを塗装する。

数多のサイクリストと同じく、私も己の愛車に並々ならぬ愛着を注いでいる。そのため、自分で素人スキルを用いて修復するという手段は論外であった。

大切なフレームだからこそ、きちんと直したい。いや治したい。そう思ったとき、自ずから①も②もそれを生業とする専門業者にお願いすることにした。

今回は①のカーボン樹脂補修について、業者の選定も含め、フレーム補修の具体的な過程や実際にかかった金額などを記していこうと思う。

カーボン樹脂の補修について

業者の選定

カーボンフレームの補修を行う業者はいくつかある。そのなかでも多くのサイクリストに知られているのは、おそらくカーボンドライジャパンであろう。

カーボン補修ならCDJ カーボンドライジャパン

かくいう自身も、フレームが破損した直後に脳裏をよぎったのはカーボンドライジャパンだった。

あとは大阪府の河内長野市にある工房赤松だろうか。

工房赤松
オリジナルバイシクルフレームビルダー

オリジナルの自転車やパーツを製作して30年以上(2021年時点)になる、老舗の自転車ショップだ。破損したカーボンフレームの補修も行っているようで、その腕前にプロアマ問わず多くのサイクリストが信頼を寄せているらしい。

選択肢が二つ並んだところで、腕組みしながら考える。通常なら双方から見積もりをとって決めるところだが……。

そう思っていると、普段からお世話になっているK&MCYCLE(現Backyard)の店長から、第三の選択肢が示された。

ザイマック / 高品質なCFRP製品の試作・修理・パーツ販売サービス
大手航空機メーカーに採用された最先端のカーボン加工技術を使用し、ロードバイクやドローンの修理、オリジナルパーツ製造・販売などCFRPに関わることをワンストップで提供しております。

ザイマック、聞いたことのない業者だった。

ホームページの説明をみると、国内外の航空宇宙産業との取引実績が多く、使用している設備はアメリカの超有名航空会社ボーイングの認定を受けているとのこと。

その補修技術は、今までに無い先端的なものらしい。

従来のカーボン補修は修理箇所にカーボンクロスを巻いて焼き付ける手法が一般的だそうだが、これだと補修箇所が盛り上がり、段差が目立ってしまうと聞く。

一方、ザイマックは切れてしまったカーボン繊維を1枚ずつ剥がしたあとに積層して修理する。

具体的にはドライカーボン製法という手法を用いるそうだ。プリプレグと呼ばれる厚さ0.2ミリの炭素繊維シートを重ね、高温・高圧で加工することで、従来の補修技術よりも頑丈で修理痕の目立たない、高品質なフレーム修理を行うことが可能らしい。

説明を見る限りでは、カーボン樹脂そのものを補修するほうが強度的にも安心できるような気がした。もちろん私はカーボン補修の専門家でも何でも無い素人なので、そのあたりはあくまで印象の域を出ない。

しかし、なによりも痕が目立たないというのが大きなセールスポイントだと感じる。

でもお高いんでしょう? 俺は詳しいんだ……と思ったら、意外というべきか。部位あたりの金額はカーボンドライジャパンより幾分安価である。

というか、このホームページの説明はカーボンドライジャパンへの対抗心が見え隠れしているように感じる。それだけ技術力に自信があることの表れか。

1点だけ気がかりなのは、ザイマックが自転車関係の修理をはじめてまだ歴史が浅く、実際に補修してもらったという人の感想が見当たらないということ。SNS等でサーチしてみるが、それらしき感想等は出てこなかった。

評価や評判は必ずしも絶対ではないが、発注先の選定においては重要な指針のひとつである。ある程度安心したうえで依頼したかったが、仕方がない。

愛車を任せる上での微かな不安とそれなりの期待を込めて、自ら人柱になることを決めた。

(なお、この記事は人柱になってザイマックによる補修結果が満足のいくものであったと評価する(あるいは読んだ方に知ってもらう)ものでもある)

見積りと発送

見積りや発注の調整等はK&MCYCLEが間に入っていただけるとのこと。ありがたく頼らせてもらうことにした。

写真でおおよその見積りを行ってくれるそうなので、ショップにフレームを持ち込んで破損部分を撮影。その写真をもとにザイマックへ見積りを依頼してもらった。

依頼から2日後。K&MCYCLEを通じてザイマックから回答があった。

少し時間がかかるだろうか……と思っていたのだが、予想よりも随分レスポンスが早い。返信が早いのはそれだけで好感が持てる。

当初の見積額はトップチューブとシートステーで10万円前後。これに別途送料がかかるとのこと。価格的には妥当なところだと感じた。

なお、実際にフレームをザイマックへ送り再確認してもらった結果、シートステーは1箇所ではなく2箇所の破損が認められたため、最終的な見積りは税込みで16万円弱となった。

補修後はカーボン樹脂がむき出しの状態になっているので、紫外線や水分から保護して強度を保つためにも、早く塗装をしてほしいとのことである(塗装せずにフレームを使用した場合は保証の対象外)。

実はこのとき、補修後の塗装をどうするかをまだ決めかねていた。元のデザインのまま塗り直してもらうか、あるいはカスタムペイントによる全く新しいデザインとするか。

とはいえ、気持ちはほぼカスタムペイントに決まっていた。K&MCYCLEが紹介するアトリエキノピオの工房を訪れたときに、この工房によるデザインなら自身の愛車も最高の形でよみがえるのではないかと確信していたからだ。

アトリエキノピオを訪問したときの様子はこの記事で少し触れている。

フレーム補修後にすぐ塗装しようとするのであれば、当然ながら先にペイントのデザインを決定しておかなくてはならない。

というわけで、ザイマックへの発注はいったん保留し、先にアトリエピノキオと相談してカスタムペイントのデザインを決めることになった。

その後、乗鞍での落車による怪我もあり諸々大変な状況だったが、8月中旬にはデザインの最終案が決定。

いつでも塗装できる状態になったので、正式にフレーム補修をザイマックへ発注してもらう。なお、フレームの梱包や発送等の手続きもすべてK&MCYCLEへお願いした。何から何まで本当にありがとうございます。

発送後にザイマックから連絡が入り、フレームの破損状況を確認した上での最終的な見積額が提示された。納期は4~5週間とのこと。

なお、事前に問い合わせたところ、補修した箇所について塗装前の写真を公開するのは技術流出等のリスクから控えて欲しいとのだった。もちろんその旨承知し、作業を進めてもらうことにした。

補修の結果

発送から約5週間が経過し、無事に返送されてきた。

写真公開は不可であるが、どのような補修状況なのかを見ておきたかった。そのため、アトリエピノキオへ送ってもらう前に一度K&MCYCLEへフレームを戻し、そこで確認させてもらうことにした。

店長とふたりで補修状況を確認する。見たところ不自然な盛り上がり等はなく、きれいに補修してもらえたようだ。

まずはフレームそのものの補修が完了したことに安堵する。破損から約5カ月、ひとつの峠をクリアしたという気分だ。

しかし、補修した箇所がカーボンむき出しの状態というのはなんとも痛々しい感じがするものである。早く塗装してあげたいという気持ちが強い。

無事フレームが戻ってきたところで、アトリエピノキオへの発送をお願いした。次に対面するときには完全復活した姿を見せて欲しい。

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