【高知・徳島】大人の遠足、四国カルストと祖谷渓を堪能するライド【1日目】

自転車

前書き

そのライド計画が持ち上がったのは、何かきっかけだったか。

確か、自転車仲間のkabo氏が2019年7月に他の人たちと四国カルストに行ったのが、はじまりだったように思う。しかし、当日は天候に恵まれず、景色があまり良くなかったため、ぜひリベンジしたい……そのような話ではなかったか。

なお、その日のライドのことは、同じく自転車繋がりのDARUMA氏によるブログ記事から確認できる。

大阪から高知へ弾丸遠征ライド!絶景の「四国カルスト」を走る夏の山岳ライドへ!! | Groove in Life
はじめに 車載で乗鞍へ行こう! かなり前からkazuさんと相談をして、 日程を確保して、計画を練りまくってまし

その後、何となく日取りを10月上旬に定め、ぼんやりと予定を組んでいた。しかし、スケジュールの都合上、kabo氏の参加が難しくなり、「今回は見送りかな」などと思っていた。

しかし、出発日が近づくにつれ、残ったメンバーであっという間に予定が組み上がり、当日を迎えることとなった次第である。

人間、追い詰められると何でもできるものなのだなあ……(1日目の夕食と2日目のルート案くらいしか考えていない人)。

かくして、四国カルストと祖谷渓を堪能するライドが開始された。

(なお、この日の様子は373氏のブログでも公開されている)

【遠征】秋の四国を堪能する旅【その1】
四国へ旅行に行ってきたときの記録です。

丑三つ時の出発

今回のスケジュールは次のとおりである。

10月5日(土) 深夜に車で移動→朝から四国カルストライド→高知市で宿泊
10月6日(日) 徳島へ移動→祖谷渓をポタリング→車で帰宅

実は、この週は台風18号の影響で高知に大雨が降っていた。3日(木)には高知市で河川が氾濫し、街の一部は冠水状態にあったらしい。

そんなこともあって、ライドの開催が少し危ぶまれたが、4日(金)からは天気も好転、無事決行することができた。

台風一過という言葉にもあるように、台風のあとは晴れ晴れとした空が広がっていることが多い。かなり良い景色が見られるのではないかと少し期待もしていた。

5日(土)は午前2時に出発ということで、前日の午後8時頃から仮眠を取ろうと布団に入る。

しかし、なかなか寝付けない。遠足前に興奮するような年頃でもないはずだが、あまりに早い時間では眠気がやってこないらしい。こういうとき、気を失う薬でもあれば良いのにと思う。

仕方ないので、目を閉じてぼんやりと考え事をする。一応、目を閉じて横になるだけでも、多少なりとも身体は休められるらしい。

結局、1時間くらいは寝ることができた。起床後、荷物をまとめて自転車を走らせ、集合場所へ向かう。

皆が集まりやすい場所ということで、K&MCYCLE南船場店の前に集まることとなった。集合場所には既に他の参加者が集まっている。

今回の参加者はおもちっこ氏、Shin氏、373氏、そして私の4人である。

到着後、さっそく自転車をハイエースの後部に積み込む。

(写真:373氏)

ハイエースの規模では、自転車4台を並べて入れると微妙に隙間ができてしまう(5台だとちょうど良い)。そのため、各自メンテナンススタンドで自転車を固定し、車体を紐で結ぶこととした。また、車体同士が干渉する部分には段ボールを挟み込んでおく。これで、車体に傷が付くことは無かった。

この車は「屋台号」というらしい。

(写真:373氏)

無事に自転車を積み終え、さっそく出発。

私は運転免許を持っていないので、おもちっこ氏とShin氏の運転が頼りだ。とりあえず私にできることは、運転手が眠くならないように話題を提供し続けることくらいである。

(写真:373氏)

出発して約1時間。明石海峡大橋を渡り、淡路島に入る。

一旦、淡路サービスエリアで休憩。

淡路サービスエリアは近畿圏でも最大級の規模を誇るらしい。敷地内には観覧車もあり、さながらテーマパークのようである。

ただ、さすがにこの時間では売店くらいしか開いていなかった。

私は車を持たない家で育ったので、車での旅行はいつも新鮮な気分になる。特に、サービスエリアに入ると年甲斐もなくわくわくしてしまう。

予定通りなら、翌日の夜には再びこのサービスエリアに戻ってくることとなる。必ずみんなで生きて帰ろう……などという誓いは立てず、出発した。

普段は自転車でしか来ないせいか、淡路島にこのような巨大な高速道路が走っているのを見ると、妙な気分になる。近畿地方から四国へアクセスするなら、淡路島は重要なルートなのだ。

しばらくして、大鳴門橋から徳島に入る。大鳴門橋といえば、かねてよりサイクリングロードの敷設構想が上がっていた橋だ。

2019年9月に兵庫県は、橋の下部に専用道を新設した場合、橋の強度や耐風安定性にも問題はなく、自転車が安全に通行できるという試験結果を発表した。もし大鳴門橋のサイクリングロードが実現すれば、淡路島から自転車に乗ったまま四国へアクセスできるようになる。

自転車で四国へアクセスする場合、今回のように車を使うか、もしくは船を使うのが一般的だ(広島からしまなみ海道を使うという手段もあるが)。選択肢が増えれば、その分だけ遊びの幅も広がるだろう。

徳島に入り、急に高速道路が片道1車線になる。狭い。こんなに狭い高速道路があるのかと呟くと、Shin氏曰く、田舎の高速道路はこんなものだという。なんかこう、コースアウトしたら即爆死するようなレースゲームを体験しているような気分になる。

途中、吉野川サービスエリアで休憩を挟み、再び出発。

さすがに眠気がやってきたが、運転手のおもちっこ氏をひとりにするのは気が引けたので、後ろから思いつくままに話題を振っていく。それでも夜明け前には限界が訪れ、少し意識を失った。

大都会・高知へ(大都会から響き渡る小並感)

目を覚ますと、既に高知市内に入っていた。

(写真:373氏)

意外と大きな街である(失礼)。

道路の案内標識を見ると、中央にアルファベットが入っている。

これは交差点名や地名にちなんだアルファベット1文字を設置し、地理に不安のある人に対してわかりやすく道案内をしようという取り組みらしい。

301 Moved Permanently

地理に不安も何も、地名も交差点も知らない我々にはまったく意味がない。

寝起きの頭でぼーっと外を眺めていると、「たっすいがは、いかん!」の文字。

うん、ここは日本か?(その日の夜にも同じ広告を発見する)

調べたところ、「たっすい」とは「弱い」もしくは「薄い」という意味らしい。つまり、薄いビールはダメという意味のようだ。

なお、これはキリンビールが高知県限定で出したキャッチフレーズらしい。ちなみに高知県は1人当たりのビール消費量が非常に多く、2017年には東京に次いで2位。ビール業界にとっては重要な市場なのだろう。

コンビニで朝食や補給食を買い込んだあと、最初の目的地である道の駅布施ヶ坂に到着する。

この道の駅を出発地点として、四国カルストを含む全長約100kmのコースを走る予定だ。事前にShin氏が引いてくれたルートを見ると、獲得標高がかなりえげつない気がするのだが……。

めいめい自転車の準備をしながら、ウインドブレーカーはいらん、指ぬきグローブよりも冬用のグローブだなどと、不毛な情報戦が繰り広げられる。

だがしかし、そのような情報戦に惑わされる私ではない。ウインドブレーカーは必須。この気温なら指ぬきグローブで十分だ。

Shin氏のKOGA A-LIMITED
373氏のRockbikes ENVY
おもちっこ氏のLapierre XELIUS SL500
KeiOSのキュアラピエールLapierre XELIUS SL ULTIMATE

ちょうどこの日の前日は、日本海側へ逸れていった台風の影響で四国全域に大雨が降っていた。それから一転、嘘のような快晴である。

透き通るような青い空。良い一日になりそうだと思いつつ、出発する。

風の里公園で待ち構える量産型EVA(ただし三菱製)

最初の目的地は風の里公園。標高約1000mの尾根沿いに、合計20基もの風力発電が並ぶスポットだという。

登りは辛い。しかし、風力発電と聞いてモチベーションが一気にアップする。

以前に和歌山県有田市にある千葉山の頂上でも風力発電を見たことがあるが、あれを眺めていると何とも言えない感覚に陥る。

Shin氏の先導で、R197に併走するようにして続くR377をひたすら「下っていく」。

冷静沈着なShinさん、まさかのご乱心? そんなに下ったら獲得標高上がってしまいます……。

理由はごく単純で、風の里公園へ向かうルートへ入るには下るしかないのである。

早速、段々状の面白い風景が飛び込んでくる。

R377からR197に合流し、さらに大谷農道と呼ばれる道に入る。ここからが本当の登りだ。

標識には農道とあったが、ほとんど林道の気配である。楽しげに登る4人。

どうやらレンズと保護レンズの間にゴミが入ったらしく、私がとった写真の真ん中にはこの後も黒い影が邪魔をすることになる。せっかくの景色だったのに、惜しいことをした。

ふと顔を上げると、真っ青な空を背景に、白い風力発電が並んでいるのが見える。俄然テンションが上がる。

この農道、ただの農道ではない。ほとんどアトラクションである。

道には水が流れ、大きな石が転がっている。さらには修繕する予算がないのか、もしくはその必要もないくらいに利用者が少ないのか、凸凹が多い。

気を抜いた瞬間に落車待ったなし。生か死か、デッドもしくはアライブの超豪華なアトラクション。いや、そんなの望んではいない。

しかも10月だというのに蝉が鳴いているのが聞こえる。さすが高知、さすが四国。近畿では想像も付かない秘境である(反省していない)。

それにしても、スタート直後から標高1000m以上ものアップはなかなかに辛い。身体が温まっていない状態で、無理な動きをさせられている。

途中でおもちっこ氏が飛び出していったのでなんとか追いつこうとしたが、私は根性がミジンコ以下なのですぐに諦める。このあと四国カルストも登らないといかんのやで……。

マイペースで頂上まで登り切る。

我々を迎えてくれたのは絶景と、巨大な風力発電。

遠くの方まで風力発電がずらっと並んでいる様子は、圧巻のひと言。透き通るような青の空に、白い発電機が映える。

その様子はさながら『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』に登場する量産型EVAである。

脳内に響き渡る『魂のルフラン』。突然そのプロペラが飛んできても、私は驚かないだろう。

すぐ側にあったこの望遠鏡は無料である。こんなところで有料にしても、回収コストのほうが高くつくだろう。

休憩もそこそこに、奥のほうへ進んでいく。いくつもの風力発電を間近で眺めながら尾根伝いを走るのは、なかなか楽しい。

しばらくして、風の広場と呼ばれる場所に到着。

ふと視界に入ってくる、白い山。あれは雪……なわけがない。

山の名前は鳥形山。鳥が翼を広げたような形をしていたことから、そのように呼ばれているらしい。

白い部分は石灰石を掘削した跡。鳥形山は、日本屈指の石灰石鉱山でもある。日鉄鉱業が採掘を進めており、石灰石の露天掘りとしては日本一の採掘量を誇るそうな。ただ、そのおかげで鳥形山の標高は約200mも低くなってしまった。

見れば見るほど、不思議な景色である。自然破壊といえばそうなのかもしれないが……。

鳥形山をバックに、風の広場で記念撮影。

広場には三菱製のプロペラが落ちている。たぶん、サードインパクトの拍子に千切れたんだろう。

四国カルスト前に不思議な光景を堪能した我々だが、メインディッシュはこれからである。

少し心配になるほどに、再び下る。R378を経てR439に合流。

四国カルストの標識があった。トンネルを抜けて、我々は目的地を目指す。

「おもてなし」の概念が覆るカフェ

四国カルストへのルートに入る前だというのに、ここまで登っては下り、登っては下りの繰り返しである。しかも、蝉が鳴いているように、気温もそこそこある。

10月にしては、ボトルの水の減りが早い。早くもおもちっこ氏はウインドブレーカーも冬用グローブもいらなかったと叫んでいる。

補給食はしっかり用意してきたので問題ないが、せめて水はどこかで確保したい。373氏も同意見のようだ。そう思っていると、Shin氏から予定していたカフェがそろそろ近いとの声が。

下り基調のR439の先に、そのカフェはあった。

(写真:Shin氏)

農家食堂cafe・イチョウノキ
https://www.attaka.or.jp/kanko/dtl.php?ID=12234

看板を見ると、ランチ予約制とある。

到着したのはちょうどお昼頃。まさか食べられるメニューがないのではと、一瞬不安がよぎる。

サイクルラックに自転車を停めていると、マスターらしき人が顔を出す。

ランチは予約制なので用意できないが、モーニングなら準備できるとのこと。量的には心許ないかもしれないが、補給できるならなんでも構わない。二つ返事で店内に入る。

(写真:おもちっこ氏)

イチョウノキは地域の婦人部が中心となって運営しているらしい。廃校舎をリノベーションした店内はどことなく学校の雰囲気を残しつつ、アットホームな感じである。

席に座り、メニューを眺める。モーニングのセットは4種類あり、トースト、サンドイッチ、ホットサンド、そしておにぎりから選べる。

おにぎりがモーニング……少し気になったが、朝食として既にコンビニでおにぎりを3個も食べていたので、ホットサンドにする。Shin氏、おもちっこ氏も同様。373氏はおにぎりのセット。

しばらくして、モーニングのセットがやってくる。

第一印象は、華やか。

メインのホットサンドに、サラダが2種類。そしてなぜか味噌汁。さらに、わらび餅のようなゼリーと、梨が付いている。

これに珈琲を加えて、500円。量はもちろんのこと、種類が多いというのも嬉しいものである。

後から知った話だが、高知といえばモーニングの量や種類が多いことで有名らしい。しかも、おにぎりや味噌汁が基本メニューとなっている。

嬉しい誤算だった。これだけ食べられたら言うことは何もない。

しかも、美味しい。綺麗に形作られたホットサンドは中身がぎっしり詰まっていて、食べ応えがある。味噌汁の塩分も、汗をかいた身体にちょうど良い。

自転車で四国カルストへ登ることを知った店員さんから、お水のサービスを受ける。しかも、お土産にと和菓子まで頂戴する。

おもてなしとは一体……。これが高知の県民性だというのか。素晴らしい。

マスター(多分)の話によれば、この日はまれに見る快晴で、四国カルストはかなり景色が良いはずだという。

最高のおもてなしに感謝してカフェを後にする。四国カルストの景色に胸を膨らませつつ、我々はその強烈な登りの入り口に向かった。

標高1400m地点で天狗との対決

カフェを出てR439を下ると、すぐに天狗高原と書かれた道路標識が見える。そのままR304に入る。

(写真:373氏)

ひたすら登り基調の道である。斜度はまあまあ。しかし、距離が長い。似たような景色が続いていく。

本当にこんな道の先に四国カルストがあるのだろうかとぼんやり考えながら、373氏のスマートスピーカーから流れるBGMを聴きつつ登る。

風の里公園でおもちっこ氏に追いつこうとした時の踏み込みが影響しているのか、脚が微妙に辛い。

なのに、四国カルストの看板を見た途端、なぜか先頭に出てしまう。

ここからR48に合流。マイペースを少し超えた速度で、残り2kmを詰めていく。

ここに来て景色が変わり、遠くにそびえる山々の形がはっきりと見えるようになる。

脚の辛さがピークに達しながらも、なんとか天狗荘まで辿り着いた。

天狗荘とは四国カルストのすぐそばに建てられた、標高1400mの宿泊施設である。当初、ここに泊まることも検討していたのだが、あいにく予約が一杯だった。

夜は満点の星空が眺められるらしく、この日のような快晴ならさぞ美しかったに違いない。

建物内には売店や食堂もある。先ほどモーニング兼ランチを取ったばかりなので、ここではジンジャーエールをいただく。

高知といえば、生姜の生産量が全国一である。

すぐ先には四国カルストがあるのだが、なかなか出発する気になれない。天狗荘の目の前にある愛媛県との県境で写真を撮りながら、少し長めの休憩。

そろそろ動こうかと思っていたところ、おもちっこ氏が自分の車体のタイヤを見て、何やら焦っている。

なんと、タイヤの表面がぱっくりと開き、剥がれそうになっているではないか。

サイドカットとはまた異なる、妙な症状である。

気圧の関係というわけでもなさそうだが、これはちょっと危ない。とりあえず、だましだまし様子を見ながら走ろうということになり、ゆっくりと出発する。

四国カルストはもう目の前だ。

非日常感漂う四国カルスト

四国カルストはR383沿いに広がっている。小さなトンネルを抜けると、開けた場所に出た。天狗高原というらしい。

視界の隅に、何か物体がうごめいている。何だろうと思い見てみると、そこには牛がいた。

野良牛……なはずがない。どうやら近所の牧場の牛らしく、放し飼いになっているようだ。ここはインドか。

牛の向こうに、ごつごつとした白い岩が姿を現す。空と大地の切れ目が見える。

小さな坂を登り切ると、そこには異世界が広がっていた。

どこまでも台地が続いている錯覚させる、道。その周囲に広がる、地表から突き出した石灰岩。

奇妙に現実感のない景色。土属性の魔術かなんかを使った跡のようである。しかし、それは現実に目の前に広がっている。

ただただ凄い。自転車で見た景色としては1、2を争うかもしれない。これを見るために登ってきたのだと思うと、喜びもひとしおである。

抜けるような青空のおかげで、台地の緑と空の青、そして石灰岩の白とのコントラストが美しく映える。まさに最高のタイミングでやって来たといえるだろう。

カルストといえば、山口県の秋吉台、福岡県の平尾台、そして四国カルストを合わせて、日本三大カルストと呼ぶらしい。秋吉台はまだイノセントな精神を持ち合わせていた小学生の頃に行ったことがあるが、そのときはさほど凄いとも思わなかった。

日本三大カルストのなかでも、四国カルストは最も高い場所にあるという。空の近さが、景色の広がりをより強く表出しているように感じる。

あまりの景色に、誰もが少し進んでは止まるの繰り返し。それだけ、この景色から離れたくないという気持ちが強い。

それでも進んでいくと、またもや風力発電。さらに謎の電波塔。そして、電柱の群れ。

こんな場所に人工物があると、終末的な世界の最果てに来たような気分になる。この光景が一番好きかも知れない。

四国カルストにある姫鶴平には、キャンプ場が広がっている。

この日は風が少し強かったものの、周囲には台地へテントを張った人々が散見された。周りに遮蔽物も光もない場所で見上げる星空、一度見てみたいものである。

大満足であった。名残惜しさを胸の奥にしまいつつ、四国カルストを後にする。

甘党ではない私がコーヒーゼリーソフトを食べた結果

最大の目的地である四国カルストを越えた一行。あとは戻るだけである。

……と思ったが、近くにソフトクリームの美味しい店があるということで、そこへ寄ることとなった.

私は甘党ではないので、ソフトクリームにはあまり興味がない。しかし、1カ月にひとつくらいなら、食べるのも吝かではない。わざわざ牛を放牧しているのを見ていたこともあって、せっかくなら……という思いもあった。

R383の終点まで続く道を、アップダウンをくり返しながら進む。

途中、またもや野良牛放牧されている牛に遭遇する。ステーキにして食べられるかどうか、5秒ほど考える。

アップダウンを過ぎると、綺麗な道が高原を縫うようにして延びていくのが見えた。

(写真:373氏)

四国カルストでお腹いっぱいになっていたかと思いきや、こちらもなかなかの光景だと感じ入る。

R383とR36の合流地点を左折し、すぐのところにそのお店はあった。

ミルク園
https://tabelog.com/ehime/A3804/A380402/38001054/

ここのソフトクリームとチーズケーキ、そしてコーヒーゼリーソフトが絶品らしいと聞く。

せっかくなのでShin氏と373氏、私の3人はコーヒーゼリーソフトを注文。甘党、というかなんでも食べる党のおもちっこ氏は全部注文するのだろうと思いきや、なぜかソフトクリームのみを注文していた。

別に、我慢する必要ないのやで……。それにしても、ソフトクリームがでかいな。

(写真:おもちっこ氏)

こちらはコーヒーゼリーソフト。小さく砕かれたコーヒーゼリーの上に、ソフトクリームが乗っている。見た目はシンプルな構成だ。

写真もそこそこに、一口。確かに美味い。

ソフトクリームをたくさん食べてきたわけでもないので比較はできないが、それでも口に入れた瞬間、確かに他では食べたことのない濃厚さを感じる。

コーヒーゼリーと一緒に口へ入れると、また違った味が楽しめる。ほのかな苦み(といっても甘い)がソフトクリームとマッチしていて、別の美味しさをもたらす。

なるほど、これは食べに来る価値があるといえるだろう。

というよりも、おそらく食べずに帰ったら不参加のkabo氏から

「四国カルスト見てコーヒーゼリーソフト食べなかったとか何しに行ったんですかm9(^Д^)プギャー」

と言われる気がしたので、実は証拠作りという意味もあったりなかったりしたかもしれない。

珍しく甘いもので満足していると、隣でおもちっこ氏が「やっぱりチーズケーキセット頼んだらよかったかも……」と呟いている。いや、だからなぜ我慢するんだ……。

彼の呟きは、明日になっても消えることはなかった。

これでも建築士を目指していた頃があった

少し時間が押していたので、Shin氏とショートカットするルートを考える。

するとお店の人から、R440のトンネルを抜けるルートがおそらく一番早いとの声が。途中までほとんど下り基調で行けるので、さほど苦労せずに道の駅まで戻れるとのこと。

満場一致で予定していたルートを変更し、お店を後にする。

R383までの分岐に戻り、そのままR36を下る。下り基調のため、ウインドブレーカーを装着する。

最初から高度な情報戦に参加せず、当然にして準備していた私に死角はない。

途中、やたらと運転の下手な車が道を塞いでおり、おかげで373氏に追いつく。ちょうど良いスピードダウンとなった。

R440に合流し、地芳トンネルへ。マップから長そうだとは覚悟していたが、まさかの約3kmだ。

自転車で抜けるには嫌な長さである。幸いにも広めの歩道が整備されていたので、ここはやむなしと利用させてもらう。

長いトンネルを抜けて、ひたすら下り基調のR440を進む。途中、宿場町のような風情の漂う檮原町に入る。

町に入った瞬間から、不思議な雰囲気を感じる。理由はおそらく建築物のせいだろう。

檮原町総合庁舎と、まちの駅「ゆすはら」を中心に、モダンっぽさと和の感じがミックスされた感じ。二つの建物はいずれも建築家・隈研吾が手がけたものだそうだ。

隈研吾といえば、日本でも有名な建築家のひとりだ。あまり詳しくはないが、代表作といえばやはり東京にあるM2ビルや、サントリー美術館あたりだろうか。ちなみに、途中に寄った淡路サービスエリア(下り)の建物も、隈によるものである。

それにしても、凄いネーミングである……。

(写真:373氏)

すぐ先で、スタート地点とした道の駅があるR197に合流する。下り基調はここで終わりとのことなので、ウインドブレーカーをパージし、ラストスパートへ。

途中でグラベルロードに乗った外国人を見かける。こちらに手を振ってくれたので、機嫌良く手を振り返す。こんな場所までやってくるとは、旅慣れた外国人なのかもしれない。

黙々とペダルを回し、18時前に道の駅布施ヶ坂へ到着。

ちょうど日が暮れる直前だった。

無事に帰ってきたことを祝いつつも、空腹と疲れが溜まっていたのでそそくさと撤収。車で宿泊先へ向かう。

KeiOSは言った。「星空が見られないのなら、お酒を飲めばいいじゃない」

というか、星空よりも酒が飲みたい。

疲れているところをShin氏の運転で運んでもらい、高知市内のホテルへ。

すぐさま風呂に入り、時刻は20時。空腹が限界に達していた我々は、高知市内の盛り場のひとつ、ひろめ市場へ向かう。

(写真:おもちっこ氏)

市場内には中央に簡単なテーブルと座席が並び、それを取り囲むようにしてたくさんの屋台が軒を連ねている。

しかし、既に席は一杯で、周りには空席を探している客も多い。もう一刻も待てない我々は、ゆっくりと座れるお店にしようと市場を離れる。

今回の旅準備において、私が担当したのは次の2つである。

・1日目夕食の候補地探し
・2日目のルート作成

夕食の候補地についてはひろめ市場で6件ピックアップしていた他に、当日の疲労具合も考えて、あらかじめ評判の良さそうな居酒屋を探しておいたのである。

「こんなこともあろうかと……」私は真田副長の声でそう言った。(cv:青野武or大塚芳忠)。

(実際にはその居酒屋も一杯で、系列店に回されたのだが)

土佐のいごっそう 亀次
https://tabelog.com/kochi/A3901/A390101/39004475/

(写真:373氏)

店に入ると、入り口のすぐ横にあるガラス張りの調理場にさかなクンのパチモンがいた。思わずおもちっこ氏が「さかなクンや!」と言うと、「ギョギョ?」と反応する。なんやこの吉本感……。

個室に通されて、さっそく注文。もう喉が限界である。

1日目を無事に終えられたことを祝して、乾杯。

(写真:おもちっこ氏)

生中が一瞬でなくなるのはわかっていたので、「こんなこともあろうかと」あらかじめ2杯頼んでおいた。酒に関して、私の注文に隙はない。

高知らしくやはり鰹が一番人気とのことなので、刺身とたたきを中心に、めいめい好きなものを注文する。

(写真:おもちっこ氏)

特に美味しかったのは、鰹のたたき。塩とタレの両方を注文したが、どちらも甲乙付けがたい。塩だけで食べて美味いというのは、それだけ鰹が新鮮な証拠だろう。タレとの相性も抜群で、酒が進む。

(写真:おもちっこ氏)
(写真:おもちっこ氏)

そう、酒が進む。うつぼの唐揚げ、青さのりの天麩羅、土佐のじゃこ天、ベタだが土手焼きと、どのメニューも外れがない。

(写真:おもちっこ氏)

酒を飲むのはShin氏と私だけだったので、ふたりで日本酒にシフトし、酒のあてとともに味わう。

あえて言おう。自転車の楽しみの9割は、ライド後の酒であると(真顔)。

居酒屋を後にした我々は、2件目として屋台に入る。高知市内には屋台ロードがあり、いくつかの屋台が出ているらしい。

どの屋台も結構繁盛している。たまたま空いていたところに入り、再び乾杯。

おでんに餃子、そしてラーメンを注文する。私は飲んだ後の締めに炭水化物を取る習慣はあまりないが、何せお腹が減っている。この日ばかりは締めではなく、晩ご飯の続きとして食べることとした。

出てきた屋台ラーメンは、空腹を抜きにしても想像以上の味だった。

(写真:おもちっこ氏)

豚骨ベースのスープだが、博多豚骨とはまた異なる。どちらかといえば、醤油豚骨に近い味。

チャーシューに味付け卵、なると、メンマと、オーソドックスながら具材も揃っている。特に、チャーシューの量は多く、味もしっかりしていた。

餃子の味付けも良く、ビールが進む。おでんは……もう少し味が濃いか、もしくはつゆだくにしてくれると嬉しかったかもしれない。

(写真:おもちっこ氏)
(写真:おもちっこ氏)

胃袋も満足。1日の締めとして最高の時間であった。

2日目へ続く

ホテルへ戻ると、ば○きん○んがお出迎え。ちなみにフロント前にはア○パンマ○がいた。原作者の出身地が高知県だったことを思い出す。

ほとんど気を失うようにして眠りにつく。わりと脚が疲弊しており、翌日走れるような気がしない。しかし、それはまた明日考えよう。

こうして、1日目の夜は過ぎていった。

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