前書き
ラーメン食べたい。食べさせなければ死ぬ
唐突に捨て身で欲望を語るのやめような、心臓に悪いから
だって、こうでもしないと走る気にならないでしょう、あなた。前回のライドからもう3週間も経過しているのに
言われてみれば、もうそんなに経つのか
しかもその間に新年迎えちゃったし。結局、洗車してもらってからまだ一度も走りに行けてないし
まだギリギリ1月……巷に流行る新年会ライドというふものを、KeiOSもしてみむとてするなり
なぜ急に歴史的仮名遣いに……まあいいわ、新年会ライドに行きましょう。ついでにラーメンも食べに行きましょう。でなければ死ぬ
だから死ぬ死ぬ詐欺やめなさい
意識低い系サイクリストが取る行動
2022年1月15日 土曜日
枕元から手を伸ばし、6時前に鳴り響くアラームを消す。瞬間、全てを察した。
夕べの酒によるスリップダメージがまだ残っている気がする。微妙に頭が重い。
さっさと準備しなければならないのに、体が言うことをきかない。これは少し様子見したほうが良さそうだ。そう思いベッドの上でグダグダしていると、時間はどんどん過ぎてゆく。
走りに行けるかどうか。一応、イエスである。コンディションは従前とは言いがたいが、まあどうにかなるだろう。
本日の新年会ライドは私を含めて4名が参加。なんとか準備を終えたところで、同行者に少し遅れる旨とお詫びを伝えた。
急いで出発する。自宅から集合場所までの距離は約21km。自走すれば1時間と少しでたどり着けるだろう。
しかし、走り始めてすぐに思い直す。集合場所までは市街地を抜けてゆくため、信号や交通量によってはそれ以上かかることもあり得る。それなら、集合場所の最寄り駅まで輪行したほうが確実だろう。
別に自走にこだわる必要はない。私のような意識低い系サイクリストであればむしろ余裕をもって輪行するまである。
などと結論づけて、自宅の最寄り駅から輪行するのであった。
……べ、別にめんどくせーとか思って輪行したわけじゃないんだからね!
トラトラトラ→「ワレ奇襲ニ成功セリ」
JR柏原駅に到着し、そそくさと輪行を解除。
集合時間から20分程度の遅れとなってしまった。今回の同行者に、あらためて心のなかでお詫びする。
出発し、さっそく葡萄坂に向かう。
関西ヒルクライム峠資料室では難易度Cの葡萄坂。大阪で同じ難易度の坂といえば清滝峠だが、どう考えてもこちらのほうがきついと感じる。
中間地点あたりまでの勾配は10%前後で推移する。十三峠ライト版といったような雰囲気だ。
登り初めて、すぐにそのきつさを実感する。これは体調のせいだけではあるまい。無理はせず、マイペースで登ることにした。
頂上の変電所前で停まることなく、さらにペダルを回していると……先行していた同行者達を発見。意外と早くに追いつくことができた。
今回の同行者はこちら。
おもちっこ氏(@noyuyuya)
がむが氏(@AlienA0V0)
さかもと氏(@skmt_fact)
あらためてお詫びを申し上げつつ合流。パーティは4人になった!
そのまま葡萄坂の先にある信貴山のどか村へ。がむが氏のウイニングランに一同シャッターを切らずにはいられない。
通常ならここも単なる通過点のひとつに過ぎないのだが、今回は信貴山のとある寺を目的地のひとつとしていた。
その寺とは、朝護孫子寺である。
七福神が1人、毘沙門天王を祀る寺だ。
朝護孫子寺の説明は以前のライドでも触れている。
平安時代の醍醐天皇が病気になった際、この寺を整備した命蓮聖人が勅命を受けて毘沙門天王に快癒を祈願したところ、たちどころに病気が癒えたという。それがきっかけで寺は朝廟安穏・守護国土・子孫長久の祈願所として、「朝護孫子寺」の名前を付けられたのだそうだ。
……というのが本来の朝護孫子寺の説明であるが、おそらく寺を訪れた人は寅のイメージしか残るまい。そのくらいに、「寅推し」の寺なのである。
ちなみに何故寅推しなのかというと、かの聖徳太子が信貴山において毘沙門天王の存在を感じて会得したのが(ニュータイプか)、ちょうど寅の年、寅の日、寅の刻だったことに起因する。
そのことから寅の縁日に毘沙門天王をお参りすると、聖徳太子にあやかったご利益が授かれるとして信仰されてきたそうだ。
本ライドの実施年である2022年はまさに寅年。12年に一度の機会ということもあってか、いつもよりも寺周りの人が多い。失礼ながら、普段は閑散とした印象しかないのだが……。
近くにロードバイクを停めて境内へ。
どこを見ても寅、寅、寅である。
タイガーって叫んだら竹刀持ったお姉ちゃんが飛び出てくるかもしれぬ。
トラも猫科だからなあ。ある意味で猫寺ともいえるのか?
またそんなことを言って……。前にも言ったけど、トラが猫なわけないじゃない
……むう、どうすれば分かってもらえるのか
逆に聞くけど、ホワイトチョコレートがチョコレートだと聞いて、あなた信じる?
は? ホワイトチョコレートがチョコレートなわけないだろ。あんなクッソ不味いモノがチョコレートと同列なわけあるか
ここまで私の乗り手が阿呆だと流石に悲しくなってくるわ。KeiOS、頭に特大ブーメラン刺さってるわよ
何……だと……
ちなみにホワイトチョコレートがチョコレートの一種であるのは間違いない。ホワイトチョコレートには一般的なミルクチョコレートなどに含まれるカカオマスが使用されておらず、その代わりにカカオ豆の主成分であるココアバターが使われている。そのせいか、普通のチョコレートよりも甘さが前面に出ている。
どこをどう切り取っても不味いので同じチョコレートだと認めたくないのだが……。なお、甘い物は苦手だがチョコレートは私的にまだマシなほうである。できれば甘さ控えめのビターチョコレートを所望したいところだが。
それにしても広いな、この寺は。
しかも意外に高低差があり、石段を登ったり降りたりする必要がある。SPD-SLシューズには少し辛いところだ。
一通り回ったところで、今年初のおみくじを引くことにした。
結果は……半吉? 初めて引いたぞ、半吉。
一応、大吉、吉の次に良い運勢らしく、末吉よりも上らしい。
冒頭に、「酒にてあやまつことあるべし」とあり、既に予言が的中していることに笑ってしまう。夕べの自分じゃないか。
総じて、あまり悪いことは書かれていない。そんなものだと思いながらおみくじを括り付ける。
最後に、今年一年も事故無く無事にライドできますようにと祈願して、寺を後にした。
ところで、私は神頼みはしない方であるが、信仰そのものは尊いものと思っている。わざわざ祈願したのも、こういうのはポーズが大事であり、あらためて安全第一を自身に戒める、というスタンスである。
究極の一杯か(麺屋 一徳)
信貴山を奈良側へ下りる。急な坂道にブレーキを握る手が痛い。
安全第一。先ほど祈願した内容がさっそく思い出される。
R168との交差点から、いかるがパークウェイと呼ばれる道へ。入口に自転車通行禁止の看板があるが、同じく入口にある側道から普通に入ることができる。
最近出来た道のようだ。短い区間だが走りやすい。
なぜか後方ではおもち氏と坂本氏が「がもう!」「美味い!」と叫んでいる。去年行ったうどんライドのことを思い出しているらしい。恥ずかしいのでやめてください。
住宅街を抜けて、法隆寺の裏側から富雄川へ。そして大和川沿いの道に出る。
信号もなく、開けた場所の道で走りやすい。
佐保川との合流地点でr109に入り、まほろば健康パークの側を通り過ぎると天理市に入った。
そのままR25に合流。R169との交差点を少し北に入ったところに、お目当ての店があった。
麺屋 一徳
坂本氏が見つけてきた店である。天理のラーメンといえば彩華や天スタに代表されるスタミナラーメンが主流だが、ここでは塩と醤油が提供されるらしい。
オーソドックスなメニューのみで高い評価を得ているらしく、ここなら愛車も満足できるのではないか。その味や如何に。
店内に入り、着席。あらかじめ決めていた塩ラーメンをチャーシュートッピングで注文。
メニューを見ると、〆飯なるものが書いてある。
ライスではなく〆飯? ライスも別にあるようだが、何か違いがあるのだろうか。気になったので〆飯も注文する。
待つこと暫く。出てきたのがこちら。
何とも綺麗なビジュアルのラーメンである。澄んだスープから漂う香りが食欲をそそる。小松菜の色合いも二重丸だ。
さっそく、一口。
これは美味い!
コシのある少し細めの麺が、スープの程よい塩分に絡んでするすると吸い込まれてゆく。
そのスープ、あっさりしているのに存在感がある。むしろ、「あっさりしている」ということを強調するかのような旨味を突きつけてくる。
レアチャーシューも小松菜も、このスープと非常に良く合っている。スープを起点に、麺、チャーシュー、野菜が強烈な化学結合を生み出しているようだ。
オーソドックな味。なのに、非常にレベルが高い。これは久しぶりに「当たり」のラーメンだ。
完食する頃を見計らって、〆飯が出てきた。
ライスにネギ、ほぐした鶏肉がトッピング。器の縁に添えられているのはゆず胡椒か。
脳内で「ヒャッハー! ここでジャンキー……じゃなく爽やかな〆が来たぜえ」と叫びながら、ためらいなく〆飯をダイブ。
気を取り直して、〆飯を一口。
これは……! スープが完璧な触媒となり、白ごはんとネギと鶏肉を再び結合させてくる。しかもゆず胡椒との相性が抜群だ。こんなの美味すぎるじゃないか!
ひたすらレンゲを口に運ぶマシーンと化す。気がつけばスープごと完飲してしまっていた。
〆飯とはいえ、スープを完飲することなどここ数年なかったのに……。
奈良のラーメン、恐るべし。この地にはまだまだ自分の知らない一杯があるようだ。
麺屋一徳。最高のまんぞくであった。
宗教施設を眺めるのは楽しい
せっかく天理市まで来たので、天理教関係の建物を見て回ることにした。
私は無神論者だが表面的にはブディストである。そんな私でも宗教関係の建造物や作品はそれなりに面白いと感じる。
言わずもがな、天理市は宗教都市であり、天理教の総本山だ。市内中心部では教会本部をはじめ、天理教関係の建物を数多く目にすることができる。
また、全国の信者を迎えるための詰め所が並び、外側には「ようこそおかえり」の文字が書かれている。まさに天理教が主役の街なのである。
なお、天理市の住民すべてが天理教というわけではなく、昭和60年代の人口統計では、信者は全市民の4分の1程度であったとみられている。
天理教としては市長ならびに市議会議員に候補者を立てない方針を貫いているらしく、いわゆる政教分離が貫かれているようだ。
とはいえ、天理市と天理教との関係は深い。
天理教の建物が多い一方で、宗教関係施設は非課税であり固定資産税が課されないため、税収が不足するらしい。それを補う形で天理教は市に対して多額の寄付金を納めており、市としても無視できない額となっている。その金額・使途に関しても市と教団との間で協議して決めているようだ。
天理教の教会本部は、先ほど訪れた麺屋一徳のすぐ近くだ。
敷地に踏み込むと、大きな本殿が見えた。なかなかに趣のある建物だ。
敷地内は綺麗に整備されており、近所の住民や、あるいは天理教の信者らしき人々がまばらに行き交っている。宗教と聞くと構えたイメージを持ってしまいがちだが、そのスケールに反して日常に深く溶け込んだ様子である。
否、むしろ宗教が日常に溶け込んでいるのは当然のことか。
本殿を眺めながら、当の我々はなぜか自転車を持ち上げるチャレンジに勤しみはじめた。人はスケールの大きなものに直面すると自転車を持ち上げたくなるらしい。
おもち氏の決めポーズである片手挙げ。
片手上げを目下練習中の坂本氏。
サイクリスト1年生のがむが氏もつられて自転車を持ち上げる。
自転車を持ち上げる趣味はないのだが、ふとおもち氏の片手挙げが気になり、自分でもチャレンジしてみる。
……意外とできるものだ。ポイントは腕力ではなく、腕の部分でサドルを通じて車体を支えることである。
いつまで持ち上げているのよ(ビシッ
あとで愛車からヘルメットを小突かれたのは内緒だ。
本殿から南に向かって、教庁のほうへ。
こちらも大きな建物だ。独特の建築様式は天理市内のあちこちで見ることができる。
教庁はすぐ南側に広がる天理大学の建物でもあり、さらには天理小学校も併設しているようだ。敷地内の1カ所にいるだけでも、その規模の大きさが伺い知れる。
こういう単一の組織による広大な敷地、ないし巨大学園はフィクションの世界のようでもあり、なかなかに楽しい。
天理教本部、機会があればまた訪れてみよう。
スイーツが食べられない、ならばスイーツを食べれば良い(?)
最後の目的地を目指して、天理市を出発する。
r51の細い道に入り、ひたすら北上してゆく。
大和郡山市に入り、r144からR24へ。交通量が多いので注意して走る。
1月とは思えない程に暖かい。電光掲示板は現在の気温を9度と伝えている。
R24を早々に離脱し、r9に合流。途中、麺屋BIBIRI、そしてしゃばとんの店舗を発見。
こちらも過去にライドで訪れた場所だ。
平城京跡を右手に眺めながら突き当たりを左折すると、近鉄大和西大寺駅が見えてきた。
そのすぐ近くに、坂本氏目当てのスイーツがあった。
菓子35山(カシサンジュウゴヤマ)
どうやらマフィンが有名なお店のようだが……。
外から店内の様子を伺う。席数少なく、しかも満席のようだ。なかなかの人気店のようだが、これはすぐに入れるのだろうか。
店内に入り、今から4人行けるか聞いてみると、申し訳なさそうな様子で時間がかかる旨を伝えられた。むう、これは仕方あるまい。
時刻は15時過ぎ。この日は20時からサイクリスト仲間による新年会を予定していたので、早めに帰らなくてはならない。自走で帰るなら今からすぐに出る必要がある。一方、他のスイーツを探すなら、輪行は必須である。
この時間はいわゆるティータイム、どこのスイーツショップも状況は似たようなものだろう。坂本氏がいくつか調べてみてくれていたが、代替案が思い浮かばない。
やむなく、今回は諦めて帰ることにした。スイーツは逃げないので、また今度来るとしよう。
となれば自走で帰ることになる……などとは欠片も考えていない。何せ、私は意識低い系サイクリストだからな。当然帰りは輪行だ。
私の意志が伝播したのか、一同輪行で帰ることになった。ククク……私の意識の低さが見事に伝播しているようだな。
駅前でめいめい輪行作業に勤しんでいると、坂本氏が何やらポチポチと調べている。
聞けば、駅前のビル内にプリンのお店が入っているらしい。先に輪行作業を終えたおもち氏と偵察に行ってみると、確かにそのお店がある。しかもテナント間の通路が広いので、輪行袋を持ち込みやすそうだ。
流石は坂本氏、スイーツを諦めない心が引き寄せた結果である。
そのお店はこちら。
まほろば大仏プリン本舗 西大寺店
本店のほうは以前に行ったことがある。奈良市を中心に複数の店舗を展開しているようだ。
とりあえず、ショコラ味を注文する。店内に輪行袋を持ち込むのは流石に難しそうなので、通路で食べることにした。
さっそく一口。
チョコレート味のプリンというのは妙な味である。しかし悪くない。
甘い物は苦手だが、チョコレート味は好きだ。先述の通り、ホワイトチョコレートはダメなのだが。
坂本氏とおもち氏はティラミス味のソフトクリームを注文。なかなか面白いビジュアルだ。
一方のがむが氏も同じものを購入していたが、見れば持ち帰り用として巨大なビンに入ったプリンを別途購入していた。ええ……あなたもスイーツ好きなのね。
最後の最後でスイーツ分をギリギリ確保。結果的に十分合格点のライドとなった。
結びに代えて
輪行により帰宅。風呂に入って一息つけたが、新年会まで意外と時間がない。
だが、決して余裕がないわけでもない。意識低い系としての選択は結果として功を奏したようだ。
本日の走行距離はたったの49km。往路を自走したメンバーはもう少し走っているはずだが、それにしても短い。
ただ、その割にはとても楽しいライドだったように思う。それもこれも目的地のひとつひとつが面白く、満足のいくものだったからだろう。
ライドの満足感は距離に比例するわけではないという、至極当然のことをあらためて認識した次第である。
ちなみに新年会の会場はこちら。
curry bar nidomi
絶品のカレー鍋を囲んで、サイクリングその他の四方山話に花を咲かせる。楽しい時間を過ごさせてもらった。
今年も安全第一で、たくさんのライドに繰り出していきたい。そう思いながら夜は更けていった。